見覚えが……
俺は悠介と一緒に買い物に来ていた。
理由は胡桃と遊びの約束ができたからオシャレな服を一緒に探してくれとのことだ。
俺にバレてることは気づいてたみたいだ。
この前に相談したことあるだろと言われそういえばそうだったなと思い出す。
「宮平ってどんな系統の男子が好きなんだ?」
「俺調べでは清潔感があって頼もしい人らしい」
「全部当てはまってるか」
「靴紐も結べない人がよく言うわ」
「うるせぇ、そこはギャップとしてカバーすんだよ」
部屋がちょっと汚い程度なら分かるけど靴紐結べないはダメだろ。
ギャップでもアウトだわ。
「とりあえず、服屋入ろうぜ。清潔感のある服装にすればいいんだよな?」
「そうだな、もう冬だしジャケットとかいいんじゃないか?」
「そこら辺はお前に任せる」
「お前も探せ」
ほんと、お前は俺がいないとなんにも出来ないな。
俺は適当に服を見繕い、精算させる。
「これで俺の財産はすっからかんだ」
「おい、昼飯奢ってくれる約束はどうした」
「貴族って金貸しやってたっけ?」
「分かった、今回のはツケにしてやるから金は借りるな」
康介様ぁと悠介が泣きながら抱きついてくる。
俺は呆れながら歩く。
まだ昼までに時間あるしスーパーでも散策しようかな。
俺が今から何をするのかに頭を悩ませていると小さい子にぶつかる。
10歳ぐらいの小さい子はぶつかってしまい、床にころげる。
身長は147と言った所か。
……なんで、俺身長を見ただけで割り出してんだ?
ってそんなこと考えてる暇はない。
俺はすぐにごめんなさいと言いながら抱き起こす。
小さい子は状況を理解できてなかったのか赤色の瞳をぱちぱちとさせる。
薄い茶色の髪が肩にかからない程度の長さだ。
俺はその子と目が合いしばらく見つめ合う。
「康介、お前まさかロリ――」
この子、どこかで?
いや、話したことも、会ったこともない。
なんだこの感覚は?
「あの、私達どこかで会いました?」
「……多分会ってないです?」
「ですよね、すいません、失礼なことを」
「いえいえ」
小さな子は起き上がり服をパッパっと払う。
「ところで、あなた今幸せですか?」
「ん????」
えっと、これはもしかして……
「なんと、私神の声が聞こえるんです。そんな、私の言うことを聞けば幸せになることだってそう難しくは――」
「康介、逃げるぞ」
「おう」
俺達はそう言ってすぐに走り出す。
まさかの宗教勧誘だ。
思ってもみなかったわ。あんな小さな子に宗教勧誘されるなんて。
「災難だったな、お前」
「ほんとだわ。危うく、高いツボとか買わされるとこだった」
「所でお前ってもしかしてロリ――」
「あ、そうだ悠介くーん、僕お昼ご飯食べたいな」
「ごめんなさい」
誰がロリコンじゃ。
俺はただ見覚えがあるような気がしたから見続けてただけだ。
「とりあえず、俺今日買った服でデート頑張るわ」
「おう、頑張れよ」
それにしても好きな人か。
青春してるな。
俺も本当は好きな人がいた。
でも、前日なぜかどうでもよく思えてきたんだ。
理由は分からない。
まるで、神が直前に世界を作ったかのような気がした。
今までのは作られた記憶であるという気がする。
でも、確かに俺は体験し感じていたんだ。
ほんと、よく分かんねぇな。
「なぁ、康介。このバニーガールの服とかって?」
「そりゃお前、ホテルで使う用だろ。備えあれば憂いなしだ」
「まだ付き合ってすらもないんだから早すぎるわ!」
「でも、もうすぐクリスマスだよな? クリスマス会の罰ゲームで胡桃がそれ着たらとか考えたらどうよ?」
「たぎってきた」
「そゆこと。明日使えなくてもいつかは使える」
「備えあれば嬉しいな」
俺達は準備が整ったところで家に帰り始める。
「我々、対屍特攻兵団は今、高松に出発する。心していくぞ!」
俺が街を歩いてると20歳ぐらいの身長180センチぐらいで長い金髪の女が大きな声を上げる。
なんだろう、こいつも見たことがあるような気がする。
俺は不思議な感覚が気になりずっと見続ける。
「お前、ロリコンか年上好きかどっちかにしろよ」
「だから、ロリコンじゃねぇって。それに一目惚れとかでもないわ」
なんなんだ?
