表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
多くの屍の上で
175/265

別れと師事

僕達は屋上に上がる。

隣の建物にまでできる限り近づく。


「洋介は俺が持つ。危ないからな」

「はいよ」

「物扱いされてるわ、これ」

「ものは物でも邪魔物だけどな」


僕と伊月さんが持っていた洋介さんを下ろし耶楼さんが背負う。


「全員、受け身取っとけよ。衝撃!」


耶楼さんが唱えると僕達は吹き飛ばされる。

意外と勢いあるし、ここビルの屋上だから高いし怖い。

僕達が衝撃波で建物を移ろうとしていると一体のゾンビが飛び上がってくる。


「……は?」


そのゾンビは銃を持っていて耶楼さん目掛けて銃を撃つ。

耶楼さんは咄嗟の判断で洋介さんを離し更に衝撃波を与え僕達を吹き飛ばす。

僕達は受身をとってなんとか着地し洋介さんは能力で防御力を上げたのか受身を取れていなかったが耐える。

ゾンビはそのまま地上に落ちていく。


「おい、耶楼。大丈夫か」


耶楼さんの右胸に穴が開いており、そこから血がどくどくと溢れ出す。


「魔力玉寄越せ、早く」


耶楼さんは必死の形相で手を出す。

耶楼さんの体はもう変色しかけていた。


「あ、あぁでも何するんだ?」


伊月さんは持っていた魔力玉を手渡す。


「俺はもう助からん。だから、お前らだけでもな」

「おまっ何して――」

「太陽、初めてだってのにこんな目に遭わせて悪かった。でも、お前ならやってけると思うから頑張れ」

「は、はい」


あまりにも突然の別れで気がおかしくなりそうだった。

さっきまで笑ってた人がもう死ぬんだ。


「お前ら、俺がいなくても頑張れよ」

「は?」

「そんなの、無理に決まって――」

「衝撃!」


魔力玉がパリンと割れると物凄い衝撃波が僕達を吹き飛ばす。


「耶楼!自己犠牲とかかっこ悪いことすんじゃねぇぞ!」

「こんな勝手が許される訳ないだろ!」

「今からでも助けに――」


ゾンビはもう一度屋上に飛び上がりパンッという銃声を辺りに響かせる。

その音が鳴り響いたのを聞くと僕達は口を開けることが出来なくなっていた。

あぁ、人って簡単に死ぬんだ。



僕達は町の門の前に降り立った。

伊月さんと海室さんの風魔法のおかげでなんとか助かった。

そして、耶楼さんは僕達と一緒にゾンビを乗せた荷台も吹き飛ばしており僕達はそれに洋介さんを乗せて押し、ギルドへと足を運んだ。

この間、誰も口を開かなかった。

開けなかった。


「こちら、達成報酬と死体の換金した額となります」


松葉杖を貰った洋介さんが報酬袋を貰い皆に均等に配る。

本来であればクエスト前に倒したゾンビ達は倒した分のお金を各々に渡していたのであろうけど、そこまでする心の余裕がないのだ。

各自、宿の部屋に向かい夜になるとたまたま全員食堂にいたのでなんとなく同じ席に座る。

同じ席に座ったものの話せるような雰囲気ではない。

今日初めてゾンビと戦い、貰ったお金で食べたご飯は鉛にうま味調味料をかけたような味だった。

達成感はあるものの、感じる余裕はない。

風俗店に行きたがってた洋介さんは食べ終わるとすぐに宿の部屋に行く。

海室さんは1缶の安いビールを飲み部屋へと行く。

浩史さんは1瓶の酒をごくごくと勢いよく飲みツマミもバクバクと食べる。

食べ終わると暗い顔をして部屋へと行く。

伊月さんはご飯をちびちびと食べる。

僕はご飯は食べ終わったがちびちびと水を飲む。


「……もしかして、待ってる?」


伊月さんは見せかけの笑顔を浮かべ僕に話しかける。

本当は会話ができるような雰囲気じゃないのを分かっているのに。

僕は首を振り、またコップの水をチビっと飲む。


「そうか……」


伊月さんはご飯を残して席を立ち部屋へと向かう。

賑やかなはずの食堂がやけに静かだ。

僕は自分の弱さを恥じた。

僕が弱くなかったらあの人は死ななかった。

僕がもっと早くに魔法の使い方をマスターしていればあのゾンビに対して動けた。

僕があの時すぐにゾンビに魔法を打っていれば。

僕は自分の弱さを突き付けられながら眠りにつく。



心が暗いままな僕にも朝がやって来る。

太陽は無情にも地面を明るく照らし尽くす。

僕が食堂の方に行くとあるポスターの前にゾロゾロと人だかりが出来ていた。

僕はそれが気になりながらもあの人達の元へ向かう。


「ごめん」


開口一番、洋介さんに頭を下げられる。

え、急にどうしたんだろう。

僕が困惑していると浩史さんがすぐに口を開く。


「あ、急に謝られて驚かせたな。その、実は騎士になる条件が下がったんだ」

「な、なるほど?」

「俺達も騎士になろうってこと」


騎士になることと謝ることにどんな関連性が?


