僕は誰かを救えたのだろうか
私は教祖からの猛攻を防ぎながら目標地点へと向かう。
こいつ、さっきまでより攻撃の仕方が上手くなってる。
そのせいでどれだけ頑張って避けても当たって私のバリアを使わざるを得なくなる。
これじゃ予想してたより私の頭がもたなそうだな。
「エアーウォール!」
私の後ろに見えない壁を作り移動するのにかかる時間を増やす。
教祖は私の出した壁を1個ずつ壊してくる。
だが、確実に距離は稼げてる。
雫の位置、そして私と教祖の位置、完璧に予想通り。
「メイクアップ!」
教祖がそう言うとこの複雑な結界は形を変える。
ここで形を変えてきたか。
こうなると、雫の進む速度が変わる。
私の計算が狂ってしまう。
……いや、これぐらいは予想出来た。
教祖に知性が戻ったような態度から推測は出来た。
私のミスだ。
だからこそ、焦らずに対応するんだ。
この変化した複雑な結界の構造は私なら丸分かりだ。
そこからまた新たな道を探すんだ。
「迷路を変わらせる程度で満足したのか? ほら、どうした。私にかすり傷の1つでも食らわせてみろ」
「オマエもツヨクナッタテイドでマンゾクするな」
全くもってその通りだな。
「お前なんかに言われなくても気づいているがな」
「メイクアップ!」
また、構造が変わったか。
この戦いは私がいかに早くこの構造に適応できるかにかかってるな。
「ブンダン!」
教祖のかけ声とともに私の目の前にいきなり結界が現れる。
流石に急すぎてぶつかってしまった。
その隙をつかれ教祖が近づいてくる。
ここで攻撃を食らったら能力のせいで頭がパンクする。
でも、能力を使ってないとこいつのパンチは恐らく防げない。
受け流そうにも結界のせいで逃げる範囲が狭い。
この先にワームホールを繋げて逃げてもすぐに追いつかれる。
……いや、いける!
私はすぐさま、ワームホールに入りこの先の道に進む。
教祖は考えてた通りにすぐに追ってきたがその前に雫が後ろからやってくる。
そして、教祖の周りの結界も解く。
「流石に慣れてきたよ」
雫は教祖の死角を突くが教祖は結界を解かれたことで雫に気づき振り向く。
雫は首にまで攻撃できないと判断したのか拳で背中に風穴を開ける。
雫は教祖に触れたついでにこの複雑な結界迷路を解除し拳を戻す。
今、完全に雫に気を取られてる。
私はこの隙を狙って剣を突き出す。
リーチが足りない分はワームホールで補い首元に剣先を届かせたが首周りの結界に邪魔される。
首に常に結界を貼るようにしていたのか。
「ザンネンだったね」
教祖は私の方は向かずに雫に向けて足を踏み込み、みぞおちに拳を入れる。
「ジャストガード!」
雫はみぞおちの防御力を上げ教祖の拳に耐える。
さらに雫は教祖の腕を持ち空高く羽をはばたかせる。
「フォールストライク!」
雫は高所から落下し落下時の衝撃を教祖に与える。
「サンプ」
教祖の体が更にトゲトゲし出す。
そのトゲから逃げるように雫は後ろに下がる。
更に精神汚染物質を出したのか。
教祖がどのように物質を出してるのかまで分かる。
これやばいな。何回も使われたら頭死ぬぞ。
私がどのように攻めるか考えてたら遠くの方で何かが動く。
これは……やっと起きたのか。
遅いったらありゃしない。
精神力も私の勝ちだな。
「雫!」
「星奏も分かってるんだね。了解」
そうか、雫には気配探知があったからな。
私達は周囲に結界を貼り終えた教祖に立ち向かっていく。
もうそろそろ頭が限界だ、これで終わらせる。
「ブンダン!」
教祖は私をご指名か。
教祖はいきなり私に殴りかかってくる、逃げれないように結界で周りを囲ってから。
私は真正面で受ける。
うぐぐぐ。
教祖のトゲトゲした拳が私の周囲に入り込む。
私の周りの空間が歪み、教祖の拳が私に届くのを阻害する。
この空間の歪みも頭に入ってくるのがかなりキツイな。
鼻から鼻血を垂らしながらも私は耐え、結界のそばに近寄る。
「ワームホール!」
結界の外と中を繋ぎ雫が外からやってくる。
「生まれろ、生命よ」
雫が地面を触りながら走るとコンクリートの蛇が出てきて教祖の周りを巻き付く。
「下がって!」
「了解」
私は雫と共に教祖から離れる。
