私がしたいこと
私が能力を発動させると周囲の情報が一気に入ってくる空間把握だ。
雫と教祖がどこを見てるとか、あの家の中にあるものとか、竜が落ち着き始めていることとか。
それにこの能力はこれだけじゃない、私から50センチ以内なら空間と空間を繋げられる。
少しだけのワームホール。
あともう1個は――
教祖が私に向けて殴りかかるがある一定の所で止まる。
これがもう1つ、私の意思に反するものは私に近づけないというものだ。
一見強そうに見えるがデメリットもある。
まずはこの拳とか攻撃を近づけないバリアみたいなものは空間を歪ませてるため空間把握能力が干渉して私の脳に負荷をかける。
多分これはワームホールの方もそうだ。
そして、単純に空間情報を把握する能力で得られる情報が多すぎてパンクするという所だ。
私の揺れる髪の毛一つ一つすら認識できるんだ。
頭が痛すぎる。
だが、この程度扱えなきゃ私は2人を救えない。
「こい、精神攻撃野郎。教祖名乗ってるなら罪人である私達を処してみろ」
「私達だから私も入ってるや。その通りだから何も反論できないけど」
教祖は相変わらず雫の方ばっかりを見ている。
雫の結界無効がそこまで怖いか、そうか。
私は剣を突き出し剣の先と教祖の首元の空間を繋げる。
「ンギ!?」
教祖のやつ、首元に結界貼ってるな。
念には念をか。
化け物になってもやることはやってるんだな。
教祖の狙いが雫から私になる。
私は更に私にヘイトを向けるために剣で教祖の体の隅々を突き刺す。
「ンガァァ!」
教祖は私の周りに結界を貼り逃げれないようにする。
そして、私に向かって飛び蹴りをしてくる。
私は結界に近づきワームホールで外に出る。
「私、アウトドア派なんだ」
「さっきまで星奏とは思えないイキリっぷりだね」
「黒歴史がまた増えてしまったな」
教祖はただまっすぐに走ってくる。
完全に私狙いになってるな。
結界で守ってても攻撃されるかもしれないんだ、当然だな。
私は教祖の追っかけから逃げ回る。
体力がないから少しだけサイコキネシスを使いつつ。
「ブラァァァ!」
教祖の体はトゲトゲしくなっていき更に化け物感が強まる。
そして、足が早くなり段々と私に追いついてくる。
攻撃を受け続けるのもいいがそれをしていては私の脳のキャパをすぐに超えてしまう。
何か、時間の稼げるものは……お、あれを使うか。
私は最上階のマンションの部屋目掛けて空を飛ぶ。
教祖はドスドスと壁に足を埋め込ませ走って上がってくる。
上がり方怖いな。
私はマンションの最上階の一室に入り台所に行く。
小麦粉その辺に漂わせて、プラスでガスも出しっぱだ。
教祖が部屋に入ってくると私はワームホールで部屋の外に出て火魔法だけ放ってからワームホールを閉じる。
すると、大きな爆発音と共に教祖が外に落ちていくのが分かる。
「みんな大好き、粉塵爆発とガス爆発だ」
私はすぐさま、マンションの外に出て教祖に近づく。
この爆発のせいで部屋の中で色々飛び散ってその情報が頭に流れてくるから結構きついな。
教祖は結界に守れてたとはいえ少しだけ火傷を負っているようだ。
すぐに回復されてしまったが。
まぁ、これで私にしか目を向けれないだろう。
「虚剣」
私は剣を突く動作をして剣先をワームホールで移動させ教祖の背中に刺す。
次は足、次は……って身体能力強化で防御力を上げられたか。
流石にそれをされては私が教祖に攻撃出来る手段はないな。
「ヴォォォ!」
教祖が叫び声を上げると教祖の体は大きくなり更にトゲトゲしくなる。
まだ、化け物化が止まらないのか。
だが、その間に雫が結界を破った。
「雫、いけ!」
「もち、ろん!」
雫が剣を思いっきり教祖の首に振りかざすがビクともしない。
まだ防御力を上げたままだったのか。
完全な不意打ちでも攻撃が通らなかったら意味が無い。
攻撃が通る状態での不意打ち、これしか勝ち目は無い。
雫はすぐさま下がり教祖と距離をとる。
私は多分この空間掌握を使ってる状態じゃないと教祖に立ち向かえない。
しかし、この状態は長くは使えない。
持久戦に持ち込ませたら不利だ。
竜が機能していない今、司令塔は私だ。
私がなんとかしないと。
防御力を下げさせる方法を考えろ。
「ブワァァァァ!」
教祖は周りを叩きコンクリートの小石を沢山作る。
んっそんなに情報量を増やすな。
小石一つ一つ、小石とも言えないような破片でさえ私の能力では探知するのだぞ。
教祖は作った小石を私達に向けて投げる。
私のサイコキネシスのおかげで小石は投げた瞬間止まって落ちる。
雫は反対側にいて目ではどう投げられたか分からないが頭にはどこにどう投げられてるかがバッチリ分かる。
簡単に止めれるな。
「ウンガァ!」
教祖は私に殴りかかってくるが私の能力で拳が私には届かない。
これさっきもされたな。
学習しないのか?
……あ、そうだ防御力ではなく攻撃力に魔力を使った方がいいと誤認させればいいんだ。
具体的には私が隙をみせまくる。
それなら……
「この拳は私に近づいてもよい」
ここは反射神経で避けるしかないな。
耐えれるパンチは耐えて耐えれなさそうなのは避ける。
それで行こう。
「ブラァァァ!」
私は教祖のメリケンサック並にトゲトゲした拳を避ける。
これ、受けたらやばいやつかもな。
教祖は他より若干弱いパンチを繰り出す。
これならギリ受けれる。
棘は避けつつ、重症にならないような位置に拳を誘導させて。
私は教祖の拳を受け吹き飛ぶ。
騙されやすいようにサイコキネシスで自然に飛距離を稼ぐ。
「ブォォォォ!」
教祖は私の所に飛んでくる。
私に夢中になってるな。
よし、また隙を作ったぞ。
「ブルルルル!」
教祖は私の周りに結界を貼る。
意味ないって学習しないのか?
私はすぐに結界の外に出る、が結界の外にでた途端新たな結界が貼られる。
そして、何重にも結界を貼られ行き止まりしかない複雑な迷路になる。
《星奏、これ何重にも結界が出来てるよ。しかも、よく見たら1個1個が小さいのなんのって。1個の結界を通るのにかなり時間かかりそう》
やられた。
現状、雫以上の攻撃力を出せるやつはいない。
防御力を下げたかもしれない程度の現状じゃ私の剣で教祖に傷をつけるのは博打になってしまう。
この結界の中じゃ教祖は自由に行き来できる。
その点、私じゃ行き来はできるが回数を絞らないと頭がやられる方が先だ。
結界がどこにあるかは分かる。
最短で1番雫の方に近づけて1番時間が稼げる所に誘導させれば勝機はある。
「ブラァァァ!」
教祖、化け物になってもなお結界を使った戦いは上手いな。
いや、化け物になったからこそ出来たのだろうか。
どれだけこんな結界に阻まれても私の目的には止められないぞ。