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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
自分でいたい
153/265

女の子としての日常2

俺は雫に髪を結って貰っている。

今日はスカーフといってスカーフを混ぜ込んで三つ編みでポニテを作るって感じらしい。


「今日の俺、可愛いな」

「ソダネー」


雫は感情を殺しきった棒読みで返事をする。

俺が可愛くないと言いたいのか。


「これならアイドルなれるかも」

「炎上して終わるよ」

「お前みたいに?」

「そうそう」


お前が炎上した理由は急に俺に抱きついたからだぞ。


「モデルとかならワンチャン?」

「竜はいい意味で個性のない顔だからね。どんな服でもマネキンよりちょっと上の価値はあるよ」

「それ貶してるだろ。マネキンよりちょっと上じゃモデルなんて無理だろうし」

「まぁ竜は個人で楽しむ程度にしときな。どうせ元に戻るんだし」

「いつかはな。でもせっかくの女の子なんだしさ。しかも、年齢的にはJKだぜ?」

「DKにすらなれてないニート猿はバナナでも食って帰んな」

「うるせぇ」


俺は自分の髪型を鏡で確認し普段着に着替える。

今日は俺がおつかい当番なのだ。


「女の子の体で初めてを成し遂げます」

「その言い方じゃ語弊しかないよ」


俺は靴を履き玄関の鏡で前髪を整える。


「あ、そうだ竜追加で新聞買ってきて」

「さっき、テーブルの上にあっただろ?」

「いやぁ、窓掃除しようとしててさ。新聞紙が窓掃除するのに楽なんだよね」

「数が足らないのか。分かった。ギルドのとこだよな?」

「最近あんまり行ってないからってそんな大事なとこ忘れなんなよ」

「いってきまーす」


俺は浮き足立ちながら外に出る。

ナンパとかされんのかな? どう断ろうかなぁ。

クールにタイプじゃないとか、あざとい感じでお兄さんかっこいいけどいま忙しいから無理ぃとか。

無限の可能性を感じるな。

ドアが閉まるまで雫の視線を感じたような気がした。


「……いつもは昼過ぎなのに今日に限って朝からとか浮き足立ちすぎでしょ」



俺は東京の朝を感じながらいつものスーパーへと向かう。

食品だけはリサイクルショップよりもスーパーの方が便利だからな。

俺は買い物メモを見ながら歩く。

今日は……ってきのこ入ってんじゃん。

これ買いたくないけど買わなかったら星奏らへんが子供みたいだなとか言ってきそう。

プライドを捨てた方がいいのかもしれない。

俺が歩いていると向こうから男の人がやって来る。


「ねぇ、そこのお姉ちゃん暇? 暇ならさー俺とお茶しようよ」


俺は周りをキョロキョロと見回す。

朝だからかギルド付近は賑わっているが俺の周りには誰もいない。

俺は念の為男の方を見ながら自分を指さす。


「そうだよ、君だよ」


ナンパされちったなぁ。

雫達にどう自慢するか。


「どう? 俺今日暇だからいくらでも話聞くし。ちなみにここだけの話、俺昨日Bランクの冒険者になったんだよね」

「凄いですね」


ボロでないように丁寧語で話すか。

いつも昼からお使いに行ってるしこっちも時間ならある。

楽しんでやるか。


「Bランクになられてるんなんて相当お強いのですね。もしかて、能力者ですか?」

「やっぱ分かっちゃうか。俺、衝撃波を放つ程度の能力です。そんな君は俺を魅了しちゃう能力者ちゃん?」

「そんな大層な能力持ってませんよ」


なんかキモいなぁ。

これナンパじゃなくてホストの勧誘じゃねぇよな?


