いつも通りで当たり前な日常
俺は橘 康介。
ただの男子高校生だ。
俺は今友達とテーブルを囲み朝食のパンを食べている。
「米食いてー」
隣のパンに飽きてきてるのは、幼なじみの安藤 悠介。
「パン派が多いんだから我慢しろよ」
「僕もご飯派なんだけどな」
むしゃむしゃとパンを食べてるのは三浦 海。
ご飯を恋しそうにしてるのが三浦 山。
2人は双子で見た目がそっくりだ。
大人しそうなのが兄の山、大人なのが弟の海だ。
「パン派の俺達が悪いみたいだな」
パンというより女の子が好きなのが深見 凛。
「パンの方が美味しいのに」
「だよな」
パンをちびちび食べてるのは桃山 百。
も多いな。
ていうか、凛のやつサラッと頷くな。
お前が本当は米派なの知ってんだぞ。
「ご飯はおかずとかで洗い物が大変になりやすい」
「そうだぞ。皆の負担考えてんだ、こっちは」
面倒くさがりなのは山城 小町。
クールだ。
ていうか、凛のやつどんだけそっちの肩持つんだ。
「パンの方が色々アレンジできるしいいじゃん」
「お前らだって味に飽きるのは嫌だろ?」
アレンジがどうのこうの言ってるのは石渡 姫乃。
「それに、今ご飯の値段高騰してるし、パンの方が安くていいんじゃない?」
「俺達金欠だもんな」
値段のことを気にしてるのは宮平 胡桃。
「まぁ、多数決で決まった以上俺達に反論なんてできねぇか。なぁ、康介」
「あ、そうだな」
「ん? どうした? 不思議そうに眺めて」
「いや、なんかいつも見てる風景なはずなのに違和感というか」
「なにそれ」
俺の発言に皆笑う。
なんか、おかしいこと言ったか?
「……私も感じる。何か変よね」
「やっぱ、俺も」
凛、お前は絶対感じてない。
「まぁ、気にしてもか」
「そうね、とりあえずすぐに準備しましょう」
俺達はゾンビを倒すことでお金を貰う職業である冒険者に就いている。
さぁ、今日も仕事始めるか。
俺達は町の外に出る。
歩いて少しするとゾンビが沢山いる。
今日はこいつらを倒すクエストだ。
「俺が先陣を切る!」
悠介はそう言って前へ突っ走る。
悠介いわく、俺はなんか力込めると力込めた場所の力が強くなるんだって言ってた。
何を言ってるか分からねぇが俺も分からねぇ。
とりあえず、身体能力強化みたいなものらしい。
あいつ、能力者だったのか。
能力者というのはゾンビが出てきたことにより体に突然変異をもたらし、特殊能力を得た人のことらしい。
今までそんな素振りなかったのに。
今朝気づいたとかってなんだそれ。
「悠介君、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、百ちゃん。あいつは馬鹿なだけだから」
「うるせー。能力が羨ましいからって嫉妬すんな」
俺はサッと剣を抜き悠介に次いで前に出る。
今日は俺、悠介、凛、百が前に出て他のやつらは周りの警戒だ。
いつも通りだな。
ん? いつも通りなのか?
いや、いつも通りだ。
だって、昨日とやってる事変わってないし。
「おい、康介よそ見すんな」
凛が俺に声をかけると後ろからゾンビが襲いかかってきていた。
えっ、まず。
「ウインドバズーカ」
百はそう言うと強力な風魔法を背後のゾンビに飛ばす。
背後のゾンビは飛んでいき事なきを得る。
「ごめん、考え事してた」
「後にしろ」
「危なかったね」
「お前は俺がいねぇとダメだなぁ」
悠介はゾンビと戦いながら俺に冗談を飛ばす。
靴紐の結び方を毎回聞いてくるお前に言われたくねぇ。
「俺も能力あったらなぁ」
「ゾンビリヤーは後天的にもなれるらしいぜ」
「あ、知ってる。なんか強いゾンビ倒したらそれっぽいものが出てきて食べればいいんでしょ?」
「百ちゃん、よく知ってるなぁ」
「常識だからだろ」
「お前は子供作るなよ。自尊心育たなさそうだから」
酷い言われようだ。
「おーい、もう終わったか?」
「終わった、そっちは?」
海が側までやってき、凛が対応する。
「ゾンビの何個もの集団が近くに来てるのか。ゾンビの死体を積むのにも時間がかかる。町までの最短ルートにいるゾンビを倒してくれ」
「分かった。そいつらはできたら回収って感じか?」
「そうだな。そこは臨機応変にだ」
「おけ、伝えてくる」
そう言って海は他のヤツらの下に行った。
凛はこういう時クソ頼もしいのがなぁ、ウザイんだよなぁ。
もちろん、いい意味でだ。
いつも女の子側をよいしょしまくってるのにこの対応っぷり、ウザイったらありゃしない。
俺はゾンビの死体を荷台に積みながらそう考える。
……いつも?
