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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
自分でいたい
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秋祭り

お昼ご飯がキノコだったので俺がゆっくり食べていると食べ終わった2人が浴衣を取りだしてキャッキャしてる。

浴衣かぁ。

今は女の子なんだし着てみたいな。

それで祭りの屋台のおっちゃんに色々サービスしてもらいたい。

まぁ、ゾンビとかがまだまだ溢れてる現状で祭りなんて催されないだろ。

俺はやっと食べ終わって席を立つ。

するとリビングのテーブルの上に1枚のチラシがあるのを見つけた。

秋祭り開催、花火も打ち上げるよ、と書かれている。

マジか……


「あ、竜の浴衣もいるね」

「小さい頃使ったやつを物置に入れたはずだ。それを使おう」


めちゃくちゃ話進んでるな。


「話に入れてない竜ちゃんに説明よろしく」

「竜君、秋祭りあるから行こ」


ちゃん付けしたのに君付けされた。

って、そんなことはどうでもよくて。


「なんで祭り開催されてんの?」

「お父さんが開催するって言ったかららしい」


お前の父さん発案か。

なら、何か陰謀があるとかはなさそうだな。


「ゾンビ出てきて緊急事態って感じの時期なのに緊張感ねぇな」

「1年も経てばこんなもんでしょ」


時間の力って優秀だなと思っていると星奏が物置から浴衣を取りだしてくる。


「小さい頃の浴衣持ってきててよかったな」

「まず着るとは一言も言ってねぇんだけどな」


着るけどさ。

俺は星奏から貰った浴衣を羽織る。

着付けどうやってするんだ?


「星奏、私でも知ってる着付けのやり方が分からない情弱野郎に着付けを教えてあげて」

「ラジャー」


雫は自分の得意分野だから知ってるだけだろ。

ていうか、着付けなんて知らなくて当然だろ。


「羽織ったならまず着丈を決めるんだ。まず左手で――」

「星奏、もうお前が着付けしてくれ」

「雫に負けて恥ずかしくないのか」


全然恥ずかしくないね。

他で圧勝してるから。


「自ら負けを認めるとは。こいつはダメだね」

「お前、絶対テストの時に自分の得意分野だけで勝負しかけてくるやつだろ」

「私はそれでも星奏に負けた」


雫は満面の笑みで堂々と負け宣言をする。

星奏に負けて恥ずかしくないのか。


「勝てたのは調理実習と音楽の歌のテストだけだったよ」

「調理実習は勝たなきゃおかしいからな。歌のテストはシンプルにおめでとう」


星奏は料理ができないなんて言う次元じゃない。

台所に立たせてはいけない人間だ。


「めちゃくちゃ適当に着付けしてやろうか」


俺の着付けをしながら星奏を口を開く。


「料理に関してはお前はガチで口出ししちゃダメだからな」


黒焦げ料理はまだアニメキャラもよくやってるから分かる。

でも、フライパン溶かすって本当になんでだよ。

下手とかじゃなくて台所に入るなって神様に言われてるとしか言いようがないだろ。


「ほい、完成したぞ」

「おぉ、あざす」


俺は早速自分の姿を見る。

能力があるって便利だな。


「いいじゃん。髪型も変えよかな」

「その場合ですと料金の方が少々根を張りますがよろしいでしょうか」

「出世払いで」

「この世から出ていくことでのお支払いですね」


何その怖い出世払い。

俺は雫に髪型を変えてもらう。

後ろ髪を三つ編みで編みおろしてリボンを付けた髪型になる。


「これが髪講師雫さんの力ですかいな」

「神講師ですのでくじ引き10回分の料金です」


地味に高い。


「これと着付け代金でくじ引き11回とベビーカステラ1袋分ですね」

「なんで屋台払いになってんの?」


まぁちょっとぐらいならいいけど。



時刻は夕日が沈み三日月が夜空を弱く照らしてる時間帯。

町は提灯の明かりで溢れかえりいつもよりも町が光っている。

いつもは街頭にランタンぶら下げてた位だもんな。

浴衣姿になった2人が色々と屋台を見て回ってる。


「私の読みではあの屋台には当たりが入ってるね。屋台の人がくじ引く所から当たり出てたし」


それヤラセ。

嘘を嘘であると見抜けるやつじゃないと屋台くじ引きは難しい。


「あそこの、この岩持ち上げた人に賞金5万円ってのにやつに参加するか、しないか。悩みどころだ」

「お前だと能力で1発だから屋台の人可哀想だしやめてやれ」


全く、こいつらはしゃぎすぎだろ。

俺は高校生にもなって小学生みたいなはしゃぎ方をする2人を恥ずかしく思い顔を隠すためさっき買ったお面を顔につける。

あ、綿あめ食えねぇ。


「あ、射的あるよ。2人とも、勝負しようよ」

「お、いいねぇ。負けたやつ明日の朝ごはん金魚な」

「……金魚?」


星奏が疑問を浮かべてきた。

が、俺は気にせず屋台の人にお金を払い拳銃を構える。

いいか? 結局銃ってのはここで打てば当たるってのが分かりゃいいんだよ。

俺は自分の持つ銃の銃口からレーザーポインターをだし的を捉える。

俺はレーザーポインター通りに的を撃ち6発中2回風船が割れた。

……あれれぇ? おっかしいぞぉ?