「立ち話もなんだしギルドの食堂行かない? パフェ奢るよ」

「是非とも」


パフェか。

女の子っぽくてありだ。



俺は男の人と一緒にギルドの食堂に入る。

席に座り持ってきていた買い物バックを下に置く。

朝でも賑わってるなぁ。

最近は夜食べに行く時にしか使ってなかったから気づかなかったけど周りのやつらの顔が前と比べて不思議と明るく見える。

前は朝だったら暗い顔で俺なんて今日死ぬんだって言って小声で呟いてるやつだったり、それに呼応して死んだらごめんと哀しそうに呟くやつもいれば、ゾンビに恨みしか持ってないような目をしてるやつだったり、と暗いやつらがたくさんいた。

けれども、今となっては明るい顔で俺達今日も頑張るぞと大声出してるやつだったり、それに呼応して今日は足引っ張るなよと楽しそうに呟くやつもいれば、ゾンビに恨みしか持ってないような目をしてるやつだったりと全体的に明るいやつらが多くなっている。

皆、この環境に慣れてきたんだな。


「頼むもの決めた?」


おっと、今はナンパされてたんだった。

目の前の男に集中しとこ。


「あ、はい。このミラクルいちごチョコアラモードパフェってやつにしようかと思います」

「おっけー、すいませーん」


男の人が店員を呼び注文をする。

俺は足を内股にしたり格好を女の子っぽくしながら男の人を見る。

顔はまぁまぁかな。

年齢は21ぐらい。

身長は178ぐらいでガッチリとした体つき。

右腕の筋肉が左腕より若干付いてるから右利きか。

そして店員に大柄な態度を取らない。

俺が女の子なら落ちてるな。

雫辺りが好きそうな見た目だ。

雫に自慢しまくるか。


「冒険者をやってらっしゃるってことはゾンビを沢山倒してるんですよね? お話聞きたいです」

「しょうがないな」


正直、俺よりすごい話なんてないだろうけど俺は周りの冒険者がどんな生活をしてるのか知らないしいい機会だな。

男は照れくさそうに答える。


「俺は皆よりも前に出て戦うんだ。衝撃波をばぁーって出して怯ませながら一体一体確実に倒すんだ」

「最高ですね」

「それで、俺がゾンビ共の注目を浴びてるすきに後ろにいる仲間が火と風を合わせた2属性魔法を使うんだ。あ、2属性魔法ってのは2つの属性がかけ合わさった魔法ね」

「知らなかったです」

「俺の衝撃波を出す能力のおかげで俺のスピードやパワーって身体能力強化能力者と同じくらいなんだよね」

「すごーい」

「ま、力加減ミスったら普通に体吹っ飛ぶんだけどね」

「センスありますね」

「ていうか、この前ね、中級ゾンビに会ったんだ。そのせいで仲間大ピンチ。皆大慌てだったけど俺の的確な指示のおかげで中級ゾンビ倒せちゃったんだよね」

「尊敬します」


男を落とすさしすせそを覚えておいて正解だった。

こいつもなんか気分良くなってるしこのままどんな反応するか見てみるか。


「あ、それより名前聞いてなかったね。俺は難覇耶楼(なんぱやる)。君は?」

「あ、俺じゃなくて私ですか?」


名前、名前か。

いい名前ないか?

竜子とかは流石にテンプレすぎるしな。

お母さんな名前……こんな遊びに天国のあ母さん巻き込みたくねぇ。

いい名前、いい名前。


南根星奏(みなみねせいか)と言います」

「へぇ、君ギルド内で上位の冒険者と同じ名前してるんだ」


え、星奏上位に入ってんの? 何それ知らない。


「へ、へぇ。私と同じ星奏って名前の人いるんですね。一体どのような方なんですか?」

「俺1回見たことあんだけどさ。身長俺より高かったわ。筋肉もパッと見じゃ分かんねーけどあれ相当あるな。その上仲間と協力して上級ゾンビ複数体討伐してて中級ゾンビも結構な数倒してるらしい。確か、仲間の名前が……」


