チート無双1
雫が獣のように吠える様を間近で見続ける。
見た目は足がライオンの足になっており、ツバメのしっぽが生えていて、腕がクマの腕、背中にワシの大きな翼、そして頭にクマの耳が付いている。
耳が元の耳も合わせて4つあることは一旦は黙っておこう。
「雫、どうしたんだ?」
雫が大きな翼で飛んで俺を助けてくれたみたいなのは分かってる。
でも、雫は感情が昂っているのか叫び続ける。
「まるで獣ですね。しつけてあげましょう。エンハンス――」
「パワー!」
雫は力任せに枢機卿を殴る。
枢機卿は雫のパワーに負け吹っ飛び、近くのビルに突っ込む。
「へへ、へへへ」
雫の顔が紅潮し、笑みを浮かべる。
これってよくある暴走形態ってやつだ。
止めた方がいいか。
「おい、しず――」
「なんか、力が湧き上がってきたぁ!もう誰も私を止められない!」
完全な暴走ではないのか安心安心。
俺がそっと胸を撫で下ろすと枢機卿がビルから出てくる。
「まさか、こんな異常事態が発生するとは。全身強化」
枢機卿は全身を強化しドンドンと近づいてくる。
俺はすぐに身構えようとすると雫は手で止まるように訴える。
「後は任せて」
雫はそう言うと舌なめずりをし枢機卿に近づいていく。
あいつ……なんてカッコイイキャラムーブしてるんだ。羨ましい。
「あなたは弱いと思ってたんですけどね」
「お前も他のヤツらよりは強いんじゃない?」
「そうですか。嬉しい限りです」
枢機卿は笑顔で返しているが明らか眉間にシワを寄せており怒っている。
「石散弾」
枢機卿は石をバラバラに雫に向かって飛ばす。
だが、雫はその全てを見きったかのように避ける。
「創生」
雫は足元のコンクリートから犬のような生物を何体も生み出し枢機卿に向かって襲わせる。
コンクリート犬は枢機卿を様々な方向から襲うが枢機卿は強化した体でコンクリート犬を叩き潰す。
「強くなったと思ったらやることはサーカスの道化と同じじゃないですか」
「でも、このピエロは映画みたいに直接襲うよ」
雫は背後に周りそのまま枢機卿に噛み付く。
「ソウル――」
「無効化」
枢機卿は能力が無効化されたことに驚いたが雫はまだ噛み付いている。
そして、枢機卿の着ていた服がグニョグニョと変形しロープのようになり枢機卿に巻き付く。
「この服が燃えた時に甘い匂いがしたんだ。それってさ確かなんかの化学繊維が燃えた時も同じような匂いがするんだよね。動物や植物みたいな生物系のものは変形できないし大きくも出来ないけど化学物質なら変形できるよね」
「長文解説ご苦労様です」
枢機卿は無理やり引きちぎるが雫はまた元服だった布を噛み大きくしながら巻き付かせる。
「宗教的な服きてるくせに動きやすさ求めるとか端から私達のこと殺す気だったんだね」
雫は巻き付かせた布を手に持ちグルグルと回り始める。
「どうせ、目的は人類全員ゾンビ化とかが目的なんでしょ。そんなザ・悪役みたいなダッサイことのために私達を巻き込むな!」
雫はそのまま布を手放し枢機卿を投げる。
枢機卿はそのまま投げられるが建物に当たる瞬間スっと体勢を変えて建物を足場にして蹴り元の場所に戻る。
「……うるさいですね。何も知らない子供のくせに」
枢機卿はまた布をビリッと破る。
そして、なぜか口周りだけに布を巻き付ける。
「私達は子供だけど理不尽なことに合わされるために生きてる訳じゃない!」
「それは大人も一緒だ!」
枢機卿は声を荒らげたが下を向き目を閉じながら息を整える。
その隙に雫が殴りかかると枢機卿はその拳を受け流す。
そして、ゆっくりとまぶたを開け赤い瞳を輝かせる。
「ソウルアイ」
枢機卿はそう言いながら鼻血を垂らす。
ゾンビの体なのになんで血が流れてるんだ。
再生しないのか?
