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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
この世界
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梅雨 1

俺が朝、目を覚ますと窓の外を見るとすごい勢いで雨が降っていた。

眠い目をこすりながらリビングに向かう。


「おはよう。ていうかめっちゃ雨降ってないか?」

「そりゃ梅雨だからね。こんな日でも行かないと行けないんだよ。ゾンビ狩り」


めんどくせぇ。

雫は新聞紙をたたんでテーブルの上に置く。


「今日ぐらいはいいじゃん。俺達色々インタビューを受けて疲れてるんだからさ」

「そんな事言わないの。ランクが上がってしまったせいで稼がないといけないお金が増えてしまったんだから」


そうあの戦いの後は結構色々あった。

ゾンビ教の教会でなんかヤバいのがたくさん見つかり貴族としても扱いに困っていたゾンビ教を犯罪者扱いにすることが出来るようになった。

それに協力したということで後のお楽しみのすごい報酬と冒険者ランクが上がりノルマが酷い事になる。

など色々あったなぁ。


「うぅ…おはよう。ふぁー」


星奏があくびをしながらやってくる。


「星奏、寝癖酷いよ。治してあげるから早くこっちに来て。竜はさっさと朝の支度して」


なんかお母さんみたいだな。


「雫ママ、ぼくぅ歯を1人で磨けないの」

「そうなの。じゃあさっさと虫歯になって周囲の人から臭い人扱いされて肩身が狭い状態で生きてけ」

「ママ、酷いよぉ」

「私はあんたのママじゃないから。ていうかその声やめて」


雫は星奏の寝癖を治しながら言う。

星奏はなぜか雫にひざまくらされた状態で寝ている。


「じゃあ歯磨きしてくるわ」

「早くしてきてよ」


星奏との扱いの差は一体なんなんだ。



「よし、準備完了。いつでもいけるぞ」

「雨、強くなってきたな」


星奏は朝ごはんを食べながらそんな事を言ってくる。


「早く朝ごはんを食べてくれよ、星奏」

「朝ごはんが美味しくてゆっくり味わっているだけだ」

「星奏…」


なんで星奏が雫を落とそうとしているんだ。

この女ったらしのクソ野郎が。


「でも早く食べ終わってね。いつでも作ってあげるからね、ハート」

「ハートって言葉で言うもんじゃないだろ」


なんか最近女の子同士の恋愛が好きになってきたんだがこいつらが関係しているのか?


「確か、Cランクのノルマは1ヶ月に40万だろ?3人で120万。早くやらないとしんどいだけだぞ」

「それもそうなんだが。この雨だとやる気が起きないんだよなぁ。多分低気圧のせいだろうが」


確かに低気圧のせいで副交感神経が強くなってやる気がなくなるってのは聞いたことがあるけど。


「それを言うなら俺もその低気圧にかかってるからやる気がないはずなんだがな」

「それは…そのぉ。なんというかぁ。…てへっ」

「お前がそれをやるなよ」

「酷くないか?」


星奏がやるのはなんか違う気がするんだよなぁ。

ていうかなんか性格がいつもと違う気がする。


(竜、なんか星奏の性格がいつもと違うなぁとか思ってるでしょ?)

(そうだよ。だっていつもなら早く行くぞって言ってるはずなのに)

(星奏は梅雨の時期になるとこんな感じになってしまうんだ)


