太陽と月1
僕は常吉の出した岩の塊の龍から逃げ回る。
「龍ゴミ」
「太陽も、お前ワザとだろ」
バレちゃったか。
にしても、この龍ものすごく追ってくるな。
雫さんが常吉に触れれば収まるのは分かったけど常吉は雫さんの攻撃をかわしまくってるし、このままじゃ埒が明かない。
「ワンチャン、破壊できないか試してみます」
「じゃあ、俺も」
「そうか、2人の能力を合わせればなんとか壊せるかもしれないな。注意はひくから頼んだ」
「分かりました」
星奏さんはそう言って空に飛び立ち重そうなものをそこら辺の家から引っ張り出しては龍にぶつける。
「太陽、試しに適当に衝撃を龍に当ててくれ」
「分かりました。衝撃」
僕は龍に衝撃波を当てると思ったよりも壊れる。
「よし、今から俺が破壊するポイントにマークを付ける。だから、それに向かってやってくれ」
「分かりました」
竜さんは龍の顔部分に分かりやすいマークを付ける。
僕はそれ目掛けて衝撃波を出す。
すると、さっきよりも壊れて僕はびっくりする。
「これが……僕の力」
「俺の力も入ってるからな」
あ、いけない。
目覚めるところだった。
僕は竜さんにポイントをマークしてもらいそこ目掛けて衝撃波を放つ。
龍はそんな僕達の方を危険視するかのように僕達の所へ飛んでくる。
あれ、そういえばもう1匹はどこに。
「2人とも、そこから離れろ」
星奏さんがそう言うともう1匹の龍が建物を壊しながらやってくる。
龍が通った道は大きな穴が空いており倒壊している建物も多い。
僕達はすぐに走り出し逃げ回る。
「なんだよ、あれ。化け物すぎる」
「実際化け物ですよ、あんなの」
僕達はどうするかを走りながら考える。
すると、竜さんは何かを決めたような顔で僕に話しかける。
「太陽、爆発魔法は教えたよな?」
「はい、発動するのに時間かかりますけど」
「それをするぞ、俺はあっちやるから、お前こっちやれ」
「無理ですよ。止まってる時ならまだしも動きながらだなんて。魔力使い切るぐらいじゃないと」
「今やらなきゃここで死ぬだけだ。今か未来を取るなら今だ。今に全力を尽くせ」
クソ、やるしかないか。
衝撃派でチマチマやった所でいずれ死ぬ。
それなら。
やるだけやる。
「流れ行く空気よ、踏みしめてる大地よ、叡智をもたらした炎よ、今一つになり目の前の障害を破壊したまえ」
流れは合ってる。
焦るな、焦るな。
僕がイメージしていると乾燥した空気が1箇所に集まる。
龍は僕達を追ってるから少し前の方に出して、爆発範囲に僕達が入らないように調整して……ええいままよ!
もうどうなってもいいや!
「「エクスプロージョン!」」
僕達が叫ぶと大きな爆発で龍は砕け散る。
僕達は爆発の衝撃で吹き飛ぶ。
「太陽、もっと後ろ側にしろよ」
「竜さんが急に無茶言うからでしょー!」
僕達はそのまま建物の壁に激突……する直前にピタッと空中で動きが止まりそのまま地面に降りる。
「なんとか、倒せたか」
「死ぬかと思いました。それよりも雫さんの所へ行きましょう」
「そうだな」
僕達が雫さんの所へ駆けつけると常吉は建物と建物に縄を括りつけて片手ずつで引っ張る。
すると、建物はバキッと折れ常吉は縄に括りつけてる建物の残骸を雫さんに投げる。
「なんかもう規格外だな」
「達観してないで助けてよ」
それもそうだ。
雫さんは空に飛ぶことで回避するがもう星奏さん以外の体力がもう尽きかけている。
「操縄、蜘蛛の巣」
常吉はそう言うと辺り一面に縄を張り巡らせる。
僕達が困惑していると常吉は縄を伝って僕達の所に来ては蹴る、殴る。
この場から早く出ないと。
脱出経路は……
「「見えた」」
僕が脱出経路まで走ろうとすると雫さんは常吉の死角を突く。
