一方的
雫が来たことにより隆治に対して強く出れるようになる。
なんてったって雫には能力無効化があるからな。
何も心配はいらない。
隆治もその事を分かってか、反撃が上手くできず防戦一方だ。
俺はその隙に魔法を放つ。
だが、隆治は雫を盾にすることで魔法をかわし続ける。
「天翔る氷の剣」
隆治は雫との殴り合いは分が悪いと思ったのか魔法で氷のレイピアを作り出す。
隆治はレイピアを突き出し雫に攻撃する。
雫は目を凝らしながらさらに突き進む。
「この剣は伸びるぞ。ラメット!」
隆治がそう言うとレイピアは急に伸びる。
雫はそれをすぐにかわすが、レイピアの伸びる方向が雫にではなく俺に向かって伸びる。
「ジャストアタック」
雫は伸びたレイピアの刀身を殴り、バキッと折る。
隆治はレイピアを地面に突き刺しレイピアの先端を水に変える。
「氷花」
隆治が地面に流した水は花びらのような形になって地面から勢いよく出てくる。
一見美しいと見とれてしまうがよく見ると花びらに無数のトゲが付いており、雫はそのトゲに刺さり体からタラーっと血が流れる。
雫がすぐにトゲから離れると体から出てた血が止まる。
そうか、雫の能力にケガを悪化させないみたいな能力あったな。
「焼き尽くせ、アトムファイア」
俺はいつもより魔力を込めて、放つ。
俺の火は氷の花を溶かし隆治に向かって飛ぶ。
「不死鳥」
隆治は水や氷を変換し俺の火よりでかい火を作る。
その火はまるで鳥のようにはばたき俺の火を飲み込む。
更に、その火が俺に向かって飛んでくる。
大量の水で消し去るか? いや、魔力を使いすぎる。
ここは安全に土で……
「サエッタ!」
火は電気に変わり火を帯びた電気が俺に向かって降ってくる。
まずい、間に合わない。
「ジャストスピード」
雫はすかさず俺の前に出てきて火を帯びた電気を全て受けきる。
雫は体から煙をだし、頬を親指で拭いまた隆治に顔を向ける。
「え、かっこよ」
「今のはついでちゃっただけだから。厨二病じゃないから」
俺が思わず口に出し、顔を赤らめた雫が俺に向き直って訂正しようとしてくる。
いや、厨二病関係なくかっこいいだろ今の。
俺達がそんな事をしていると悠介達は頭を抑えて辺りを見渡す。
「あれ……ここは?」
「太くーん」
胡桃は悠介に飛びこんで抱きつく。
百は頭を抑えながらも親指を噛む。
「兄貴、大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫。お前は?」
「大丈夫」
山が大丈夫かと海に訪ね、海は大丈夫だと答える。
……どうでもいいけど、逆だったんだ。
「騎士団長の俺がどうしてここに?」
凛って騎士団長だったのか、意外。
「ミューはメコメコ状態だったけど、チカチカ星の力で復活したミュー」
「美由紀、それはここでは止めて」
小町は無表情でミューといいながら辺りを気にしてる姫乃にほっぺをムニムニされる。
……ミュー?