俺、ちゃんとレーザーポインターで狙ってたよな?

風も強くないから弾道が変わるわけないし。

俺の次に雫がチャレンジし6発中4回風船を割った。

さらにその次に星奏がチャレンジし6発中5回風船を割った。


「竜、当てる場所も考えなきゃダメだよ」

「これで、お前の明日の朝ごはん金魚だな」


罰ゲームなんて作らなきゃ良かった。



俺は1人寂しく明日の朝ごはんを調達してる。

金魚をポイですくおうとするがなかなかすくえない。

これじゃ明日の朝に確実に餓死する。

せめてもう2、3匹欲しい。

俺は屋台の人にまたポイを貰う。


「そろそろ花火だけどまだやるのかい?」

「え? あ、やべ」


あの2人と花火の時に集まるって約束してたんだった。


「ありがとう、おじさん」


俺はすぐに集合場所へと走り出す。


「気をつけなよ、嬢ちゃん」


金魚は結局数匹しかすくえなかったが、まぁこっそりカップラーメンを食べればなんとかなるか。

人混みを避けつつ集合場所へ向かっていると花火が打ち上がる。

ドカーンと打ち上がった花火は綺麗だという事実を数秒間だけ残して消えてゆく。

懐かしいなぁ。

ってそんなことより、あいつらどこだ?

集合場所にいねぇんだけど。

俺が2人をキョロキョロと探していると急に体が浮かび上がる。


「竜、遅いぞ」

「何やってたんだよ」

「朝ごはん調達してた。ていうか、お前らこんな高いとこで見る必要あるか?」


ここはそこら辺のビルより少し低い程度の高さで花火を見るにしては十分すぎる高さだった。


「花火を横から見て見たくてな」

「ならもっと上がれよ」


こんな高さじゃ横からは見れねぇぞ。

俺は打ち上がっていく花火を見つつ花火を見る人達を見下ろす。

すると、祭りで楽しそうにはしゃぐ人達の声が聞こえてくる。

康宗と祭りに行った時のことを思い出すな。

屋台くじの闇を暴くために屋台からくじが入った袋盗もうとしたけど康宗が盗みは良くないからと今まで貯めたお年玉を全部使って1文無しになったんだったか。

今となってはあの時の出来事が花火のように綺麗で一瞬に感じる。

こんなにも長くて楽しい今が短くて楽しかった過去となって記憶の中だけの存在になっていくのは少し悲しいな。


「あれめちゃくちゃ綺麗だね」

「あれは5号玉の万華鏡だろうな」

「なんで、花火の名前まで知ってんの?」


こいつ、普段どんな本読んでんだ?

一緒に住んでるけどこいつがリビングで本読むのは大体ラノベばっかなはずなんだけどな。

花火師の俺、世界一の花火を作る、みたいなタイトルの本でもあんのか?


