初じめての戦闘は補助付きで
僕達はドンドンとビルの中に入っていく。
中は太陽が登ってるおかげで明るく見えやすいが少し不気味だ。
パソコンがズラリと並んでおり前はここで沢山の人達が働いていたのだろう。
「数はそこまでいない」
「まぁ、本命のクエストの建物じゃないし小遣い稼ぎ程度に思うか」
「それと新人研修も兼ねてだな」
「気合を入れて頑張ります!」
「その意気だ」
僕達は気配探知能力を持った海室さんについて行く。
心臓がバクバク言ってる。
緊張で足が上手く前に行かない。
大丈夫、大丈夫だ。
施設で何度も練習したろ。
失敗ばかりが目立ってたけど。
火魔法なら飛ばせる。
「この階だ」
「お前ら、武器は持ったか!」
「「「「おう!」」」」
「ここなやつらは小遣い稼ぎだと思え。倒した数がお前らの今日の小遣いだ」
「「「「うおー!」」」」
「行くぞ!」
耶楼さんのかけ声とともに全員でなだれ込む。
「今日はお気にの嬢を指名するんだ!」
洋介さんが一気に前に行く。
ゾンビ達はそんな洋介さんを集中的に見る。
僕達にヘイトは向いていない。
僕は両手を前にかざし目をつむる。
魔法はイメージ。
燃え盛る炎を思い浮かべるんだ。
そこに薪を入れるように魔力を注いで……
「出来た!ファイヤー……何この小さい玉」
僕は小指ほどの塊の炎しか作れてなかった。
その感に前に出る人は前に出る。
耶楼さんは前に出てゾンビ達の腕、足を切る。
確か、施設では腕や足を切っても再生すると言われたんだけどな。
そういえば鍛治科の友達が能力で作った鉄ならゾンビの再生力を弱めれるとか言ってたしそれか。
ってそんな事より魔法作りに集中しなきゃ。
「ストーンプレス!」
海室さんは魔法でゾンビを押し潰し、その隙を逃さずに洋介さんが首を切る。
だけど、洋介さんの後ろに数体のゾンビがやってくる。
「洋介さん!」
「大丈夫。パワーアップ!」
洋介さんがそう言うと動きが機敏になり数体のゾンビを簡単に相手取る。
あ、今度は耶楼さんの後ろにゾンビが。
「衝撃!」
耶楼さんの後ろにいたゾンビは全員向き飛び、浩史さんがそのゾンビに切りかかる。
皆、すごい。
僕はこんな所に入れてもらってるんだ。
僕も頑張らないと。
僕は必死に魔法で作った火に魔力を込める。
大きくなれ、大きくなれ。
そう念じるが中々大きくならない。
何がダメなんだろう。
「太陽君、大きく火を作るイメージをするといいよ」
隣にいる伊月さんは魔法で石を飛ばしながら僕に教えてくれる。
「え?」
「火魔法に魔力を込めても熱くなるだけだから。大きくしたいんならイメージでやらないと」
「なるほど、ありがとうございます」
僕は伊月さんに言われた通りに火が大きくなるイメージをする。
すると魔法はドンドンと大きくなってくる。
最初にどう作るかのイメージが必要なのか。
勉強になる。
「ファイヤーボール!」
僕は作った火の玉をゾンビに向けて飛ばす。
すると、ゾンビは燃えて怯む。
その隙を逃さず耶楼さんはゾンビの首を切る。
「ナイスアシスト」
「ありがとうございます」
よし、この調子ならもうちょっと。
「これで終わりかな」
見た感じ、ゾンビはもう倒されていた。
「海室、数そこまでいないとかほざきやがって。まぁまぁいたじゃんか」
「俺達が戦ってきた数的に考えればそこまでだろ」
「その油断が命取りになるんだからな。具体的な数を言うのが理想だが、それが無理なら多く見積って言ってくれ」
「はーい」
浩史さんは海室さんに文句を言いながら倒したゾンビを下に落とす。
他の人達もゾンビを下に落としているので僕はよく分からなかったが一緒になって落とした。
