初心者冒険者
僕の名前は日本 太陽。
今は子供保護施設の中にいます。
ゾンビなんかが出てきたせいで僕を庇って両親を亡くなりました。
どうしてもゾンビが許せなくて対抗する道を選んだのはいいんだけど弱すぎて話になりませんでした。
保護施設の中では農家科、鍛治科、冒険者科、公務員科というものがあり、16歳になって施設を出ることになっても生きていけるように学習できるプログラムがあります。
僕はもちろん冒険者を志したんだけど、運動テストはビリだったし魔法だってそこまでちゃんと使えるという訳ではなく成績で言えばビリでした。
弱すぎて弱すぎて他の子達からも弱っと言われてました。
そんな僕も今日で16歳になりました。
冒険者科の課程を修了しないまま施設を卒業です。
僕、死んだなぁ。
どうやって生きていこう。
「達者でな」
「今までありがとうございました」
施設長に別れの挨拶をし僕は外に出る。
出る時に渡されたのは冒険者科に入った時に最初に貰える冒険者カードと今日寝泊まりできる程度のお金。
……とりあえず、冒険者ギルドなる物に行ってみるか。
冒険者ギルドにはクエストと言われるお金を稼ぐための物があるらしい。
そこで緊急でここのゾンビを倒して欲しいとか取ってきて欲しい物とかの頼み事を高い金額を払ってギルドに頼み僕達冒険者がやるという仕組みになっている。
とりあえず、仲間を探さないとな。
僕一人じゃどうしても無理だ。
僕は冒険者ギルドに入り、辺りを見渡す。
僕を仲間にしてくれるような所を探さないとな。
僕がテーブルに座って喋っている人達を見ていると黒のローブを着た集団に囲まれる。
「そこの迷える子羊よ。我々、漆黒の堕天使団の仲間にならないか?」
「今ならかっこいい黒のローブが貰えるぞ」
ここは辞めといた方が良さそうだ。
僕は丁重にお断りの意志を伝えすぐに離れる。
あれは厨二病ってやつだ。
施設にもいたし中学時代にもいた。
……あ、そうだ。
確か数ヶ月前施設を出たやつに冒険者科の中学からの友達がいたな。
そいつに掛け合ってみるか。
僕は急いで受付のところまで行きそいつの名前を伝える。
すると、名古屋への遠征中にゾンビになってしまったらしい。
僕は訃報を聞いて落ち込みながらも仲間探しに奮闘する。
手始めにあそこにいる人達に声をかけよう。
「あの、僕を仲間に入れて貰えませんか? 雑用ならなんでも出来ます」
「え? あぁ、それなら大丈夫かな。うちにはもう雑用いるし」
まだまだだ。
「僕を仲間にしてください。雑用なら何でもします」
「え、いらない」
なんのこれしき!
「僕を仲間にしてください。雑用なら何でもできます」
「剣の腕は?」
「止まってるゾンビの首を切れる程度です」
「魔法はどの程度使える?」
「火魔法を打ち出す程度です。あ、あと水ならダバーっと出せます」
「……じゃあ、魔力量は?」
「確か、5600です」
「……今の平均7000だからなぁ。……うん、無理」
次だ次。
「僕を仲間に――」
「可愛い顔してるわね」
「失礼しました!」
もう1回。
「僕を――」
「うちらはそこの店で風俗やってる嬢ってだけだから。採用して欲しいならギルド出て真っ直ぐ行って――」
さらにもういっちょ。
「僕を――」
「うち、男の娘もバンバン採用してるから。君可愛いし女装したら結構需要あ――」
「失礼しました!」
まだまだ!
「僕――」
「雑魚はいらん。どっか行け」
今のところ全敗だ。
ていうか、なんで冒険者以外のやつが利用して……ってそっか食堂あるからか。
え、今のところ僕って体売るしか生きていけないの?