「汚ぇ花火だ」

「花火師に花火玉と一緒に点火装置にぶち込まれとけ」

「本当に汚い花火になっちゃうよ」

「血とかがブッシャーって感じだな」


言ってみたいセリフ言っただけでこの言われよう。

そんなこんなしてるうちにあっという間に花火が全て打ち終わる。


「もう終わっちゃったね」

「だな」


この楽しい今も康宗みたいに一瞬の過去になってしまうんだろうな。


「さてと、金魚料理の本ってある?」

「あるぞ」

「なんであんだよ」

「当たり前だろ。そんなの」

「当たり前じゃない、当たり前じゃない」


でも、まぁいっか。


「雫、当たり前だよな?」

「常識だよ。赤ちゃんでも持ってるって言うし」

「お前、ある?って聞いてたよな。てことはお前は持ってないから俺と同じ赤ちゃん以下になるぞ」

「星奏、ごめん。竜と同じは嫌だから」

「それはしょうがないな」

「なんで俺が悪いみたいになってんだよ」


この楽しいが続けば、それで。

〈クリスマス特別エピソード:サンタを知らぬ子供たち後編〉


私は一通りの準備を進め、最後の工程を始める。

今回の計画はこうだ。

まず、私が用事があるから今日は帰ってこないと伝え家の外に出る。

もう外に私の準備物一式は置いてあるからそれを取ってソリを浮かせてベランダからサンタとしてやってくる。

トナカイを捕まえられなかったのが残念だがそこは最新の技術と言って誤魔化そう。

よし、行くぞ。

私は部屋から出て2人に顔を向ける。


「私ちょっと用事あるから今日帰ってこない」


ちょっと目線が下に向きかけていたが何とか言えた。


「どんな用事?」


雫が怪しそうに私に尋ねてくる。

ここは嘘ってバレてはいけないんだ。

これは優しい嘘だから。

ついてもいい嘘だから。


「お父さんに呼ばれてた。なに、大したことじゃないだろ」

「また、結婚するのか。御祝儀どれくらいいる?」

「お前は帰ったら覚えとけ」


私の黒歴史を掘り返してきやがって。

お前にだけブラックサンタになってやると言いたいがそこはグッと我慢し想像で顔面を殴るだけに済ます。


「まぁ、気をつけて行ってこいよ」

「なるべく早くに帰ってきてね」

「も、もちろんだ。それじゃ、また明日」


私は家を出て早速準備を進める。

サンタの服に着替えて、ボイチェンスピーカーをバレない位置に付けて。

ニット帽は深く被るか。

目元に影ができるぐらい深く。

プレゼントは袋に詰めてあるし完璧だ。

後はこんな家から近いとこから来てもかっこよくないし少し離れたところから行くか。

私はソリに乗ってソリを浮かせる。

そして町の外まで飛んでいく。



夜になったな。

月明かりがちょうどいい。

私はソリを家の方まで動かしていく。

サンタを知らぬ子供たちにサンタを教えに行くんだ。

家のベランダに着き窓をコンコンとノックする。

すると、2人が驚いた表情を浮かべている。

ここまでしてやる義理はなかったがせっかくだし2人を童心に返したかったからな。

どうだ、この完璧なサンタのコスプレは。

私がやってるとは思わないだろ。


「雫、今って110使えるっけ?」

「使えないよ。え、どうする? もう戦うしかないけど」


マジかぁ。

この2人私を不審者だと思ってるな。

いやまぁ実際そうとしか言えないんだけどさ。

私は能力で窓の鍵を開け部屋に入る。


「メリー――」

「あ、土足」


さっきまで慌ててたのに急に冷静になるな。


「3ミリ浮いてるから大丈夫」

「ドラ○もんかよ」


私はこのままではまずいと思いすぐさま袋からプレゼント箱を取り出す。


「この1年、いい子に……元気に過ごしていた君達にプレゼントだ」

「おい、雫。今こいつ、いい子って言おうとしたのにわざわざ元気って言い直したぞ」

「それはちょっとねぇ、私達は許してくれませんよ」


こいつらにサンタが来なかった理由が納得だ。

親いるいないに関わらず。

まぁ、いいか。

私は2人にプレゼント箱を渡しそそくさとこの場から去る。


「雫、あの袋の中って他に何入ってんのかな?」

「きっと沢山のプレゼント箱だよ」


2人して悪そうな顔をする。

泣きに入ってるのは私の着替えだ。

これでこいつらもサンタが来たことないなんて悲しいことは言わなくて済むな。



朝になって私は家に帰る。


「ただいまー」

「おかえりー」

「おかえり。朝帰りとは相手とかなり進展したんですね」


私は竜を浮かせグルグルと回転させる。


「すいませんした。許してください」


私はその言葉を聞き上から目線で話し始める。


「許して欲しいなら態度で示せ」


竜の回転を止めて床に下ろすと竜は服を脱いで土下座する。


「お前の裸なんか見たくないわ」

「よし、許された」


竜はすぐに服を着てさっき居た所に戻る。


「そういえば星奏。昨日やばいことがあって」


お、あの話か? あの話だろうな。


「サンタみたいな格好した人が私達のベランダにやってきてさ。プレゼント渡してきたんだよね」


やっぱりその話だよな。

私は恥ずかしさと嬉しさを上手く隠しつつ会話を続ける。


「プレゼントってどんなプレゼントだったんだ?」

「なんかね、雪の結晶の形してて真ん中に赤色の宝石かなんかが埋め込まれてあるアクセサリーをもらった」


あげた。


「俺は紫色だったな」


私は意外な顔をして口を開く。


「そうか、奇遇だな。昨日お父さんから私もそんな感じのアクセサリーを貰ったんだ。私は青色だったな」


2人は驚きつつもそのまま会話を続ける。


「珍しいこともあるもんだな」

「そうだね」


2人はそのアクセサリーを大事そうに眺める。

ペアアクセサリーってやつだから恥ずかしいが、まぁいいだろ。

メリークリスマス、私達。


「あ、そうだケーキ作ったんだ。星奏も食べてよ」

「食べたい食べたい」

「俺が材料買ってきたんだぜ」

「なんの自慢だ?」

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