ゾンビを持つと改めて人間だったんだなと思うが施設で沢山倒されたやつを見てきたおかげで抵抗はない。
「海室のおかげで倒せたやつが5体、伊月のおかげは4体、洋介は5体、浩史は4体、俺が6体、そして太陽のおかげは1体だな。よし、下に降りて荷台に積むか」
耶楼さんはそう言ってビルの階段を降りる。
ゾンビを落としたのは下の荷台に積みやすくするためか。
確かにあの数のゾンビを運ぶのは大変だ。
経験の差ってやつか。
僕達は下に降りて荷台にゾンビを積み、目的地に向けて僕が荷台を押す。
地味に重い。
「目的地までもうすぐだぞ」
「魔力水持ってる、いざって時の魔力玉もある、剣はまだ使える、よし大丈夫そうだ」
耶楼さんはそれぞれの武器の状態やアイテムの確認を行う。
命を守るためにもこういう小さな確認って大事なんだな。
目的の建物の前に着くと海室さんは前に出て目をつむる。
「数は……50、60、63……63体で、2階に固まってる。ここら辺に他のゾンビの反応もないから前だけ見てれば良さそうだ」
「分かった。じゃあ、作戦としては俺が能力の衝撃波で小分けにして分断し続けるから後はさっきみたいな感じで行こう」
「なるへそ。つまりいつも通りね」
「能力持ちのお前が前出ろよ」
「わーってるわ」
「太陽君、頑張ろう」
「はい!」
大丈夫、さっきので魔法のコツは掴んだ。
火魔法なら助けになれる。
「死ぬなよ。行くぞ」
耶楼さんが前へ出て建物の中に入っていく。
僕達も耶楼さんに続き足を進める。
「さっそくお出ましだな」
2階に上がろうと階段に近づくとゾンビ達が出てくる。
「その後ろにもまだまだいる。あまり前に出すぎるな」
「ていうことはあいつらを前に出させればいいんだな。衝撃!」
耶楼さんの能力で階段近くにいた7体ほどのゾンビが下に弾き落とされる。
落ちたゾンビは落下の衝撃でぐったりとしている。
その隙を逃さず洋介さんが前に出て颯爽と首を切る。
浩史さんも洋介さんに続いて前に出て首を切る。
再生し立ち上がったゾンビ達は耶楼さんが食い止め、海室さんと伊月さんが石を飛ばす魔法で怯ませ、耶楼さんが首を切る。
僕が出る幕一切なかった。
でも、ここからまだまだゾンビがいるんだ。
活躍出来ることならまだ沢山ある。
活躍して、ゾンビ生活が終わるまでは一緒にいさせて貰えるようにするんだ。
「階段付近にいたやつも降りてきたぞ」
「こっちに向かってくるやつの数は落としたやつ含めて12体」
「それならまだ相手にできるな。自分の魔力量を見誤るなよ」
僕の魔力量は……4800!?
魔法1発しか打ってないのに。
あ、そうかあの魔法に魔力注ぎ込み過ぎたんだ。
今回は魔力をそこまで使わないでおかないと。
僕は今回こそはと思い両手を前にかざす。
火の玉の大きさをイメージし、燃え盛った火をイメージし、飛ばす方向や速さを考える。
あそこに打てば洋介さんの助けになれるな。
「ファイヤーボール!」
僕は火の玉を放つ。
が、浩史さんが僕の射線上に入ってきて浩史さんに魔法が当たる。
「あっつ!」
「ごめんなさい!」
僕は急いで近づいて着弾地点に水をだばーっと流す。
その隙にゾンビがやって来て長い爪で引っ掻こうとしてくるが間一髪でゾンビが吹っ飛ぶ。
「太陽、お前はあまり前に出るな。浩史、ちゃんと周りを見ろ」
「すまん。太陽、もう大丈夫だ。下がっててくれ」
「本当にごめんなさい」
耶楼さんは吹っ飛ばしたゾンビに魔法を当ててから切りかかる。
耶楼さん、魔法も使えるんだ。
僕は後ろに下がって今度こそはとまた両手をかざす。
僕が火の玉を作り終えると襲ってきた12体のゾンビは倒されていた。
僕、浩史さんに誤射しただけだったな。
竜達、出てこなかったなぁ( ´・ω・`)