そして、乾いた風が教祖を中心に吹き、土のような粉が宙を舞う。
そこにちょっとだけ火花が散り大爆発が起こる。
《遅いぞ、竜》
《……ごめん》
その大爆発が終わると雫がすぐさま駆け出す。
それに続いて私も走る。
「虚剣」
私は竜の爆発魔法で結界がなくなった教祖に首元に向けてワームホール越しに剣を突き刺す。
流石にここは常に守っているか。
ここで私は2本目の剣を浮かせて持ってきワームホール越しに腹を突き刺す。
「コレぐらいなら!」
教祖が私が刺した剣を抜き首元にあった剣を払いのけ私を蹴ろうとする。
私は当たる前に体を浮かせ後ろにひかせると教祖の後ろに雫がやって来る。
「サッカーしない? お前ボールね」
雫が教祖の頭付近まで高くジャンプをして頭に向けて蹴りかかる。
雫はそのまま頭に向かって足を振るが、ギリギリで首元にあった結界を移動させて頭に攻撃が入らなかった。
まずい、このままじゃ私の頭がもうもたない。
どうする……どうする……いや、今あいつの首元に結界は無い。
耐えろよ、私の頭。
私は教祖に向かって走る。
そして、ワームホールに入って少し距離を縮め、またワームホールに入って距離を縮める。
まだだ、あと数メートル。
私は落ちてる剣を浮かせいつでも動かす準備をする。
あと1m。
私は剣を浮かせ、教祖の首に向けて飛ばす。
「アマイ!」
教祖は雫の方に使ってた結界の1部を剣の方に持ってきてギリギリで耐える。
「甘いのはどっちだろうな」
私はもう一本の剣を能力で手に運び、走っている勢いを乗せて突き出す。
「ソレも同じことだ」
教祖は更に結界を出し私がいる方向の首を守る。
「方向って4個あるんだぞ」
あと50センチ。
「虚剣!」
私は結界がない場所と突き刺す剣先の空間を繋げる。
私の剣先は見事に教祖の首に刺さり剣を少し動かすことで教祖の首を完全に斬る。
私の勝ちだ。
僕は首を切られ頭が地面へと落ちていく。
僕、負けたんだなぁ。
あいつらの分まで頑張るって、僕が新しい世界を作るって、そう意気込んだのに負けたのか。
僕の行動ってやっぱり間違ってたのかな。
「そんなことないですよ」
この声は……
僕が気がつくと真っ白な空間にいた。
足元が雲のようにフワフワだ。
「私達はあなたのおかげで救われました」
僕は声がする方を見るとあいつらがいた。
天郎と士郎、升、水夢、庄司、純也、正雄、楓、隼。
「なんで……」
「俺、あなたがいたから仲間ってのを知れたよ。ありがとう」
升は見つけた時、色々と可哀想だったからね。
でも一番いいやつだったな。
「私の思いが分かる人がいて嬉しかったです」
天郎は少し顔つきを変えて話し出す。
「天郎が感謝してるなら俺も感謝する」
士郎とはもうちょっと関わりたかったな。
「チャンスをくれてありがとう」
水夢、お前に夢の続きを見せてやれなくてごめんな。
「俺、自分のことがちゃんと理解出来た。ありがとう」
庄司って俺って一人称だったっけ?
私だった気が……
「少数派の価値観を持つ私を救ってくれたのは間違いなくあなたです」
純也、お前は僕と同じような境遇だったからな。
助けたくなった。
「出生地だけで差別されて孤独だった俺を救ってくれてありがとうございます」
正雄、どうしようもないことで否定されるなんて辛かったよな。
「女として生きたくても縛られてた私に自由をくれてありがとうございます」
楓、自由になりたくても自由になれないって辛いもんな。
「いじめなんかするやつらに復讐する機会を暮れてありがとな」
隼、いじめは僕も許せないから凄く共感。
皆が皆、僕にお礼を言う。
これはきっと僕が救われたいがために見てる幻想かもしれない。
僕の行動はきっと間違ってる。
そのせいでたくさんの人が犠牲になった。
でも、僕が行動したからこそ救われたやつもいた。
僕の行動は確かに誰かの心を救えたんだ。
この世界に救いだけでももたらせたんだ。
「僕もありがとう」
僕は久しぶりに心の底から笑顔になった。
もし、次があるなら今度は誰かに寄り添って価値観を認め合えるそんな世界を作ろう。
ついにゾンビ教組全員殺されちゃったなー
ちなみに自分は樹田升が一番のお気に入り
あいつの登場シーンが可哀想すぎて好き