男なのに可愛いとか言われたし。目の色ピンクだからかな。
関係ないか。
母さん、もっとかっこよくて強い体に産んで欲しかったよ。
……しょうがない、今日は無理だったけど明日ならいける。
僕はしかたなくギルドの宿に泊まることに。
もうお金すっからかんだ。
ここ最初に来た時はもっと安かったんだけどな。
その代わり色んな人が寝てる中で寝るとかで気は休まらなかったけど。
僕はベットに横たわり窓の外を見る。
……僕には大層大きな夢があります。
それは父さんのような立派な政治家になって日本をより良い国に導くことです。
お父さんが僕を生かして死んだのもきっと僕なら日本をいい国にできると思ったからでしょう。
それ以外の理由なら僕を助けるのではなくお父さんが助かれば国がよくなること間違いなしですから。
今となっては声がでかいだけの子供になってしまったけどね。
「父さん。僕、国を導くとかそれ以前に生き残れるかな」
朝になった。
冒険者達はズラズラとギルドにやって来ている。
朝一番のこのタイミングなら沢山の冒険者がいる。
仲間にしてくれる人もいるはずだ。
「君、漆黒の堕天使団に――」
「そこは大丈夫です」
よし、あそこで盛り上がってる人達に声をかけよう。
「すいません、僕を仲間にしてくれませんか?」
「耶楼、どうする?」
「冒険者ランクは?」
「Dです」
冒険者科の生徒は自動的にEからDになるんだ。
「なら冒険者としての基礎は抑えてるんだな」
「施設で色々学びましたから」
「施設出か。まぁいいか。魔法と剣、どっち派だ?」
「どちらかと言うなら魔法。ですが、魔法もあまり得意と言う程ではございません」
「まぁ、雑用に丁度いいか。難覇耶楼だ。よろしく」
僕は耶楼さんと強く握手をする。
「日本太陽です」
「日本? そういえばゾンビが出てくる前の内閣総理大臣もそんな名前じゃなかったか?」
「あ、それは父さんです」
「おぉ、かなりの大物っ子だ」
父さんのおかげで仲間の輪に入りやすそう。
「じゃ、そろそろ行くか。太陽」
「はい、耶楼さん」
僕は耶楼さんについて行き町の外を出る。
町の外に出る前に荷台を貸してもらい僕はそれを引っ張る。
僕達の数は僕含め6人か。
少し廃れたビル達が時間の経過を教えてくれる。
「そういえば耶楼、この前罰ゲームでナンパした子ってどうなったんだっけ?」
「洋介、前にも言ったろ。振られた」
「そうだったな。最初は罰ゲームだったのになんかお前、めちゃくちゃマジになってたよな。めちゃウケたわ」
「だって、あの子凄くいいんだ。話してると伝わってくる何か大きなことを隠してる感じとか。それに最後、私じゃあなたと釣り会えないみたいな暗いことを言われたけどもしあの子の闇を照らせたらって思うとすごく胸が高鳴るんだ」
……この人もしかしてやばい人?
「その南根星奏ちゃん? に相当惚れ込んでるんだな。ていうか、俺未だに浩史が酔った勢いで罰ゲームに追加されたセリフ好きだわ」
「あの、君は俺を魅了しちゃう能力者ちゃん? ってやつだろ」
……まずい、会話の流れについていけない。
まぁ、いいんだけどね。
いいんだけど、疎外感がやばい。
「よくあんなの言えたよな。俺なら無理だわ」
「あ、この建物の中ゾンビいる」
僕と同じように黙ってた人は横のビルに指を指す。
「流石、気配探知能力者」
「そして耶楼は俺を魅了しちゃう能力者ちゃん?」
能力って確か、ゾンビ能力因子を食べた時に発現する魔法とは異なる力……だったかな。
「うるせー。あ、そうだ。太陽ってなんか能力持ってるか?」
「僕はそんな大層なのは持ってません」
「そう、なら後ろで打てるなら魔法を打ってて。無理はしなくていいから」
「はい!」
よし、初めての戦闘だ。
張り切るぞ。
あれ? 竜達は? と思った読者さん
安心してください、多分次回出てきます
調子良かったら次次回
もしかしたら次次次回、次次次次回ぐらい先かもしれないけど
絶対に出すんで、もうちょっとだけ弱弱主人公感満載の太陽君をお楽しみください
ていうか、あいつらが主人公やから出なかったら切腹ものっすね