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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
多くの屍の上で
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修行の成果1

僕達は町から少し離れたところにやってくる。

ここは耶楼さん達と行ったところから結構離れてるし銃持ったゾンビはいないだろう。


「14体ぐらいいるね」


雫さんはクロというツバメを飛び回らせて上から前にいるゾンビ達を見ている。

雫さんの能力は動物を操るって感じの能力なのか。


「太陽、念のために能力因子持っておいてくれ」

「分かりました」


僕は星奏さんから耶楼さんの能力因子を授かる。

まだ食べる気はないけどいつか、絶対にこれを食べる。


「1個しか食べられないから注意しろよ」

「僕でもそれぐらい知ってますよ」

「いやいや、この注意を聞く前に食べたバカがいたからな」


竜さんはそっと顔を逸らす。

あ、竜さんなんだ。


「私達も戦うが必要最低限しか戦わないからな」

「はい。大体は僕がやります」


これぐらい、倒せるようにならないと。


「私と竜が適当に戦う係で雫は後ろだ。雫は1番雑魚狩りに向いているから非常事態用に後ろにいてくれ」

「弱いものいじめが得意なやつみたいな言い方だね。分かったよ」


そう言って雫さんは後ろに下がっていく。

竜さんは渋々前に出て星奏さんは髪をくくりポニーテールにする。


「イメチェンか?」

「空間掌握の訓練も兼ねようと思ってな。ポニーテールは髪をまとめて少しでも負荷をなくすための措置だ」


なんか凄そうな能力持ってるな。

強い冒険者は能力も強いのかな?


「じゃあ、行くぞ」

「はい」

「がんばれよ、太陽」


僕は気を張って前に出る。

今まで教わったことを活かすんだ。

僕はとりあえず、多数を一気に相手取るのは不利だと思い土魔法で壁を作り、1対1に持ち込みやすくする。

竜さんと星奏さんはゾンビを後ろに蹴飛ばしたり吹き飛ばしたりで僕が倒しに行くまでの時間を稼ぐ。

とりあえずは火魔法を打ち込んでから……いや、小石作って風で飛ばす? 氷で足を封じ込める? やばい、どうすればいいんだ。

使える魔法の選択肢を増やしたことで何を使えばいいのか分からなくなる。


「太陽、どうしたの?」


後ろの方から雫さんが声をかけてくる。


「いや、どんな魔法を使えばいいのか分からなくて」

「お前が使いやすいと思ったやつでいい」


そうか、結局は倒せばいいんだ。

自分の感覚を信じるんだ。

僕は手元に火の玉を作り出す。

結局、怯ませるとかならこれしかない。


「ファイヤーボール」


僕は火の玉をゾンビに当て、怯んだゾンビに剣を突き刺す。

僕が前に出ると襲いかかってきたゾンビがいるのでそいつにも火の玉を当て怯ませ倒す。

今度は2体同時に襲ってきたので1体は土の壁を地面から勢いよく生やし空へ吹き飛ばす。

伊月さんのロックパンチの壁バージョン。

もう1人のゾンビにはすごい速さの風を当て襲いかかるスピードを奪い僕はその風に石を乗せゾンビに当てる。

石はゾンビの頭に当たり、後ろに倒それそうになったところに剣を突き刺す。

そして、勢いよく落ちてきたゾンビの首に剣を刺す。

やっぱり怖いな。

でも、戦えてる。

1回周りを見るか。

星奏さんのところ、かなりゾンビ多いな助けに行こう。

僕は星奏さんの所に走っていく。

僕は火の玉を4個作るイメージをする。

それぞれをどこに飛ばすかをイメージし飛ばす。

4個の火の玉の飛ばす方向をバラバラにすると頭がごちゃごちゃになる。

でも、4体同時に怯ませれた。

僕は星奏さんに近かったゾンビを体重をかけた蹴りで倒し首を切る。

まだ火の熱さに怯んでるゾンビにはそのまま首に剣をふりかざす。

魔法で負った傷が少し癒えたのか僕に飛びついてくるが地面から壁を生やし防ぐ。

そして、風で後ろに飛ばした後に地面に水を流すイメージをしゾンビ全員の足元に辿らせた後にその水を凍らせる。


凍束(とうそく)


