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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
多くの屍の上で
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開戦

僕は修行としてまたゾンビの集団を倒す。

今回は18体程度だったな。


「もうそろそろ、終わりだな」

「もうこれ以上できることないしな」


竜さんと星奏さんは頷き合う。

雫さんは適当に頷いている。

もうそろそろということは……


「免許皆伝……と言いたいところだが最後に本当に1人で倒せるかどうかを見て免許皆伝とするか」


今までは竜さんと星奏さんの2人が一緒に前に出てくれていたからゾンビ注意が逸れてた部分もありましたし、確かに本当に1人で戦うことはしてないですね。


「明日は休んで明後日にでもするか」

「これ終わったら太陽は独り立ちするんだよね?」

「少し悲しいですけど、そうですね。皆さんの手を(わずら)わせるのは嫌ですし」

「私達は気ままに暮らせたらいいだけだからな」

「私も正直今の生活の方が楽でいいからね。竜は?」

「俺は……今のままでもいっかな」


僕、本当に強くなったんだ。

これからはいっぱい人助けよう。

それからそれから、太陽をよろしくお願いしますって票数を……って、戸別訪問ダメだった。

ていうか、まだ政治家なれないし。

まぁ、今するべきことを考えるか。

僕達は帰路につく。

この荷台を押すのも次で最後か。

いや、個人的に稼ぐ時はしないといけないから普通に押すんだけど。

竜さん達と一緒に並んで帰りながら押すこの荷台とおさらばするのかと思うと悲しくなるな。

1ヶ月ぐらい、ずっと一緒にいたから。


「今日の晩ご飯何にする? 明後日はご馳走にしたいから今日明日はそこまでお金使いたくない」

「悩みどころだな」

「のり弁とかでいいんじゃね?」

「夕食の話ですよ」


のり弁は昼ご飯でしか食べたくないです。


「のり弁いいね」

「のり弁を選ぶなら日の丸弁当がいいです」

「昭和でしか見たことないぞ」


僕達は楽しく会話をしながら着々と町に近づく。

町に近づくと、多くの騎士の方が4列縦隊で並んでいる。


「進軍、開始!」


大きな声でそう言うと騎士の方達は綺麗に足並みを揃え進み始める。

なんなんだろうこれは。

騎士の人達は何かに怯えながら進み続ける。

僕は騎士の人達の進行について行きながら騎士の人達に尋ねる。


「すいません、何があったんですか?」

「……」


騎士の人は怯えと緊張で何も話せないでいた。

僕は立ち止まり騎士の人達を見送る。

まるで、どこかへ戦争に行く兵士のよう。


「なんだったんだろう、今の」

「戦争でもしに行くんじゃね」

「ないだろ、そんなの」


まぁ、あるわけないか。

戦争なんてするわけない。

多分、大規模なゾンビ集団の討伐とかでしょ。

それか、盗賊団の逮捕とか。

まぁ、この辺はそこまで盗賊いないから前者でしょ。

僕達は気になりながらも町にたどり着く。


「今日帰ったら何する?」

「この前、ジグソーパズル買ったのだが一緒にやらないか?」

「いいね、私やる。竜と太陽は?」

「楽しそうですし僕もやります」

「俺は見るだけでいいや」


僕達が帰った時の事を考えていると数人程度の人が大量の新聞を持ち走り回る。


「号外!号外!」


大声でそう叫び走り回っている。

僕達は気になり新聞を持った人に近寄り新聞を1部買う。


「えー、なになに? 西日本と東日本が戦争へ、かぁ。へぇ……」


雫さんが読み上げたのを聞き僕達の時はしばらく止まる。

……え?


「「「「えー!」」」」


え、戦争ってあの戦争だよね?

え、なんで起きてんの?

歴史学んだことある?

ないよね?

日本国憲法を知らないの?