「騎士になる条件がCランク冒険者であることだから、太陽は無理なんだ。ごめん。昨日仲間になってもらったばかりなのに」


伊月さんは申し訳ないような顔をする。

騎士は色々と楽で命の安全も冒険者より全然あると聞いたことがある。

でも、そんな理由で騎士になる訳じゃないと思う。

多分、昨日の出来事が相当脳内に残ったのだろう。

もちろん僕に拒否権があるはずもなく。


「大丈夫ですよ。耶楼さんが僕ならやっていけるって言ってましたから。皆さんは騎士になってください。昨日は本当にありがとうございました」


僕は感謝だけ伝えその場を離れる。

ここにいたら空気の重さで死にそうだ。



僕は町の外に1人で出る。

僕を仲間にしてくれる人がいなかったから。

でも、昨日で色々と教えてもらったし大丈夫だよね。

いい感じのクエストはなかったしDランク冒険者のノルマ分であるゾンビを倒しておこう。

魔法で怯ませれば僕の剣でもゾンビの首を切れるはず。

僕は荷台を押しながら廃れた東京の町中を歩く。

ゾンビどこにいるんだ?

気配探知能力がないと探すの一苦労だな。

前はこの辺にも結構いたのに。

大体は建物の中に入ってたりするみたいだから、怖いんだよね。

僕は近くの建物に臨戦態勢で入る。


「どこからでもこーい」


僕が緊張をなくすために強気な発言をしながら進む。


「この堕天使が1人、太陽様なら一発でお前らなんて……」


ドゴーンという音ともに上の階の床が抜け一体のゾンビが出てくる。


「……耶楼さん?」

「ウガァァァ!」


耶楼さんと思しきゾンビが僕に向かって走ってくる。

僕は耶楼さんの姿に戸惑い腰が抜ける。

やばい、どうしよう。

こういうとき、耶楼さんなら冷静に立ち向かうかな。

えっと、えっと……

僕は剣を適当に振るが耶楼さんゾンビに剣を吹き飛ばされる。

まずい、逃げないと。

僕はすぐに走り出し外に出る。

耶楼さんゾンビはそんな僕に襲いかかってくる。


「誰か!助けて!」


僕は必死に、必死に逃げる。

だが、耶楼さんゾンビは自信を吹っ飛ばし僕に体当たりしてくる。

衝撃波を操る能力はゾンビになっても健在なのか。


「ウギャァァ!」


耶楼さんゾンビは腕を思いっきり振り下ろしてくる。

あ、死んだ。

人の命って本当に軽いんだな。

まだ死にたくないよ。

僕は……僕は……まだ夢を諦めきれないよ。

僕はただ迫ってくる不条理な現実に目を向けることしか出来なかった。


「ソニックブロウ」


そう思っていた時だった、耶楼さんゾンビが急に吹き飛ぶ。

僕がキョトンとしていると2人の女性が前に出る。

1人は背が高く、僕の父さんより高い位の人と、もう1人は163cmの僕よりもかなり背が小さい人だ。


「大丈夫?」

「え? あ、はい」


背が小さい人が僕に手を差し出して僕を立たせる。


「アトムファイヤ」


後ろから男性の声が聞こえると耶楼さんゾンビを焼き付くしその隙をついて背の大きな人がトドメを刺す。


「危なかったな」


背の大きな人は倒したゾンビを持ち上げ自分達の荷台に持っていく。

この人達、強い。

僕を助けてくれた3人組は荷台に戻り何か話しあっているようだ。


「私がトドメを刺したんだし私が主人公だろ」

「いやいや、手を取ってあげた私だよ。主人公は手を差し伸べないと」


男の人は話し合っている2人を尻目に妙に落ち着いた顔をする。

今の僕は弱い。

でも、もし強くなれるとしたら今だ。

チャンスを逃すな。

国の頂点に立とうとする人が人命を軽んじてはダメだ。

もう命が軽いなら僕が重くする。

僕が強くなって他の人を守れるようになるんだ。

僕は助けてくれた人達に近づく。

助けてくれた人達は僕に目をやる。

僕は大きく息を吸い大きな声で話す。


「僕を弟子にしてください」

やっと竜達と合流したぞ

うぇーい

ふうふう

長かった

本当に長かった

お知らせとしてこれから水曜日にも投稿したいと思います

書き溜めを早く消化したいんだ

週3投稿カッコイイと思ったらブクマといいねください

( • ̀ω•́ )✧

それぐらい当たり前だろと思ったらブクマといいねください

自己承認欲求満たしたいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