僕のイメージ通りにゾンビの足元が凍り動けなくなってる。

僕はこの隙にゾンビの首を1体1体切り落とす。

作った氷が薄かったのか途中で溶けてしまうが残り4体だ。

竜さんの所に2体と僕に向かってくるのが2体。

僕は僕に向かって来るゾンビは地面から生やした土の壁で動けなくし竜さんにいる所のゾンビは風魔法で建物の壁まで吹き飛ばす。


「ファイヤーボール」


僕は吹き飛ばしたゾンビに向かって走り1体は壁に当たった衝撃でフラついてる所に剣を突き刺し倒す。

もう1体はフラつきが治まり殴りかかってきたところに風で飛ばした小石を当て、怯んだところに剣で切る。


「え、強」


竜さんが何かを発するが僕はそれを聞く前に閉じ込めたゾンビを解放し切りかかる。

そして、すぐさまもう1体にも切りかかりゾンビを全て倒した。


「どうでしたか?」

「うむ、良くなっとるの。流石、私の弟子じゃ」


雫さんが腰を曲げおばぁちゃんのような仕草をしながら近づいてくる。


「雫は何も教えてないのに師匠面するなよ。まぁ、かなり強くなってるのは確かだ」

「そうですか、ありがとうございます」


よかった、強くなってるんだ。

最初こそ、魔法の選択に戸惑ったけどなんとなくどう使えばいいかわかってきた気がする。


「実戦出来て良かった。なんとなく太陽は魔法の使える選択を増やしたら逆にダメな気がしてたからな」

「なにその、俺は分かってたぜ感」

「これなら2属性魔法辺りも教えて良さそうだ」


竜さんの言う通りだった。

魔法も結局は実戦で使えないと意味ないから。


「ありがとうございます、竜さん」

「さっさとこれ積んで帰ろう」


僕達は倒したゾンビを持ってきた荷台に載せる。

これならもう能力因子を食べても良さそう。

まぁ、ただの気分の問題だったし食べた方がいいよね。

積み込み作業が終わり僕がどうしようかと思っていると雫さんがなにか呟く。


「ゾンビが1体だけでこっちに来てる? 一応ブラウニー達偵察してきて」


なにか嫌な予感がする。

あの時も1体だけのゾンビだった。

もしかしたら今回も……


「なにこいつ、銃持ってる」


確定だ。

僕はすぐさま剣を抜く。


「どこにいるんですか? やってきます」

「待て、俺も前に銃を持ったゾンビに出会ったことがあるんだがそいつら普通に銃を撃ってきたんだ。やめとけ」

「すいません、耶楼さんが殺されたんですよ、多分そいつに。だから敵を取りたいんです」

「いや、ダメだ」


星奏さんは力強く制止する。


「死ぬ危険性は少しでもなくした方がいい。雫、逃げられそうか?」


星奏さんの言葉に僕は無力感を覚える。


「無理だね」

「じゃあ雫、頼んだ」

「……え、私1人?」

「冗談。私も行くぞ。竜と太陽はお留守番だが」

「能力的に安全なのはお前らだからな。早めにやってこい」


竜さんはそう言って2人を送り出そうとする。

死ぬかもしれない……か。

確かに死というのは想像するだけでも恐ろしい。

でも、死ぬのを恐れて戦わないやつが死にかけの人間も助けれるわけがない。

僕は誰かを助けれる人間になりたいんだ。


「星奏さん、僕に行かせてください」

「私達なら銃は効かない。だから、太陽はここで――」

「安全とかどうとか知りません。死んでもいい覚悟がないのに何かを成し遂げれるとは思えないんです。だから、行かせてください」

「……死んでもいい……か」


星奏さんはあごに手を置き考える。


「本当に死ぬかもしれないんだぞ」

「重々承知です」


僕はただまっすぐ星奏さんを見つめる。


「聞くが死ぬ気はないんだな?」

「当たり前でしょう」


雫さんは星奏さんを見つめニヤリとし星奏さんは雫さんの視線から目を逸らす。


「なら、分かった。修行の一環とするから基本はお前が1人でやれ。危ないと思うまでは助けん。あと、能力因子を食べろ。これだけは絶対だ」

「分かりました」


僕は耶楼さんのものだった能力因子を取り出す。

耶楼さん、力を貸してください。

僕は大きく口を開け、能力因子にかぶりつく。


「……まずい」

「よし、行くぞ」


星奏さんはそう言って歩き出す。

僕もそれに続いて歩く。

ん、なんか頭に文字が浮かんできたな。

僕が頭に浮かんできた文字を読もうとすると雫さんが凄く気まずい顔をしながら話しかけてくる。


「あのー、おふたりさん。大変言いにくいんだけどー……ゾンビはあっちです」


雫さんはそう言って僕達が進んでる方向とは真逆を指す。


「なんか、色々かっこよく決めてたのにそのーごめんね?」

「厨二病」

「……うぅぅ、死にたい」


僕は竜さんの一言に顔を真っ赤にして座り込む。

考えてみれば今の僕、凄く痛い人だった。

恥ずかしい。


「竜が太陽泣かせたー。いーけないんだ、いけないんだ」


星奏さんは顔を赤くしながらも強気な発言をする。

締まらないなぁ。

[バレンタイン特別エピソード、下手だとはもう言わせん]