「いい? 私厨二病じゃないから」
「分かったミュー」
俺はミューと言いながら返事をする。
「ほら、向こうの人見てるでしょ。辞めて」
「ミューは辞めないミュー」
雫は俺に姫乃がしてるようにほっぺをムニムニしてくる。
って、そんなこと気にしてる暇はないんだ。
「雫、すぐにアイツらの下に。俺もすぐ行くから」
「分かった」
雫が動こうとすると隆治が先に動き悠介達に手を伸ばす。
「悠介、避けろ」
俺は大声で悠介に呼びかける。
悠介は俺の方を向いてハッとすると胡桃の頭を咄嗟に覆って隆治に頭を触れられてしまう。
雫はすぐさま悠介に触れようとしたが隆治に蹴飛ばされる。
悠介はまたなりふり構わず暴れ出す。
雫は隆治との戦いで悠介達の所に行けずにいた。
俺はすぐさま、悠介の前に立ちはだかり氷魔法で動きを止める。
これでなんとか……
パキパキ
氷にヒビが入る。
だよなぁ。
凛達が必死に保持してたやつだもんな。
悠介、身体能力強化あるし。
まずいな。
隆治の方は雫に誤射してしまうかもしれないし、ここは悠介を凍らせる役割を担っておこう。
「康介だっけ? 太君は大丈夫?」
「全然やばい。お前らも状況飲み込めたらこいつ凍らせるの手伝ってくれ」
悠介だけならなんとか。
皆、俺の言葉に従い悠介に手をかざす。
隆治は雫と戦いながら移動し続け、凛に触れる。
凛もか。
「山、海、行ってくれ」
「「おう」」
凛には身体能力強化はない。
2人程度でなんとか。
隆治の動きを見て、触れてくるのを避けないと。
やばい、また来た。
「皆、伏せろ!」
「ミューはチカチカ星の力を得ないと生きてけないから伏せれないミュー」
「美由紀、いいから伏せ――」
今度は小町こと美由紀の頭が触れられる。
俺は咄嗟に凍らせるが氷は徐々に溶けていく。
凍らせ対策まで脳に刷り込ませたか。
流石にもう、抑えれないぞ。
俺が辛そうにしてると雫は俺達に手をかざす。
「無鍬、お願い」
雫の手の先から無鍬が出てきて俺達の所に来る。
俺達はすぐに氷を解き無鍬に触れさせる。
よし、これでこいつらを逃がせる。
この戦いは人数が多いほど不利だ。
早く逃がさないと。
「皆、逃げて――」
「ようやく、無鍬を出したな」
隆治はそう言って雫の頭に触れる。
雫は慌てて隆治の腕に殴りかかろうとするが、拳は徐々に勢いを無くし当たる直前に止まる。
いや、まだだ。
無鍬が雫に触れれば。
「無鍬は僕と遊んでようね」
隆治は無鍬の所に来ると殴り飛ばし、また無鍬の所に行く。
そして、隆治は水晶を取り出しそこに魔力を流し込んだのか水晶は輝きを発し光がドーム状に広がる。
無効玉か。
「無鍬はそこで寝てて」
雫がそう言うと無鍬は地面に寝転がる。
マジか。
雫は俺達の所に近づいてくる。
「お前達は逃げろ!」
「でも、えぇっと……あ、康介。お前1人じゃ……」
「俺達が集まっても結局結果は変わらない。いいから、逃げろ」
俺はそう言って悠介達を逃がす。
雫の強さはその能力の多さだ。
雫の器用さと能力の多様さの前では身体能力強化を持っとかないと無力だ。
しかも、ただ持ってるだけじゃなく使いこなせるレベルじゃないとな。
俺は雫の方を見る。
「さてと、雫さんや。お前まーた洗脳されてんのかよ。1回されたんだから免疫ぐらいつけとけよな」
「獣人化、獣之王」
雫は背中にワシの翼、腕はクマの腕、脚はライオンの脚となり、頭にクマの耳が生える。
いきなり戦闘態勢かよ。
雫のことは近くで見てたから分かる。
俺、死んだ。
死ぬかもしれないとかそんな半端な物じゃない。
確定で死だ。
俺が雫に勝てる訳が無い。
俺、死ぬなぁ。
雫とは一瞬話せた程度だったな。
死ぬのは確定してるがただ死んでやる気は無い。
「殺してみろよ。やれるならな」
「ジャストアタック」
雫の身体能力強化は有輝程じゃない。
「アスファルコン」
雫は地面に手を着き、地面からハヤブサを作り出して俺に向かって飛ばすようにしてくる。
雫の能力の動きの複雑さは星奏程じゃない。
雫に勝つ方法はないがこの場を切り抜ける方法はある。
隆治から水晶玉を奪い取り、無鍬が雫の所にまで行く手助けだ。
さてと、悪あがきといくか。