1人の兵士の物語1
「日本陸軍歩兵第25連隊所属、源常吉軍曹です」
私は部屋の扉を開け上官に敬礼をする。
「座れ」
上官はタバコをふかしながら窓の外を見る。
私は失礼しますと言い椅子に座る。
「近いうちに日本がドイツ、イタリアと同盟を組むことは知ってるな?」
「はい、もちろんであります」
「上層部はその影響でまた世界規模の戦いが起きると予想している。そこでだ」
上官はタバコを灰皿に押し付けながら座り厳格な雰囲気を漂わせる。
「若くして軍曹に上り詰めたお前なは新設の部隊を任せたくてね」
「なるほど」
「どうだ? やってみないか?」
お国のためになるチャンスだ、逃す手はない。
「もちろんです。喜んでやらせていただきます」
「兵士はこちらで斡旋しておく、就任は明日だ。頼んだぞ。要件はこれだけだ」
「分かりました。失礼します!」
私は敬礼をしこの場を去る。
やった、今まで頑張ったかいがあった。
上官の靴舐めを初め、お酌に、1発芸なんでもやってみるものだ。
普段の訓練も欠かさずにな。
普通にやっても他の者に劣る時は劣る。
そんな時でも気に入られるように上官の機嫌取りはかかせない。
明日からは分隊長か。
これで仕送りできる量も増やせるな。
国のためになること、これが第1ではある。
だからといって家族を養うのを忘れてはいけない。
これまでは母上に迷惑をかけてばかりだったからな。
私は親孝行ができることを嬉しく思いながら夜、ぐっすりと寝た。
今日から分隊長に就任だ。
さぁ、新たな場所でも活躍してみせるとしよう。
私は言われた通りの部屋の前に立つ。
混成第3連隊……か。
確か、混成連隊は色々な兵士がいる所だったな。
軍曹でこれはかなり厳しそうだが上官はこれからの私の伸び代を買ってくれているのだろう。
私は出世コースに胸躍らせ扉を開ける。
「俺の彼女可愛いだろ」
「彼女持ちがデケェ顔すんじゃねぇ。ペッ」
「童貞だからってひがんでんじゃん。おもしろ」
「お前もだろ」
「彼女持ちの俺は童貞コース回避ー」
「「まだだろ」」
部屋の中ではまるで、品性が微塵も感じられない会話が繰り広がっていた。
「俺、ケツ」
「足だ」
「お前ら、そんな下の方見ずに上見ろよ。でかい乳とかいいだろ」
「変わってんな。ちなみに自分は腹」
「変わってんのはお前らだろ」
……ここは本当に軍の基地なのだろうか?
まさか、他国のスパイが内部から日本軍を潰そうとしている?
私は静かに入る。下品な会話はまだまだ続く。
私がこほんと咳払いすると皆、私の存在に気がつく。
「……お前ら、外周ランニング20週からだ」
「「「「「……はい、すいませんでした」」」」」
せめてそういうのは寮での自由時間にやれ。
ランニングを終わらせ次の訓練に入る。
射撃訓練だ。
「彼女持ちの飯尾が今のところ射撃1番だ」
「よっしゃー!」
「は? ズルだろズル」
「俺は狙いがいいんだよ」
「簡単に落とせそうな女狙ってただけのやつがよく言うぜ」
「は? なんだと!」
こいつら、何かと喧嘩に発展するな。
私は呆れながらも口を大きく開ける。
「私語厳禁だって言ってるだろ」
「「「すいません」」」
彼女の有無で優劣をつけるな。
全く。そんなので優劣をつけられたら私はどれだけ劣っているんだ。
「ひがみやろう1の里倉、お前は当たる時は当たるからもう少し集中しろ。彼女持ちに嫉妬して集中力を落とすな」
「はい」
「僻みやろう2の谷上。お前はシンプル下手だ」
「砲兵志願ですので。銃は……」
「ここは混成連隊だ。一応銃も扱える様になれ」
「分かりました」
他の奴は普通といったところか。
じゃあ、次の訓練だな。
次は塹壕堀の訓練だ。
「ケツ好き倉山、お前上手いな」
「穴を掘るのは子供の時から褒められてましたんで」
「なぁ、軍曹はなんで穴掘りしないんだろうな」
「穴掘り出来ねぇからだろ。穴を見ることしかできねぇんだ」
2人はくすくすと笑い合う。
小声で話してるようだが丸聞こえだぞ。
「足好き山浦、乳好き和賀、聞こえてるぞ」
「「ひっ」」
「上官に逆らった罰としてランニングだ」
「「うぅぅ」」
こいつら、軍をなんだと思ってるんだ。
もういい大人だろ。
「できた」
腹好きの野原は塹壕は出来ていた。
だが、掘ってできた土の山で富士山を作っていた。
銀閣寺もついでに。
ほんと、こいつら軍をなんだと思ってるんだ。
まぁ、塹壕自体は出来てるし良しとするか。
他はまぁまぁか。
私は数ヶ月の時間をこいつらと共に過ごした。
下品な会話にも慣れてもう何も思わなくなってきた。
「軍曹、流石に昼を抜かれて腹が空きました。なんでもいいのでください」
「お前の彼女でも食っとけ」
彼女持ちなことを自慢された腹いせだ。
「俺らは体が資本なんですよ」
「これも訓練だ。補給が途絶えた時にも集中力を保つな」
「やりすぎですよ」
自分でも慣れすぎたような気がする。
「流石に食べきれんな。野良猫にでもやるか」
「ニャーニャー」
猫の真似をする彼女持ちはほっておこう。
私が去ろうとするとニャーと言い足を掴む。
私はニャーと言い続けてる変態を他のやつに取り押さえてもらいその場を去る。
「ニャー!」
今までの軍生活では考えられない生活だったが、充実していた。
そんな楽しさが頂点にまで登っていた時だった。
ついにその時が来てしまった。
「もう知ってるとは思うが世界大戦が始まる。君の部隊には前線に出て戦ってもらおうと思ってな」
「分かりました」
「独立して動いて貰うからよろしく頼んだぞ」
「はい、失礼しました」
私は上官の部屋から出る。
……来てしまったか。
まぁ、分かっていたことではある。
仕方がないことだ。
私は部隊に戻る。
「軍曹? どうしました?」
「うんこでも踏んだんですか?」
「いやいや、鳥のうんこが落ちてきたんだ」
「それなら見たら分かるだろ。バカか」
「はぁ!? 彼女できるような人間がバカな訳ねぇだろ」
「関係ないだろ、馬鹿者」
私は少し残念な気持ちになりながら部隊のヤツらを集結させる。
私の顔を見てか心配の声が沢山あがってくる。
「軍曹、どうされたんですか?」
「乳好き」
「和賀って言ってください」
「まぁ、お前らも知ってると思うが世界大戦がまもなく始まる。そこで私達の舞台は前線で独立した部隊として動くこととなった」
まぁ、混成連隊だから独立するのは分かる。
だが、前線だ。
1番死にやすい場所で独立してるから味方からの援護も期待できない。
「恐らく、数日後には出撃することになる。明日明後日は休みにする。家族と会ったりするもよし遊びに行くのもよし」
「彼女とそういう事するも良し、ですね」
「まぁ、後悔がないようにはしろよ」
「「「「「はい!」」」」」
「今日はこれで解散だ」
私は自分の部屋に戻り寝転ぶ。
お国のためだ、覚悟を決めよう。
源って枢機卿にもおったしなんか関係が?って思った皆さん
落ち着いてください、普通に僕がこいつの名前忘れてただけです
なんの関係もありません