※ここは本編とは何も関係ない世界線です


私は飲み物を取ろうと台所に入る。

料理中の雫がコンロに置いてある鍋を背中で私から隠すように動く。


「雫、今日の晩御飯はなんなんだ?」

「今日は雫ちゃん、特製ラーメンだよ」

「豚骨まで出して本格的だな」

「今晩に間に合うかは知らないけどね」


私が鍋を覗き込もうとすると雫は腕で私とコンロを近づけさせないようにする。

私はなんで私をこんなにも遠ざけるのだろうと思ったが気にせず冷蔵庫を開ける。

すると、中にチョコレートが入ってあった。


「そうか、もうバレンタインか」

「今年は作れそうだったからね。星奏のと竜の、有輝、朱希さん、太陽の分を作った。太陽は渡せるか分かんないけど一応」


そうか、もうバレンタインか。

時の流れというのは早いな。


「せっかくだ、私も作ろう」

「……」


鍋をかき混ぜてた雫の手がピタリと止まる。


「星奏は作らなくてもいいんじゃない? そういうキャラじゃないでしょ」

「いやいや、私だって乙女だぞ。こういうイベント事に積極的になったりする」


雫は何か言いたげ私の顔を見る。

そこにデリカシーを持ったことがない竜がやってくる。


「お前が鍋溶かすかもしれないからだろ。我慢しろ」

「お前には作ってやらんぞ」

「お前には死んでも頼まん」

「なんだと、私がスペシャルに美味しいチョコを作ってもか?」

「作れるもんならな。そもそもお前は作るの次元に立ってねぇんだよ」


いくら竜でも流石にデリカシーをどこからか借りてきた方がいいぞ。


「雫は作って」

「言われなくてももう作ってる」

「しごできは助かるぜ」


そう言って竜は部屋でくつろぐ。

私の仏の顔が阿修羅になってしまいそうだ。


「星奏、顔3つあるけどどうしたの?」

「雫、私はやるぞ。死ぬほど上手いチョコを作って竜を殺す」

「毒入れたらできるんじゃない? 甘い香りするやつ沢山あるよ」


まずは材料集めからだ。

私は自分を奮い立たせ家を出る。



まず私は鍛冶屋に来た。

カキンカキンと鉄を打つ音が聞こえる。


「……えっと、なんて言った?」

「タングステンで作った鍋をくれ」

「……無理」


私は鍛冶屋を追い出された。

くそ、私が鍋に触れると大体融けるから融点が高いやつなら大丈夫と思ったがそんな技術力を持ったやついないか。


「この鍋、タングステンで出来てるんですよ。鉄より丈夫なんです買い取ってください」


私が帰ろうとするともう1つの鍛冶屋から声が聞こえてくる。


「いや、確かに鉄より丈夫だけど融点3000度だぞ? そんな火力出せる炉なんてねぇよ」

「でも、家宝なんです」

「じゃあ、売るな」


タングステンでできた鍋があるのか。

私はすぐさまその鍛冶屋に入る。


「話は聞かせてもらった。10万でどうだ?」

「いや、50万で」


足元見てきやがった。


「ですが、今ならなんと25万円です」


テレビショッピングか。


「あと1分でこの半割りは終了させていただきます」


1分で交渉する時間などない。

私は財布から1万円玉を25個取り出し渡す。


「持ってけ泥棒」

「お買い上げありがとうございました」

「さっき、必死に売ってたやつとは思えない笑顔だぞ」


私はウキウキで家に帰る。

チョコはある、他の材料も完璧だ。


