終戦へ
僕は2人の貴族を前にして話し始める。
「僕がして欲しいことは2つ。まずは戦争を終わらせること。そして、竜さん達の罪をなくすまた全て僕に押し付ける事です」
「は?」
竜さん達が驚いた顔をしている。
貴族達は冷静な顔で話し始める。
「では、何を差し出せる?」
「情報の保持を約束しましょう」
「どんな情報だ?」
僕はふぅと深呼吸をして2人を見つめる。
「独占企業権です」
「「なぜそれを!?」」
びっくりしてるみたいだ。
やっぱり、これは機密情報だったんだな。
星奏さんが知っておいてくれてラッキーだった。
僕はここで感情を高ぶらせる能力を使う。
「これを世間に公表しないことを約束します。ちなみに、僕達を殺したとしても他に仲間がいます。僕達と連絡が途絶えたら公表するように言ってます」
もちろん、嘘だ。
「それが嘘でないと証明出来るものは?」
少しイラつきながら和利さんが喋る。
「ありません。ですが、この場にそんな情報いりますか? いま、あなた達の身柄を拘束してるのは僕達なんですよ?」
「脅迫か。中々姑息な手を使うもんだ。お前本当に子供か?」
「脅迫で交渉を成立させようとするとは、信用を得れなくなるだけだぞ」
「はい、そうですね。ですが、僕達は独占企業権を知ってます。これだけであなた達はかなり痛手なのでは?」
2人の貴族は考え込む。
僕はここでして欲しいことの話に移る。
「戦争の終結のために名古屋には騎士の退却とゾンビ能力因子の破壊、または全貴族での共有保管を。東京には騎士の退却と竜さん達の罪を無くすこと。そして、両方に自分達陣営の貴族を納得させ戦争終結に協力させること。これを僕は要求します」
2人の貴族ははぁとため息を吐く。
「のもう。独占企業権を知られていては我々に勝ち目は無いからね」
「もう、一般人どももこの状況に慣れている。デモを起こして貴族交代させることぐらい、訳ないだろうしな」
貴族をしていればこの世界が終わったあとの会社の再建にも役に立つ。
貴族の地位を無くされる方が辛いだろう。
勝った。
ここで感情を高ぶらせる能力をきる。
「太陽の分の罪も消すことも約束しよう。君みたいな子供は力仕事に役に立たないからな」
「ありがとうございます。では、こちらにサインを」
僕は終戦の誓いと書いた紙を渡す。
2人は自前のボールペンでそこにサインし無事、戦争は終わった。
「星奏、俺達を騎士の所へ連れて行け。そうすれば、まだ死者は出ないだろう」
「あぁ、分かった」
そう言って星奏さんは貴族2人を浮かせて騎士の所へ連れて行った。
「終わった」
僕は安堵ともに床に倒れる。
良かった、終われた。
本当に、良かった。
僕はそのまま意識を落とす。
目が覚めると竜さんの部屋の天井が目に見える。
すごく、長い間寝てたようだ。
僕は腕をのばし起き上がる。
竜さんはまだ寝てるな。
僕はリビングに出る。
まだ、誰も起きていない。
僕が周りを見渡すと1部の新聞が置いてあった。
おもむろに取って読むと(終戦へ)と記事に書かれていた。
死者はゼロ。
2日程度の戦争は幕を下ろした。
「良かった」
僕がそう呟くと雫さんが眠そうにあくびをしながら出てくる。
僕と目が合うと目が点になり数秒間固まる。
「おはようございます?」
「……起きろー!」
雫さんは叫びながらドタドタと走り竜さんの部屋に行く。
竜さんがぐへぇと言う声が聞こえるとお腹を抑えながら竜さんが出てくる。
雫さんはまたすぐに星奏さんの部屋に行く。
星奏さんは雫さんに支えられながら眠そうに目を擦りながら出てきて僕を見て固まる。
竜さんはお腹を相当痛めたのかまだ抑えているが、僕の方をちらっと見ると数秒間固まる。
