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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
自分でいたい
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解明されゆく正体

あとがきにクリスマス特別エピソードあるよ

華蓮さんが急に俺を呼び出し椅子に座るように言われる。

目の前にはホワイトボードが置かれてありさながら俺は学生気分だ。

レポート課題は誰かのを写そう。

他の奴らの方が優秀だし。

大学生の時を思い出しながら待っていると華蓮さんがやって来る。


「どうしたんですか、俺を呼び出して」

「いやね、ちょっとした頼み事をしたくて」


華蓮さんが頼み事? 何かあったのだろうか?

華蓮さんが最近また目の下のクマを酷くしているのと何か関係があるのか?


「ゾンビウイルス研究がいい感じになってきたからアウトプットしたくて。ちょっと生徒役お願い出来る?」

「そもそもゾンビウイルスってなんですか?」

「あー、そこからだよね。ごめんごめん」


華蓮さんはホワイトボードにペンで紫色の丸で少しウイルスっぽいトゲトゲが付いていて真ん中にゾンビと書かれた絵を描く。


「この分かりやすい見た目のウイルスがあるんだけどこれがゾンビウイルスね。前にテレビでバラされちゃったんだけど知らないかな?」

「多分見てないです」

「あ、そうだったねごめん」


テレビ見る暇があるなら本読んでた。

仕事クビなった後もそうしてた。

文学系の大学生だったからな。


「こいつの研究をして少し分かってきたことあるから見落としがないように授業形式で龍之介君に教えて頭の中でまとめるってこと」

「なるほど、分かりました。それより研究内容秘密って言ってたのにいいんですか?」

「背に腹はかえられぬってやつだよ。ほんと、今いいとこまで来てるんだけどあとちょっとが分からなくて」


華蓮さんってちゃんと仕事してたんだな。

華蓮さんは資料を見ながら話し始める。


「まず、このゾンビウイルスってのは正式名称じゃなくて、本当の名前は変化原子ウイルス。日本列島で見つかった日本にだけ生息してたウイルスだよ」


変化原子ウイルス? 原子って確かあの物質の最小単位だよな?

でも確か、ウイルスの方が大きさ的には大きいはず。


「原子と名付けているけどこのウイルスは他のウイルスよりでかいから要注意。ここテスト出るから。じゃあ、原子要素どこだよって言うと教科書30ページ開いて」

「持ってないです」

「じゃあ隣の人に見せてもらって」

「俺しかいないです」


華蓮さんはそのまま授業を続ける。


「このウイルスは色んな生き物の中に住み着いてて大体は体に何の害もなければ利益もない。強いて言うならその動物の幸福度がほんの僅かだけ下がる程度なんだけど人間だけは違って」


華蓮さんはホワイトボードにスラスラ文字を書きバンと叩く。


「魔法が使えるようになるという恩恵があるんです」

「魔法が使えるのはゾンビウイルスのおかげということですか?」

「そそ、そゆこと」


ゾンビウイルスって悪いウィルスじゃないということ?

いや、でもゾンビってついてるんだしあのゾンビ達とも何かしらの関係があるはず。


「この魔法というのは皆分かりやすいからそう言ってあるだけであって、実際はゾンビウイルスもとい変化原子ウイルスが人間の頭で考えたイメージを受け取ってそのイメージによって形を変えてそれが体外へ放出されるという訳です」


俺達が使ってる魔法ってそういう原理だったんだ。


「で、重要な原子要素はどこだよにつきましては、魔法を使う時ウイルスが本来持っている原子ごと変わるという点なんですよね」


かなり特殊なウイルスということか。


「そもそもの話、原子が変わるのって核分裂とか核融合、放射性崩壊とかしないといけないはずなのにその過程なしにパッと原子が変わるというのがかなり特殊と言わざるを得ないのです」


……理系用語出てきた。

核分裂、核融合はギリギリ分かるが放射性崩壊ってなんだよ。


「なんで原子が変わるのかにつきましては今後の研究にご期待くださいですね。ちなみに人間のイメージは脳波で受け取ってて。その証拠にイメージした時の脳波を完全に再現した電波をゾンビウイルスに流したらイメージした時と同じなんだよね。それを利用したのがこちらの魔法銃と触手から魔法出す時の機構です」


華蓮さんは触手はパッと広げ銃を俺に見せびらかす。


「今ならなんと龍之介にだけ特別イチキュッパ。安いよ安いよー」

「俺は義手で十分ですよ」


触手を扱いきれる自信ないからな。


「ここまではゾンビウイルスの特異性を紹介させていただきました。これからはゾンビウイルスの生態を紹介させていただきます」


俺はとりあえず拍手をする。

この拍手を聞いて華蓮さんはペンを回しドヤっとする。

ペン回しは途中で失敗したが触手でペンを動かすことで誤魔化した。


「ダサ――」

「はい、龍之介君の出席点ゼロー、単位なーし」

「こんな教授はすぐに解雇されてください」


華蓮さんは咳払いをし気を取り直す。


「えぇっと、ゾンビウイルスは昔はかなり限られた所で絶滅しかけてたウイルスなのです。なぜかと言うと虫には感染しないし感染経路は空気感染だけだからね。しかも生息地周辺は風全然吹かないし動物もいないから移動手段ほぼなし」


かなり弱いウイルスだったんだ。

今となっては世界レベルで流行ってますが。


「なぜ今のように流行ってるのかについては授業終わりに気になった人だけ来てください」


なにそれ気になる。

授業終わり聞きに行くか。


「ゾンビウイルスは動物の体の中で基本的には害がない存在として活動しており、宿り主が死ぬ時も悪さをあまりしないんですよね」


あまりってことは少しはするんだ。


「で、少しだけある害と言えば先ほど言った通り幸福度が少し下がるだけなんだよね」


それはどういうことなんだ?