この見覚えのあるようでない感覚は。
さっきの子もそうだがまるで、昔に会ったことがあるような?
「そこのお前!さっきから私を見てなんのようだ!」
「え、あぁ、何もありません!」
「こいつ、あなたのことが気になるみたいで」
「おい、お前」
「そうか、帰ったら詳しく聞いてやる」
女の人はそう言って出発する。
「良かったな」
「良くねぇよ。お前、許さんからな」
なんで趣味とは違う人と話をしなきゃならんのだ。
俺達は家に帰りゆっくりする。
「はい、金融恐慌が起きた。皆から1000万円なくなりまーす」
「なーにクソマス引いてんのよ」
「私の計画が……」
「姫乃、借金だ。ははは」
女性陣は人生ゲームで盛り上がってるようだ。
「康介、これリーチできるぞ」
「分かった。リーチ」
俺達は麻雀で遊ぶ。
もちろん、金を賭けてる。
理由は悠介のデート代を稼ぐためだ。
「これいらないか」
「あ、ロンです」
凛が捨てた牌に山がロンをする。
「悠介、負けた」
「ツケがまた増える」
悠介は頭を抱えうずくまる。
「海、明日漫画買ってやる」
「そのお金の1部に俺の金も入ってるんだけどな」
「俺の金がァァァ!」
こういう日常が俺は1番好きだ。
「本物のお金使うなんて、あんたら馬鹿なの?」
「男なんて馬鹿じゃないとやってらんないからな」
凛、主語デカい。
「それよりさ、あんたらも人生ゲームしてくんない?」
俺達はなんでと思い人生ゲームをしてるテーブルを見る。
すると、金持ちそうな百が他2人に肩を揉み揉みされながら2人の頬におもちゃのお金をペシペシしてた。
「俺じゃあやる」
「お、俺も」
「兄貴はどうする?」
「僕は見とく」
「兄貴がやらないなら俺銀行だけしとくわ」
「俺も見る専で」
見る専の俺と山以外は人生ゲームのテーブルに着く。
「下克上よ。百、あんたに勝つわ」
「やれるものならやってみなよ。ほら、2人とも。100万円あげる」
「主の命令とあらば他の参加者を蹴散らします」
「明日は焼き肉だぁ」
俺は自然と山と誰が勝つかで賭けを始める。
「海に沢山の漫画を買ってやるんだ」
「弟思いのお兄ちゃんだこと。でも、愛だけじゃ金は手に入らないことを教えてやるよ」
俺はさっきまで不運だった悠介に、山は3人の下僕を引連れてる百に賭け金をのせる。
……人生ゲームってチームプレイモードあったっけ?
悠介はちゃっかり胡桃の隣に座る。
その行動力はいいけどあんまジロジロ見たらバレるぞ。
って、おい、鼻の穴広げんな。
「貧民共に先行を譲ってあげる」
「後悔しても知らないわよ」
胡桃は全力でルーレットを回す。
結果は1マス。
「幼少期に線路で積み石をし電車が脱線。多くの犠牲者を出す。1000億円支払う。……え、こわ」
しかも、初手から事故って借金生活だ。
ていうか、地味にありそうなのが怖い。
「宮平、その借金俺に寄越せ」
「人生ゲームにそんなルールないんだけど!?」
「え、ないの?」
「あるわけないでしょ!? ちなみにチームモードとかもないから」
「「えぇ!?」」
普段クールな小町や姫乃も驚いていた。
いや、分かるだろ。
「でも、2人は私の仲間だよ。ねー?」
「ねー」
「まぁ、お金を受け取った以上は」
「こうなったらこっちもチームプレイをするしかないのか」
「そうだ、だから早く俺に借金をくれ」
「いや、ここは1番遅い人に借金を背負わせましょ」
これ、本当に人生ゲームなのか?