「おはようございます?」
「やっと起きたのか」
「良かったな」
「ほんと、心配したよ」
皆さんはホッと安堵したような表情をし床に座り込む。
「雫は俺の心配もして欲しいけどな」
竜さんはお腹を抑えながら言う。
雫さんはめんごと言い謝る。
「お前、3日間寝てたんだぞ」
「え、マジですか?」
新聞には2日前の日付が書かれてあるし間違いなさそうだ。
「……そんな、重症だったんですね」
「火傷に出血、内蔵の方もちょっとやばかったな」
「私がいなかったら死んでたね。多分」
ちょっと、頑張りすぎたみたいだ。
「あ、そうだ。免許皆伝試験受けたいです」
「とりあえず、今日明日は休め。まだ体が痛むだろ」
……やばい、自覚したらものすごく痛い。
「すいません、ちょっと休みます」
「家事も休め」
「はい、そうさせていただきます」
僕はそう言って床に寝転がる。
「とりあえず、二度寝する」
星奏さんはそう言って部屋に戻る。
「雫、腹痛い」
「トイレに行っといで」
「お前のせいなんだけどなぁ」
竜さんは前よりも明るくなったような気がする。
気のせいな気がするけど。
「太陽、朝ごはんにするけど食欲ある?」
「あります。すごくお腹すいてます」
「じゃあ、うどんとかでいっか」
「日の丸うどんにしようぜ」
「いいね」
やっぱり、竜さん明るいな。
何かあったのかな?
まぁ、いっか。
(僕達はこの世界しか見えてないし、この世界でしか生きられないんだ)
俺は太陽のこの言葉を聞いた時思った。
俺は俺が妄想だと思ってるこの世界でしか生きてないじゃないかと。
確かに、あの時に見た俺1人しかいない自室が現実でここが妄想かもしれない。
でも、俺は今、雫や星奏、太陽、有輝、その他大勢がいるこの世界しか見えてない。
それって俺はこの世界でしか生きてないということにはならないだろうか。
この世界は妄想なんかじゃない、現実なんだ。
それなら、俺がここでいくら幸せになろうが関係ないな。
理想的な女の子って言ってもあの2人だしな。
暴力的だし、女の子らしさなんて微塵も感じれないあの2人だし。
一緒にいて楽しいやつらだけどさ。
あぁ、お腹痛い。
「竜、ごめんて。そんなお腹痛そうに抑えないでよ」
「実際痛いから仕方ないだろ。焦ってたとしてもビンタで起こすとかあるだろ。なんで腹パンなんだ」
まぁ、いくら考えた所で意味なんてないんだけどな。
何回も言ってるが証明の仕様がないんだ。
でも、どっちも無意味っていうならこの世界で生きてる俺を肯定したい。
だって、そっちの方が好きだから。
「竜、朝ごはんできたよ」
「はいよ、太陽の分運ぶから太陽はゆっくりしとけよ」
「感謝申し上げることこの上なしです」
「どいたま」
前の時も思ったんだがマジでこれ素うどんに梅干し乗っけただけだよな?
海苔とかトッピングしてやろうかな。
俺は太陽に日の丸うどんを持っていきついでに海苔も持っていく。
「竜さん、海苔が朝ごはんなんですか?」
「ちげぇよ。トッピングにどうかと思ってきたんだ」
「え、いらないです」
すごく嫌そうな顔された。
好き嫌いはあるしな。
まぁ、しゃーない。
……それにしても梅干し乗っけただけの素うどんになんの魅力を感じてるんだ。
「美味しい」
美味そうにチュルチュル食いやがって。
「竜は簡単にオムレツね」
雫はそう言って、テーブルの上にオムレツを置く。
そういえば、こいつ俺が病んでた時に結構心配してくれてたよな。
俺は本当に恵まれてるな。
俺は改まって雫の方を見る。
「いつもありがとうな」
「え、あーうん。どういたしまして?」
雫は混乱しながら台所に戻る。
にしても、星奏あいつせっかく起きたのになんで二度寝してんだ。