「え、何この鍋。すごい綺麗」

「タングステンでできた鍋だそうだ」

「え、そんなの買ったの?」

「半割りだ、買わない手はない」

「星奏、押し売りとか来たら私か竜を呼んでね」


なぜ、そんな心配わされなきゃいけないんだ。

まぁいいか。

私が早速コンロに火をかけようとすると雫がやってくる。


「私が監督します」


これ以上ない助っ人だ。

私はコンロに火をかけ鍋を置く。

そこに水、ボウルを入れ温まってきたと思ったらチョコを入れる。


「手順は完璧なんだよね。まぁ、今回は大丈夫と信じよう。アイテムも最高級だし」


私は鍋が動かないように手で持ち溶かしたチョコをかき混ぜる。

すると、鍋が段々と赤くなってくる。


「……なんで!?」


水がふつふつと湧き上がってきて大半が蒸発している。


「……なぜだ!」

「ほんとに、料理する土台にすら立ってないね」


雫はそういってコンロの火を止める。


「私に料理は無理なのか」


私は目に涙を貯めながら悔しさをこぼす。


「才能ないレベルじゃないね。ダークマター作るより意味分かんない」

「ダークマターの方がマシに見えるな」


私がうなだれていると雫が鍋を見てアッと鍋を指す。

私は鍋の方を見ると残った余熱でチョコが溶けていた。


「これなら、まだなんとかなるよ」

「し、雫、生チョコケーキ作るのにはここからどうすれば!?」

「そんな難しいの作ろうとすな、ビギナーが。適当に型に入れればいいよ」


雫は料理道具が入った引き出しから色々な型をキッチンペーパーの上に取り出す。

私はボウルを手で持ちその型に流しこむ。


「……熱くないの?」

「え? 全然?」

「頭おかしいんじゃないの?」

「???」


私はなんの苦もなくチョコを型に流し込む。


「こんなのでいいのか?」

「チョコなんて溶かせばなんでも手作りになるの。なんかアレンジしたいなら、そうだなぁ」


雫は辺りを見回すとお菓子棚からクッキーを取り出す。


「これを砕いて中に入れたりとかでいいんじゃない?」

「なるほど、天才だな」

「まぁ、常識だよね」


雫腹立つけど可愛い。


「よし、じゃあこれを竜に渡すか」

「お返しはたんまり貰おう」


私は勝ち誇った笑みを浮かべてチョコを入れた型を冷蔵庫に入れる。

これで竜をぎゃふんと言わせれるな。



バレンタイン当日。

竜は朝起きてリビングに出てくる。


「……雫、幽霊」

「星奏だよ。早く起きたせいで顔色悪いんだよ」


竜への勝利宣言を考えてたら眠れなかった。


「竜、バレンタインだからチョコあげる。お返しは1万円以上で」

「予算をそっちが指定してくんのかよ」

「ほら、私の作ったやつだ」


私は眠気を頑張って覚まし竜にチョコを手渡す。


「……雫に作らせた訳では無いよな?」

「大丈夫、星奏が作ったやつだよ。正真正銘」

「……お前料理できたんだな。よかったな」


竜は涙を流しながら私の作ったチョコを食べる。


「うん、ちゃんとチョコだ。すげぇ」

「ね、すごいよね」


雫まで泣き出した。

なんなんだこれは。



ホワイトデーのお返しか。

1万円以上って言われたしなぁ。

うーん……あ、チョコのカップケーキでも買えばいっか。

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