そういう体質…ということにしておくか。


「ていうか、新聞のギャラがポストに入ってたよ。ほら、これ」


雫はそう言って10万位を見せつけてくる。


「おぉ、俺達の活躍がしっかり全国に伝わっているんだな。相当苦労したからな」

「借金背負って、刑務所に入って、教会を襲って、上級ゾンビと中級ゾンビを同時に相手にして。大変だったね」

「そんな感傷に浸ってる暇はないぞ。早く準備しろ」


急に星奏の性格変わるじゃん。

お前さっきまでだるそうにしてたじゃん。

なんなんお前。


「それもそうだね。早く準備してよ、竜」

「俺はもうできてるわ。できてないのは星奏だろ」


前まで死闘を繰り広げてたとは考えられないな。



「カッパがあって良かったね」

「本当にリサイクルショップは色んなものが置いてあるな」


この雨の中で何も着ずにいるのはやばいと判断しリサイクルショップでカッパを買ってから来ることにした。

今は獅車に乗って移動している。


「サイズが少し小さいんだが」

「星奏のサイズに合うものはそんなになかったんだし仕方ないだろ?」


全く、自分がでかい事を忘れてやがるな。


「…てかさ。今思ったんだけど。天朗達っていくらで売れたんだっけ?」

「ゾンビ能力因子もあるからなぁ。軽く100万は超えてた気が…」

「なぁそれ、俺達今月は働かなくても良くないか?」

「それは4月のことでしょ?今は5月」


そうか、もう5月なのか…いや待て。


「梅雨にしては早過ぎないか?確か梅雨って5月の後半からだろ?」

「これもどうせゾンビのせいでしょ」

「お前、なんでも妖怪のせいにしてるやつみたいだな」


ゾンビがこんな異常気象を起こせるとも考えられないんだがな。まぁいいか。


「さて今日も今日とてやるぞ。ゾンビ狩り」


さっきまでダルそうにしてたやつとは思えないセリフだな。


「雨は家の中から見るのがいいのに。外から見るのは嫌なんだよなぁ」

「なんだそれ。雨を見てて楽しいとかおじいちゃんみたいだな」


まだ俺、17なんだけど?

この歳でおじいちゃん扱いはやめて欲しい。



「フリーズ!」


雨が氷に変わりゾンビ達を痛めつける。


「このクエストって後何体倒せばいいんだ?」


痛めつけたゾンビ達の首を切りながら言う。


「あと20ぐらいだな」

「ってうわっ」


雨が降り続ける中尻から転ぶ。

雨の中で転ぶのこれで2回目だな。


「なんでそうも雨の中で転ぶんだ」

「うーん、ドジっ子だから?」

「まさか本気で言った訳じゃないだろうな」


雫が少し目をそらし気まずそうにする。


「あっいたぞ。ゾンビ達」


星奏はそういいダッシュでゾンビがいる所に向かう。


「うわっ痛っ」


お前もかい。...なんか2人が俺の方を期待した目で見る。

俺にも転んで欲しいと言うのか?

...はぁしょうがないなぁ。

俺は思いっきり走り始める。

そしたら案の定、尻から転ぶ。


「いてて...これでいいか?」

「「転ぶとかダッサ」」


2人がニヤニヤしながら言ってくる。

殴りたいこの笑顔。


「ていうか竜、目の前気をつけろよ」


星奏にそう言われ前を向くと


「うわっゾンビー!」


めっちゃくちゃビビりながらも後ろに下がる。


「大丈夫か?」

「大丈夫...じゃない。めっちゃくちゃ怖かったぁ」

「星奏、今度竜を連れてお化け屋敷にでも行こうよ」

「それいいな。行くか」


どこも良くねぇよ。

カッパが汚れたので少し手で汚れをはらいながら立ち上がる。


「あれで全部か?」

「だいたい20だし多分」

「グランドランスっと」


雫が魔法でゾンビ達を串刺しにする。

その隙に星奏と自分を透明化してからゾンビ達に近づく。

雫はサン達に獅車を持ってこさせ獅車の中でくつろいでいる。


「力いっぱい振るうだけでも刀って使えるもんだな」

「ゾンビ達にバレるから声を出すなよ」

「その辺の対策はしてるから大丈夫」


ゾンビ達の耳に一切音を入れないようにすればいいだけなんだから能力使えば1発さ。



しばらくしゾンビ達の首を切り終わる。


「これで終わりか。俺は今の戦いで10パーセントも力を出していないぞ」

「はいはい強いでちゅねぇ」


星奏が呆れながらも煽るように言ってくる。


「力を温存するのは死亡フラグだよ。つまり死ぬフラグがたったって事だね」

「どこがたったって?」

「セクハラするな」


ていうかナチュラルに2回も同じことを言うなよ。


「とりあえず、帰るか。これで20万稼げるならいい方さ。ていうか、家賃とか取られないし電気代ないし20万もあればなんでも出来るんだよなぁ」

「あ、その話なんだがな」


あっこれ絶対取られるようになるパターンですわ。


「どうせ取られるようになるんだぜみたいなこと言うんだろ」

「その通りだ。電気代の計算を個人個人にするのは手間だから月々1万円、そして家賃は私達の家は貴族から直接貰ったものだが8万円だ。家を持つようになった人達が増えたからなこれぐらい取らないとダメなんだろうな。お父さんの考えてる事は多分こんな感じだろ」


まじか。結構取られるな。

残り11万といったところか。

そして消費税の導入で食費などでも持ってかれる。


「あっそうそう。まじでムカつく話を思い出したんだった」


この流れで嫌な話を思い出す?不気味だな。


「冒険者はゾンビを換金する度、クエストの報酬を受け取る度に所得税を取られるようになったぞ」


まじか。冒険者楽すぎとか考えてた自分が恥ずかしい。 もういっその事農家になろうかな。

畑の柵を壊した時のおじさんの所で弟子入りするのもありだな。

そういや俺、虫苦手だったわ。

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