「えっと、理由は名古屋貴族が持っている爆弾を操る能力のゾンビ能力因子を巡ってであると予想される」

「爆弾を操る能力か、聞いたことしかないな」

「そだね、星奏の元結婚あ――」


星奏さんはシュッと雫さんの口元を手で覆う。


「まぁ、あれは核爆弾とか出せる代物だからな。でも、名古屋以外の東日本が名古屋に手を貸すとはな」

「恩売っときたいからだろ」

「ていうか、いつの間に同盟組んでたんだろ」


なんで起きたのか、気になる理由は山ほどある。

けど……


「どんな理由であれ戦争を起こしていい理由はない。貴族に直談判しに行きましょう」

「行くと言ってもどうするんだ? こんな大事な時期に客人が来たところで貴族は相手しないと思うけど」


確かに、竜さんの言う通りだ。

じゃあ、どうすれば止められるんだ。


「おいおい、この私をお忘れか?」

「この方をどなたの心得る。東京の貴族の一人娘の誠華殿のあられるぞ」


星奏さんが仁王立ちでどこか得意げな顔をする。

そういえばそうだった。


「ただのバツイチお嬢様ってだけだろ」

「死ね」

「シンプル悪口」


星奏さんが竜さんに中指を立てる。

相当琴線触れてますね、これは。

バツイチお嬢様ってのは忘れた方がいいみたい。


「とりあえず、貴族と対面で話がしたいです。いくら危険なゾンビ能力因子が1人の手に渡ってるとしても戦争をしかけていい訳にはなりません」

「そうだな。とりあえず、家はこっちだ。来てくれ」


僕達は星奏さんについて行くように貴族の下へ行く。

絶対に説得して止めてやる。

僕達は星奏さんの顔パスですんなり中に通され椅子に座る。

椅子に座りしばらくすると東京と横浜の貴族である藤原和利(かずとし)さんがやってくる。


「誠華のお友達、よく来てくれたね。ん? 君は誰だっけ?」

日本太陽(にちもとたいよう)と言います。早速ですが――」

「日本ってことはあの陽三内閣のお子さんかな?」

「あ、はいそうです。それで、今日来た理由は――」

「竜君達もお菓子いるかい?」


和利さんは竜さん達に机の上に置かれてあったお菓子を手渡し、秘書らしき長身の女の人がオレンジジュースを持ってくる。


「誠華、また友達が増えたのかい?」

「まぁ、そうです。それよりも太陽の――」

「竜君と雫ちゃんはもうBランクなんだってね。騎士に興味無いの?」

「まぁ、はい」

「今のままでいいですからね」


どうしよう、これじゃただ友達の家に遊びに来たら友達のお父さんがいたみたいになって終わる。


「あの、すいません。ここに来た理由は――」

「騎士になったら誠華の友達だし特別に給与上げちゃうのに」

「ははは、それでも遠慮しときます」

「冒険者の今がちょうどいいんで」


やばい、どうしようと僕が焦っていると星奏さんが声を張り上げる。


「お父さん!」

「どうしたんだい、星奏?」

「太陽の話を聞いてあげてください」

「……」


今一瞬、和利さんの顔が怒りに満ちていたような。


「太陽君は私に何を聞きたいんだい?」

「聞きたい……というより、お願いです。戦争をやめてください」

「……まぁ、私もやめたい気持ちはあるんだけどね。私1人ではやめれないんだよね」

「それでも、自分の騎士を引き戻すことはできるはずです。戦争で得られる利益など1つも――」

「あのさ」


和利さんのその一言で場が一気に凍りつく。

何かを刺すような鋭い視線。

冷たい目付き。

さっきの優しそうな雰囲気からじゃ考えられない。

そのギャップに僕の背筋がピンと張る。


「君が戦争やめたいって言うのってさ。兵士達が死ぬからだよね?」

「そうです。やめる理由なんてそれだけで十分ですよ」

「分かってるの? 相手がどんなものを持ってるのかって」

「はい、爆弾を操る能力のゾンビ能力因子と聞きました」

「それはさ、ちょっとした気持ちだけで1個町を壊すのなんて簡単になる代物なんだ。分かってる?」

「はい。でも、それは話し合いで解決できることですよね?」

「話し合いで解決出来るわけないでしょ」


和利さんは呆れた顔で冷たくあしらう。


「なぜ、そう言い切れるんですか?」

「なぜって、人間だから」


人間だから?

どういうことだ?

人間なら話し合いで解決出来る。


「それは理由にはならないです。人間は話し合えるから」

「何言ってんの。欲望にくらんだ人間は世にいる危険な肉食動物より危険だ。君は動物と話し合えると思うのかい? あ、雫ちゃんはこの会話に入ってこないでね」

「あ、はい」


和利さんは大きくため息をつき何かの資料を確認する。

そして、ニヤリとし僕達に顔を向ける。


「あ、いった!いった!太陽君、何するんだ!」


和利さんは急に頬を押え痛がりながら倒れる。


「え、僕は何も」

「魔法反応がないということは能力で攻撃してきてる。彼は衝撃波を操る能力だから間違いない。これは暴行だ!」


和利さんがそう言うと部屋のドアが開き武器を持った人がゾロゾロとやってくる。


「お父さん、これは一体どういうことだ?」

「誠華、お前が一応娘だから教えてやる。世の中ってのは刃向かってはいけない人がいるもんだ」


星奏さんは驚いてはいたが拳を握りしめている。


「ちょうどよかった。高野竜と南根雫は欲しいと思ってたところだ。誠華とえぇっと太陽か。こいつらを人質にすれば動いてくれるだろ」

「お父さん、自分が何を考えているのか分かってるのか」

「もちろん。一応の娘よ。娘を人質にし娘の友を強制労働。こんなの世間体は悪くなるな。まぁ、大丈夫だが」


和利さんは安堵しながら椅子に座る。


「今回は暴行でそっちが悪い。ということは、犯罪となって隷属刑(れいぞくけい)だ。そしたら、正式に俺の奴隷だ。世間的に見れば娘に裏切られた可哀想な父で世間体も保たれる」

「暴行だなんて!こんなの冤罪です」

「冤罪でもなんでも罪は罪だ。諦めな」

「こんなことをして許されると――」

「誰に許しをこうというんだ」


和利さんはフッと笑い入ってきた人達の目を見る。


「じゃあ、捕まえ――」

「許しなら俺達に乞え」


竜さんは怒りが満ちた声でそう言うと周りに衝撃波を放ち入ってきた人達を壁にめりこませる。


「驚いた。まさか、冤罪ではなく本当に罪を作るとは」

「星奏。逃げるぞ。サイコキネシスでひとっ飛びだ」

「あ、ああ」


星奏さんは驚きながらもサイコキネシスで僕達を浮かせ窓から出る。


「必ず、捕まえる」

和利、お前ようやく正体あらわしたな

お前なんてけちょんけちょんにしてやるからな

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