「高い位置に陣取るはいいけど足元がら空きになることを忘れてるよ。おじいちゃん」
「青二才が。先手を取り返しただけでイキがるな」
僕がこっちこっちと手を振ると竜さんはやってくるが雫さんと星奏さんは残ったままだ。
「草食男子ども、何やってる」
「そっちこそ何やってんですか。わざわざ相手の土俵で戦うことありませんよ」
「弱点が多くなってる今がチャンスなんだよ」
弱点? 何の話をしてるのか分からないがとりあえず、出ることを優先させる。
2人は渋々と承諾し縄地帯から逃げ出す。
「操縄、蜘蛛の巣」
すると、常吉はまた辺り一面に縄を張る。
逃げたところで意味が無いということか。
「逃げても意味はないと分かったか?」
「なんでそんなに上から目線なんですか」
僕はこの状況を一旦整理する。
辺りは縄だらけで常吉の機動力が上がった。
常吉は高揚状態で注意力散漫に。
僕達の体力はもう残り限界。
どうすれば……
僕が考えていると竜さんが話しかけてくる。
「太陽、作戦だ」
常吉は相変わらず高い機動で竜さん達に優位を常にとっている。
こんな縄だらけの状況は相手に有利だ。
しかし、こちら側も有利になってることを忘れてはいけない。
常吉は縄を伝っての移動技術が高いから今の高機動力を確保している。
つまり、僕達も真似すれば問題なく動けるのだ。
だが、そんなのをすぐに真似できるわけない。
そこで、僕は竜さんに透明にさせてもらいながらゆっくりと進む。
バレないように、バレないように。
「鉄拳」
常吉は加速した状態で拳を突き出す。
星奏さんが真正面に立ち拳を途中で止めれて皆さんは助かった。
常吉はまた移動する。
そして、たまたま僕の前に来る。
「太陽。お前だけでも逃げろ!逃げて戦争を終わらせてくれ!」
竜さんはそう言うと縄地帯から抜け出した僕を映し出す。
常吉は一瞬それに釣られ隙ができる。
僕はすぐさま、剣を取りだし切りかかる。
「撃剣」
常吉は一瞬遅れたが体で剣を受け止める。
は?
「どうした、不意打ちでもその程度か」
竜さんみたいな上手いズルは使えないのか。
もっと、狡猾に。
もっと、ずる賢く。
僕は必死にこの状況をどうしようか考えたが常吉はその隙を見逃さずに僕に殴りかかる。
僕はその衝撃で縄地帯の外にまで出ていく。
やばい、意識が遠くなる。
まずい、これ死ぬのかな。
いや、死なない。
死んでたまるか。
僕は上手いズルは使えない。
せいぜい技名を誤魔化すだけだ。
それなら、自分自身を騙す。
僕は自分の感情を高ぶらせ意識を取り戻していく。
体はボロボロだけど精神は超元気。
僕は立ち上がり常吉に向かって不気味な笑みを浮かべる。
「来いよ。ビビってんのか?」
「舐めた口を」
常吉はそう言って縄を伝い縄地帯の外に出ると凄い勢いで近づいてくる。
僕、死ぬかもしれない。
だけど、死んでやる気は毛頭ない。
「流れ行く空気よ、踏みしめてる大地よ、叡智を与えた炎よ、今一つとなり、目の前の障害を破壊せよ」
「は?」
「天皇陛下万歳」
僕はそう言って僕ごと爆発する。
常吉は体を強化し耐える。
そして、僕は……透明化でその場から離れていた。
「って言うのは古いんだよ」
「お前、言うの直前すぎだろ。ビビったわ」
僕は嘘をつくのが下手だ。
だけど、竜さんはつくのが上手い。
人に頼ればいいんだ。
無理なものは無理。
「どうした、その顔。もしかして、懐かしい言葉を聞いて懐かしさで胸いっぱいになってるのか? そんなのは縁側で茶をしばきながら感じとけ」
「あいにく、私はその言葉には憎悪しかなくてね」
こいつ、何歳なんだ。
冗談のつもりがガチになってた。
まぁいい。
「大和魂ってやつもついで見せてやるよ」
「その言葉も嫌いだ」
水曜投稿やめて金曜投稿にして金土日投稿にするわ