到着
俺達は雫の動物達が危ない目にあっていると聞きすぐさま門を出る。
「動物達をここで召喚しないのか?」
「竜、相手は枢機卿の連中だ。ここで倒さないとまた来るかもしれない。危ないが倒さないと」
「だとしても正確な位置がわからんだろ」
俺達がどこに行こうか迷っていると1匹のツバメが飛んでくる。
「クロだ」
「……なるほど、私達の案内に来たらしい」
俺達はクロについて行き動物達が戦っている場所に行く。
「え? 私、逃げろって言ったはずなんだけど。……あぁぁ、無鍬が」
星奏はため息をつきながらも真面目な表情をする。
そういえば、俺達から枢機卿連中に戦いに挑むなんて初めてか。
華蓮さんと一緒に隠れながら竜達が町の外に出て行ったのを確認し俺達もこっそりついて行く。
「見た目ただの不審者だよ、龍之介君」
「ストーカー認定されても俺は一応父親なんで裁判には勝てます」
「ネットにあげたら親バカ乙とかキモすぎて草とか言われそうだけどね」
おじさん、ネット文化分からない。
俺は竜達に見つからないように見つからないように進む。
「一応竜君の刀にGPS付けといて良かったね。あれは微小の魔力を電源として使うものだし半永久的に監視できるね。いやぁ、刀折れたと聞いたからすぐに作って売ったけどいいできだ」
「華蓮さんをストーカーにしたくないですね」
ストーカーされるのは辰巳からだけで十分だ。
懐かしいな、お互いストーカーし合って気付いたら仲良くなってたあの時……
「龍之介、悲しいのか楽しいのか分からない顔やめてくれる?」
「辰巳」
お前がいないと……いや、こんなことしてる暇はないんだ。
あいつとの繋がりである竜を守らないと。
育児放棄としか言えないようなことをして父親面する気はないが竜は守りたい人、守らなければいけない人なんだ。
俺達が町からどんどんと離れてくると俺達の前に老人が現れる。
この見た目は。
「やぁ、久しぶりだな。Fそして、華蓮」
俺はすぐさま剣を抜き切りかかる。
「待てが出来ない子供なのか?」
老人はなんともない顔で俺の剣を掴む。
俺はすぐに剣を老人の手から抜き取る。
「まぁ、今回は遊びみたいなものだ。かかってこい」
「おじいちゃん、そんなカッコつけて。また厨二病出ちゃったの?」
「私も男だ。カッコつけたくはなる」
「ジジイの時点でお前なんかがカッコイイわけないだろ。身の程を弁えろ」
華蓮さん急に豹変したな。
「若造の言葉など軽すぎて耳に入らんな」
「100歳越えてるんだし老化したんでしょ」
「……どこで私の年齢を?」
「え? 見りゃ分かんじゃん」
普通分かんないですよ。
老人は一定のラインを超えたら大体一緒になりますから。
この人は人の年齢を正確に言い当てるからな。
藤江さんとかの見た目と年齢に差がありすぎる人を除いて。
俺と華蓮さんは再び構え老人もそれに呼応し構える。
俺はイリが前に出てるのを全力でサポートする。
イリは建物の柵に触れたり崩れた瓦礫に触ったりと寄り道をしながらも着実に進む。
ドムもイリについて行って攻撃をわざと食らったりしてる。
イリが触れたものがどんどんと動き始め柵は自らを分解し棒になって人間に向かって飛ぶ。
瓦礫は歪な人型の形になりドンドンと音を立てながら進む。
人間は飛んでくる棒を弾き飛ばしドンドンと進んできた歪な人型の形をしたものは殴り飛ばし粉々にする。
俺は魔法を打って打って打ちまくりブラウニーはまた落石を続けている。
無鍬達も駆けつけ大鎌になった叡犂が前に出て人間の攻撃を受け止めたり叡犂になった大鎌はブラウニーのために石を集めたりしている。
「腕力強化」
人間は大鎌が俺達のサポートに集中してることに気づいたのか大鎌に殴りかかる。
大鎌は人間のパンチに耐えきれず吹っ飛び、建物の壁を貫通する。
そして、当たり所が悪かったのか気絶してるみたいだ。
「投石」
人間は俺達に向かって魔法で大量の石を作り飛ばしてくる。
俺達、鷲組はドム以外飛んで避け無鍬達は叡犂を盾として耐える。
《気持ちいい》
なんでドムじゃなく俺が嫌われてたのか甚だ疑問だ。
《チニ、この石を魔法で熱くしてくれそうすればもっと――》
《俺、あいつよりも下なの気に食わない》
《なんかごめん》
《すいません》
ブラウニーとイリが申し訳なさそうに謝ってくる。
俺達はずっと飛んで避け続けているが少しかする事が増えてきた。
このままじゃやられる。
どうやって人間に近づくか。
《そうだ、ブラウニー、そこら辺の石を大きくしてくれ。イリはブラウニーが大きくした石に能力を使って俺達の盾になってもらいながら近づくぞ》
《《了解》》
《俺は何をすればいい?》
《お前は人間の気でも逸らしとけ》
《分かっ……うぉぉ。それいい。その大きさの石が翼に当たるのめちゃくちゃいい!》
あいつ、もう骨折してるだろうにどうやって飛んでんだ?