そりゃそっかー。

中級ゾンビでも結構な強さしてんのに上級倒してるもんな俺ら、自慢できるような事じゃねぇけどな。

全部死にかけてたし。


「南根雫と高野竜だったな。あと有輝さんが仲良かったはずだけど最近ギルドに出てないらしいしな」


有輝、能力使えなくなって体を上手く動かせなくなったもんな。


「ていうか、君、南根雫と苗字一緒じゃん。奇跡だね」

「そ、そうですねー」


やっべぇ、すっごい気まずい。

顔出ししてない有名人が知人と話していたら急に自分のことを話されてる感覚って感じがする。

有名になれたことは嬉しいけどなんか気まずい。


「そういえば、君って何してるの?」


本当にどうしよう。

考えろ。

脳を回転させるんだ。

同じ冒険者です、だったら俺達を知らなかったのがおかしくなる。

でも、農家だとこの時間働いてないのはおかしいし。


「かっこよくて強いお父さんが騎士やってて稼いでるから実家でニートしてる。外に出てたのはお母さんにおつかい頼まれたから」

「そうか、俺も騎士になろっかな」


そっかー、Bランクになったら誰でも騎士になれるもんな。


「家族って全員生き残ってたの?」

「え? あ、まぁそうだね」

「俺は喧嘩ばかりしてた親父が体張って守ってくれてさ。お袋も逃げてる時に急に出てきたゾンビから俺を守るために死んじゃってさ。いいな、両親生きてるの」


俺の良心はもう死んだ。

なんだよ、その重い話は。

絶対ナンパ相手にするような話じゃないだろ。

俺は笑顔を崩さずにパフェを1口食べるが空気が重いせいか味がしない。

ただ口に入れたストロベリーアイスが口の中を冷たくするだけだった。

俺のお母さんは俺が小さい時に死んでるし親父は……まぁお前と一緒だ。


「そんなことよりさぁ」


そんなことで済ませれるお前のメンタルイカれてんだろ。

今まであった枢機卿達よりイカれてるぞ。


「俺、騎士になったら金とか普通に安定するしどう? 俺と付き合わない?」


いきなりぶっこんだなぁ。

ここは一旦トイレで作戦会議と行こうか。

もちろん女子トイレだ。


「ちょ、ちょっとトイレ」


俺は下に置いていた買い物バックを椅子に置きちゃんと戻ってくることを教え席を立つ。

そして歩き始めると何も無いとこでつまずき少しよろけると耶楼にぶつかる。


「あ、すいません」


耶楼の顔は赤くなっていき小声で大丈夫と呟く。

ナンパした癖にウブなのかよ。

俺はトイレの個室に入り便座に座る。

告白されたかぁ。

まぁ、普通に断るんだけれど。

どう、断んのがいいかなぁ。

同じ男として勇気出してやった告白を賞賛してやりたい。

だけど、同じ男だからこそ無理なんだ。

俺にそのような趣味はないからな。

普通に「ごめん無理」か?

だとしたら傷付くな。

「まだ会ったばかりだし」だとまた今度会いましょうとかになる。

うん、いつ男に戻るか分からんのだし嫌だな。

ここはネガティブさを出して俺が悪いから無理と伝えて終わろう。

パフェ食べ終えてないのは残念だがまぁ関節キスチャンスぐらいはくれてやってもいいか。

俺はトイレを出て元の席に座る。


「あの、告白は嬉しいんだけどその、何も出来ないからニートしてるスネかじりな私なんかよりもっと素敵な人いるよ。それに、あなたのスペックが高すぎて私と釣り合わないって言うか。ごめんなさい」


俺はそのままバックを手に取りパフェを耶楼の前に持って行き走り出す。


「ちょっと待って!」


俺は新聞紙を頼まれていたことを思い出し新聞が売ってるとこで立ち止まる。


「そんな君でも――」

「すいません、新聞ください。お金はこれで。それでは」


新聞を素早く貰い俺はそそくさとギルドを出る。

こりゃしばらくギルドに行けんな。

人多かったし。

俺は外に出ても追って来るかもしれないから透明化を使って確実にスーパーの方へと進んで行った。

お前にはいい出会いがあるよ。

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