なんだろう、いつもって言葉に違和感がある。
まぁいっか。
俺達は積み終わると荷台を押し町に戻り始める。
「おら、ゾンビリヤーだろ、頑張れ」
「有能なやつはこき使われるって本当みたいだな。サボり魔に転職しようか」
「うちに辞職機能はありません」
「法的不備ありすぎだろ」
悠介、社会というのはこういうものだ。
諦めな。
俺達が進むと海達がいる。
海達は適当にゾンビを荷台に積む。
すると、ビル屋上から小町が上昇気流でゆっくり降りてくる。
「ゾンビが近くまで来てる。もう、ダメそう」
「分かった、みんな急ごう」
皆で荷台を押し無事なんとか町に着けた。
「危ねぇ」
「ほんと、一時はどうなることかと」
「さっさと、換金しよう」
「兄貴、町に着いて早々に服引っ張るな」
この兄弟、仲良いなぁ。
俺達はギルドへと行きゾンビの死体を換金する。
「うわ、葬送の坊主のやつら今月もギルドノルマ1位じゃん」
「あそこはデカイからな。俺達、同高じゃ、話にならねぇよ」
「今思ったけど名前ダサくない?」
「ね、私の案のうちらズッ友で良かったのに」
「それはそれでダサい」
皆が名前がどうとかで争っていると換金が終わり、俺はお金を受け取る。
今日は3万か。
ここから税金で5000円今日の食費で1万円、家賃用に3000円、武器とかの点検用に5000円、残り7000円を9人では分けれないから700円貯金に回して6300円。
1人あたり700円のお小遣いか。
「もっと、金欲しいなぁ」
「そうだよな」
「兄貴、ご飯食べにいく時しか金使ってんの見たことないんだけど」
「お前にもっといいもの食わしたいんだ」
「立派だなとは思うけど弟のすそ持つの辞めてくれよ」
俺は食堂の席でげんなりする。
「どうした? 金がないのがそんなに嫌か?」
そんな俺に悠介は話しかけてくる。
「まぁ、そうだな。もっと稼げれば個人の部屋が持てるようになると思うんだけどな。宿じゃ食費浮かせれないし」
「まぁ、部屋なしはキツイよな。ていうか、昨日の誤魔化しありがとな」
「真夜中のトイレは鉄板とはいえリスクがある。今度からは外の公衆トイレとかでヤリなよ」
「おぉ。お返しに良い奴渡すわ」
「お前のお下がり汚れてるから嫌」
「なんの話ししてるの?」
俺達が下の話をしてると胡桃が話しかけてくる。
「あ、あれだよ。夜中の公衆トイレって怖くねって話」
「なにそれ」
「結論、そういう人もいそうで怖いってなってた」
「そういう人って、まぁ確かにいそうだけど」
「おい、康介、あんま宮平にそういう話はなぁ」
悠介は顔を真っ赤にして俺の首根っこを掴む。
「まぁでも、夜中で言えば夜中の学校とかも怖そうだよね」
「あ、あぁそうだな」
胡桃と悠介は話が盛り上がっていく。
見ての通り、悠介は胡桃が好きだ。
上手いこと周りには隠せてるが俺にはバレバレだ。
胡桃の好きなタイプ聞いてきたりとか大変だったな。
楽しそうに話やがって、全く。