ブラウニーとイリは急いで物陰に隠れる。
人間は俺達が何かし始めることに気付いたのか魔法を打ちながら来ようとする。
俺は避けながら魔法を打ち少しでも俺にヘイトが向かうようにする。
「死なないからなのか見えないですね」
見えない?
こいつは何を言ってるんだ?
《出来ました!》
ブラウニーの声と共に人間より数倍でかい人型のゴーレムができる。
俺はすぐさまそいつの後ろに行く。
《イリ!》
《出発進行!》
俺達はゴーレムを盾にしながら近づく。
近距離戦となったら魔法を使わなくなるだろう。
魔法を使わなくなったら無鍬達に意識を向かないようにして無鍬達に殴りかかって貰っておう。
それから――
俺が作戦を考えていると人間は物凄い勢いで地面を蹴り飛ぶ。
そしてゴーレムの腹を貫通してブラウニーを巻き込みながら建物の壁に当たる。
「全身強化」
ブラウニーも当たり所が悪かったのか気絶する。
「あと5匹」
人間は魔法を止める。
その隙に無鍬達が後ろから襲いかかるが人間は蹴りで一蹴する。
「あと3匹」
《ここまでか?》
《だろうな。イリ、ブラウニーを連れて逃げるぞ。他のやつらは流石に重くて運べない》
《了解、ドムはどうする?》
俺達は人間をこちらに引き寄せブラウニーから離れさせる。
ドムからの返事がなくドムの方を見るとドムは地面に倒れていた。
「あと2匹?」
なんで倒れてるのか分からないから人間も困惑してるじゃん。
俺達も困惑気味だ。
さっきまであんなに楽しそうだっただろ。
《翼もう動かせない。これ絶対折れてる》
だろうな。
あんなに攻撃受けてたら普通そうなるわ。
《ちょっと痛くて気持ちいい》
《お前はもう喋るな》
イリがドムにドン引きの目をする。
……本当に俺の扱いこいつより下なの意味が分からん。
「……そういうことですか」
人間は少し微笑むとブラウニーの方に向き直す。
こいつ、俺達の考えに気づきやがった。
俺達は急いで駆けつけようとするが人間は既にブラウニーを掴んでいる。
魔法でブラウニーを殺すしかないか。
俺が魔法を使おうとしてるとガキンという音が人間の首の方から聞こえる。
「あららバレてた?」
「私、繊細なのでね」
人間の後ろから剣を持った雫様が現れる。
雫はブラウニーの頭に剣を突き刺すとすぐにまた透明になる。
ブラウニーの体が光りブラウニーが復活すると人間はブラウニーをすぐに手放す。
「皆、退いて。後は私達がやるから」
雫様が俺達の前に出てきてそう言うと他の2人も出てくる。
「やっぱり自分から死ぬような真似するの怖いな」
「ありもしない主人公補正に縋ってろ」
竜様や星奏様が雫様の隣に並び剣を向ける。
竜様はもう一本の剣を浮かせる。
「ゾナとソレイ、大鎌と叡犂が入れ替わってた。多分こいつが入れ替わり能力だ」
「さっさと倒して元の体に戻るとしますかね」
「怖いとか言ってたやつがイキるな」
俺達は雫様の言う通りに下がる。
ついでに爪を差し込んでドムも回収する。
《あっ》
ドムの喘ぎ声を聞かなかったことにしながら必死に退く。
「意外と早いですね」
人間は焦っているように見える。
「私の子達が傷つけられたんだもん。当たり前でしょ」
「まぁいい。来るなら来い!」
人間は自分自身を奮い立たせるためか大声を出す。
人間が言い終わると雫様達は人間に立ち向かっていく。