「そこで華蓮ちゃん研究班は研究を進めていった」

「あなただけですよね?」

「すると、驚くべき性質があったのだ」


だいぶ昔に見たドキュメンタリー番組みたいだ。


「ここで一旦CM」

「入れないでください」

「その驚くべき性質とは!?」


この人脳内でCM挟んだな。


「幸せホルモンを食ってるんだよね。こいつら」


幸せホルモンを食べる?

幸せホルモンってよく聞くあれだよな?


「でも、ほんのちょっぴりだけだよ。こいつらは生物が持つ幸せホルモンを糧に生きてるの。だから少しだけ幸福度が下がるんだよね」


なるほど?


「で、問題なのは宿主が死ぬ時。死ぬ時ってのは幸せホルモンが1番出る時だからね。ゾンビウイルスは活性化して個体を増やすために食べまくるの。まぁ、普通に死ぬ時はその程度だから死ぬのが本当に苦しくなるだけなんだよね」


苦しくなったらダメなやつが苦しくなってる。


「ゾンビに殺された時が一番の問題。ゾンビが触ったものって少しだけゾンビウイルスが付くの。体の表面にいるヤツらは基本死にかけてるやつらだから数秒程度で死ぬんだけどこの数秒が厄介でね。ゾンビに殺される時ってどんな方法であれ大体が体にゾンビウイルスが付着するの。そのちょっとのゾンビウイルスと体の中にいるゾンビウイルス、そして死ぬ時の大量の幸せホルモン。これが合わさって――」

「ゾンビになる」

「ザッツライト」


ここは文の流れで何となく分かるぞ。


「どうやら人間の中のゾンビウィルスとゾンビの持つゾンビウイルスは少しだけ性質が違うみたいでね。その少しの性質の違いが合わさっただけでゾンビになるなんていう化学反応を生み出すんだから本当、訳わかんない」


あなたがそれ言ったら誰も分からなくなりますよ。


「ゾンビにする理由は仮説だけど無理やり生きさせて幸せホルモンを作るための器にしてるのかな。人間に対して敵意むき出しなのは人間同士だとを殺す方が楽だと思ったのか知らないけど人という敵を殺して気持ちよくさせて更に多くの幸せホルモンを出させるためかな」


仮説だから全部が全部本当という訳では無いがえげつないな。


「そういえば、動物ゾンビっていましたよね? 動物はゾンビにならないはずでは?」

「あれはね、多分人工的に作られたものだね」


人工的に?

ということは……


「誰かが動物ゾンビを作った人がいるということですか?」

「そだね。多分そいつがこの一連のゾンビ騒動を起こした張本人だと私は見たね」


大阪に結界が貼られてるなんて聞いた時から恐らくとは思っていたが今確信に変わった。

強くならないと。

〈クリスマス特別エピソード:サンタを知らぬ子供たち前編〉

※この世界は本編の世界とかなり似通ってるだけです


「そういえば、もうそろそろクリスマスだな」


私はおもむろに口を開く。

クリスマスなんてもう私達には関係がないものだがな。


「そいえばそだね」

「だから、なんかイルミネーションが飾り付けられてたのか。あんなの電力の無駄だろ。お前のお父さん、よく許可したな」


竜が捻くれた事を言う。

こいつは絶対に彼女できないな。


「クリスマスか、クリスマスケーキでも作る?」

「お、いいな。1番上に星型のチョコ付けようぜ」


2人はスーパーのチラシを見て何を買うか話し合っている。

お菓子作りの話にはそこまでついていけないな。

ここは話題を変えるとするか。


「クリスマスといえばお前ら、サンタさんに何のプレゼントを頼んだんだ?」


私の言葉に2人は首をかしげる。


「サンタなんて来たことないぞ」

「私も」


え……


「あれって確か正体親だよな? 俺のお母さんは小さい頃死んだし。クソ親父はそんなこと絶対しないし」

「私はそもそも家にいなかったし」


あぁ、こいつらの家庭クソ重だった。

忘れてたな。

2人は楽しそうに会話を続ける。


「クラスの皆がサンタさんの話してる時、私は悪い子だから来なかったよ。ワイルドだろぉって遊んでたよ」

「俺は逆に来ない方がかっこいいって思ってたな。やっぱり流れの逆を行くスタイルがかっこよさを引き上げるって感じで」


こんな話をした私が悪いんだがこの空間から出たい。

いけない話をしてしまったな。


「じゃ、じゃあ、来るとしたら何を願う?」

「サンタさんは物しかくれないらしいから7つ揃えたら願いが叶う玉の7つセットかな」

「私は名声」


こいつら、捻くれてやがる。


「でも、ガチで願うとするなら……マッサージチェアとかか?」

「ジジイか」

「私はルンバだね。掃除楽にしたい」

「主婦だな」


こいつらの願うプレゼントに可愛げがないな。

サンタさんが小さい頃にしか来ない理由も納得だな。

プレゼントは私が適当に見繕うとして、こんな話をしてしまった責任を取るか。

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