「無駄無駄ァ!」
雫は再度殴りかかるがかわされ立て続けに殴られる。
雫がガードしていても1寸ほどしかないであろう隙を付いて殴る。
流石に見ていられなくなり俺は雫を透明化させるが見えてるかのように雫を殴り続ける。
「流石に介入させて貰うぞ。ソニックブロウ!」
俺は透明化を解き枢機卿と雫との距離を空けさせる。
「おい、大丈夫か」
「へへへ、大丈夫」
雫は顔を赤くさせ、ヨダレを垂らし、息を荒らげながら起き上がる。
「流石に一人でやるなんてイキリすぎたかな?」
「そ、そうだな。イキリすぎだな」
俺がもしかして殴られながら興奮してたんじゃねぇのかと思っているとようやく星奏がやってくる。
「意外と離れてて来るのに時間が……雫どうしたんだその格好? それにヨダレ垂らして顔赤くさせて息荒らげて……???」
「星奏、説明は後でゆっくりとやってやる。とりあえず、状況を簡単に伝える。雫が超強くなった、枢機卿のやつ第2形態突入で透明化も意味無い、以上」
「分からないが分かった。とりあえず、私は超強い雫のサポートだな」
「俺が魔法でガッチリ援護するから頼んだ。それとこれも」
俺は星奏に刀を投げ渡す。
「鞘から抜いた状態で投げるなよ」
星奏は宙に2本の大剣を浮かせ戦闘態勢に入る。
「よし、雫行くぞ。……あれ?」
雫はいつの間にか枢機卿の所に向かって突っ走っていた。
「性格変わりすぎだろ。ちょっと待て!」
星奏も雫を追いかけていく。
せっかちだな雫も。
よし、俺もうかうかしてられないな。
私は枢機卿を殴り続ける。
相手はかわしたり受け止めたりでいなし続けられるが殴り続ける。
相手から反撃を食らうこともあるがその攻撃が私に快楽を与えて興奮させさらに私の攻撃性が上がる。
たまに理性が吹っ飛びそうになるがそれを抑えながら殴り続ける。
「石散弾」
私の後ろに石がバラけて飛んでくるが枢機卿を見つめながら全て避ける。
クロの気配察知が魔法や能力にまで有効とは知らなかった。
だけどそんなことはどうでもよくただひたすらに拳を突き出し続ける。
これは耐久戦だ。
所々の骨が折れてるであろう私の体と鼻血を垂らし続ける枢機卿との耐久戦だ。
私が倒れたらさっきみたいに体をコロコロ入れ替えさせられ対応しきれなくてアウトだ。
だから、私はここで負ける訳にはいかない。
私は2人に守られてきたんだ。
もうお荷物ではいられない。
「全身強化」
そして、
「思考加速」
私が能力を使った途端、相手の攻撃がかなり遅く見えた。
私はそのまま殴りかかると枢機卿は私が殴る場所を予測したかのように動き始める。
こいつ、私の攻撃を予測してたんだ。
だったら……
私はギリギリで攻撃場所を変える。
すると相手は対応しきれなくなりようやく攻撃が入る。
殴った感触は固く身体能力強化で防御力を固めたのだろう。
枢機卿は鼻血を垂らしながら驚いた表情を浮かべていた。
そして、星奏もやってきて攻撃する人がもう1人増える。
私の相手でいっぱいいっぱいのお前にもう1人相手が増えるんだ。
私達の力を見せてやる。
身体能力強化が思ったよりも強くなりすぎてて困惑。
最初書き始めた時はシンプルで強いけど他の強い能力がいっぱいあるからそこまで強いって印象持たれんだろって思ってたら敵や味方の能力の強さ調節頑張りすぎて身体能力強化が最強レベルの能力になっちゃった。
5感強化の存在感薄れてきてるしこりゃなんとかせんとな
ていうか全然無双出来てなかった