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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
自分でいたい
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つら……

俺は絶賛筋トレ中の星奏を見ている。


「……なんでリビングで筋トレしてんの? お前大体は部屋でしてるじゃん」

「いやな、最近筋肉が落ちてきてるんだ。食事やトレーニング量に問題がないから不思議でな。とりあえず、原因が分かるまではトレーニング量を増やしてカバーだ」

「脳筋かよ」


星奏が筋トレをしているとボトルをシャカシャカとバーテンダーの様に振る雫がコップにドロドロとした液体を入れる。

そして、そこに大豆を挽いただけのきな粉を入れる。


「こちら、プロテインとなります」


雫はそれだけ言うと台所に戻りまたボトルをシャカシャカ振る。


「筋トレか。そういえば最近前より物が重く感じるようになったんだよな。俺もしようかな」


俺の言葉に筋トレ中だった星奏の動きが止まる。

いや、その体勢で止まるの絶対辛いだろ。


「竜が自分から筋トレをしようとしてるだと?」

「星奏、これ明日槍降るよ。ランニングの時は鉄製のカッパ着ていった方がいいかも」

「鉄製のカッパって何?」


それ普段から着てる方がトレーニングになるだろ。


「まぁ、いいんじゃないか。せっかくだし私が筋トレの仕方というのを教えてやる。有料級だぞ」

「おー、スポーツのスペシャリストの星奏さんのトレーニングを教えて貰えるなんて。でも、初心者用でお願いします」

「そんなの百も承知だ」


星奏は雫が入れたプロテインをゴクゴクと飲む。


「マスター、ササミも」

「分かりました」


雫のバー、トレーナー専門かな?


「とりあえず、今のお前がどこまで出来るか見てやる。とりあえず腹筋から」

「腹筋なら100回ぐらい余裕余裕」


俺は星奏に足を抑えて貰いながら腹筋をする。


「はい、いー……」

「ふんぬー!」


俺は一回も出来ずに背を床につける。

女の子になったからって筋肉量落ちすぎじゃね?

こんな落ちるもん?


「ワンモア」


星奏にもう一回チャンスを貰いチャレンジを再開する。


「はい、いー……」

「ふんぎゃー!おー!どっこいしょー!……」


……パタン。

どうやら俺は腹に筋肉がないらしい。

大事な臓器どうやって守るんだよ。


「あー、筋肉痛やべー」

「こんなんで筋肉痛なる訳ないだろ」


え、でもお腹めちゃくちゃ痛い。


「とりあえず、お前は一回一回の回数を減らしてセット数を多くするか」

「竜、よっわー。私でも10回はできるよ」

「うるせー、男の時は100回行けたんだよ」


俺は立ち上がろうとすると急にお腹が痛くなってくる。

便意とはまた違ったこの感覚。

……この感覚確か前に。


「あ、生理だ」

「「……」」


2人は俺の言葉にポカーンと口を開けて放心状態になる。


「……大丈夫か?」

「なんかやばい吐き気とか頭もめちゃくちゃ痛い。星奏の時はこんなんじゃなかったのに」

「そりゃ、個人差があるからな」

「竜は重めな方だね。部屋でお腹あっためて寝とき」


俺は雫の言う通りに部屋のベッドに寝転がりお腹を温める。

生理ってことは血とか出てんのか今。

後でナプキン付けとかないと。

星奏の体で体験しててよかった。


「竜、大丈夫か?」

「星奏、俺もう男に戻りたい」

「辛いやつはとことん辛いらしいからな。私はそこまでだから寄り添ってはやれんが看病くらいならしてやる」

「星奏……お前って頼りがいのあるやつだったか?」

「酷くないか?」


俺は今までの楽しかった女の子生活を辞めたくなるぐらいの症状を味わいながら天井を見つめる。

そうしてると雫が部屋にシャカシャカとボトルを振りながら入ってくる。

そして、どこからかコップを取りだし湯気がぽわぽわと出た茶色の液体を入れる。


「こちら、ホットココアになります」

「トレーナー以外の利用者いたんだな」

「こちらのお客様からです」


雫はそう言って星奏に手を向ける。

こいつ、これやりたかっただけだな。


「それと竜に朗報」


朗報? なんだろう?

ピルあるとかか?

流石にジ医薬品を診断無しで処方はまずいから違うか。


「竜が前に買ってきてくれたもち米残ってた」

「何赤飯炊こうとしてんだよ」


祝えねぇよ。

祝われたくねぇよ。

俺一応男だぜ?

今はまだ元だけど。


「ほら、雫を見てたら分かるだろ?」


星奏は雫には聞こえないよう耳元で話す。


「え、何が?」

「同じ女性でも雫みたいに生理って何? みたいなやつは一定数いるんだ。そう考えたらまだ痛みが少しは分かる私の方が頼りがいがあるって分かるだろ?」

「激しく同意」


この苦しみが分からないやつ、この苦しみを軽く見てるやつ、厳しいって。


「竜もこの苦しみが分かったらこれからはもっと女の子に優しくするんだよ」


雫がうんうんと頷き、そうするのが当たり前みたいな空気を作る。


「軽いやつが何言ってんだ。そんなんだから結婚経験もなければナンパもされねぇんだ」

「おいごら、竜。その事掘り返してくるな」


星奏は俺の肩を揺らしてくる。


「ちょっとナンパされただけのやつが上に立ってるつもりなのかな?」


雫はポキポキと拳を鳴らす。

やばい、2人とも喧嘩の姿勢に入ってしまった。


「今、生理でイライラしてたんだ。許して」

「深くツッコメないのが歯がゆいな」

「今、竜も女の子だから優しくしないとダメなんだった」


最強の一言だぜ。

……男としては最弱だけど。


「そんなことより、そろそろ本気で男に戻る方法考えないとな」

「今の生活に何か不満なの?」

「いや、ただのないものねだり。ないから欲しくなるんだ」

「意味深だな」


家出期間が長すぎる。

捜索願いそろそろ出しに行くか。


「とりあえずは俺の生理終わってからだな」

「もうそろそろお金もなくなってきたしね」

「枢機卿探しつつ同時並行で金稼ぎだな」


自分達から喧嘩売りに行くなんてどうにかしてる。

雫いるから希望の光は見えるけどな。


「あ、やべ。めまいしてきた」


目の前真っ暗で光なんて見えねぇ。


「今日はレバニラ炒めだね」

「買い物行ってくる。雫、竜の世話頼んだ」

「はいよ。風邪の時よりはマシだから任せんしゃい」


星奏はそう言って買い物に出かけていく。

雫は暇そうに俺の机に置いてあったマンガを読む。


「ナースが病人そっちのけの職務怠慢すか」

「ナースじゃないからね。それに世話って言っても完全介護じゃなくて今度からは1人でも大丈夫な様にしていかないとダメだからね」


枢機卿見つからなくて元に戻れなかった時のために生理でも1人でなんとかできるようになっておかないと迷惑かかるしな。

はぁ、つら……

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