慣れ
私と雫は50体程度のゾンビの大群を目の前にしている。
「凍結」
私は魔法でゾンビ達の動きを止める。
よし、後は首を斬るだけ。
一応雫に透明化を付けてもらい刀を抜くと一体だけ氷に噛み付いてるやつがいた。
私はゾンビの首を切りながらそいつへと近づく。
そいつは私が魔法で作った氷を変形させ脱出した。
能力持ちまだいたのか。
竜には一体対応してもらってるしここは私がやらないとな。
「サイコキネ……は使えないんだった。えっと……どうしよう」
〈星奏、どうしたの?〉
雫が念話で話しかけてくる。
そういえばそんなことできるようにしてたな。
〈能力持ちがまだいた。噛んでたものが変形したし多分噛むと発動する能力って感じだろう〉
〈それって大丈夫なのかな〉
〈動きを止めれないだけだし多分大丈夫だ。雫は普通のゾンビの対応を頼む〉
〈りょ〉
雫、「りょ」じゃなくて「り」だ。
私は大鎌を召喚する。
「手伝ってくれ」
〈……後で雫様に褒めてもらうように言って欲しいだべ〉
こいつら本当に雫のことが好きだな。
私は頷くとすぐに向き直る。
ゾンビはまだ氷を噛んでいる。
氷はグニョグニョと形を変え尖った棘状の物になる。
「ンガガンガァ!」
ゾンビは氷の棘を持って突き出しながら走ってくる。
「いけ、耐えるだ!」
〈あなたは全然優しくねぇべ〉
大鎌は嫌味を言いながらもゾンビの前に立ち氷の棘をへし折る。
耐えろと命令したがまぁいい。
わざマシンを使うのはこれが終わった後だ。
私はできる限り早く走りゾンビに向かって刀を振るう。
が、ゾンビは刀を噛み刀身を変形させ柄から刀身を離す。
……これ後で竜に怒られるやつだ。
どうしよう。
米粒でも付けとくか?
「ンガァ!」
ゾンビは刀身を噛んだまま私のもとへやってくる。
「大鎌、タックルだ!」
〈雫様に鮭を食べさせて欲しいべ〉
「頼んでやるから行け」
ゾンビは大鎌思いっきりタックルされエアーウォールで作った壁まで吹っ飛ぶ。
「ンガ」
ゾンビは刀身を噛んだまま私達に向けると刀身が細く伸び私の喉元に刺さりそうになる。
質量的にこれぐらいが限界だったか。ラッキー。
足が震えてるのは雫の体だからで言い訳できるか?
サイコキネシスが使えたらこのまま剣を飛ばしてるのに。
私がどうしようと思ってると雫がいつの間にかゾンビの近くにいる。
「火炎振動剣!」
雫は持ってる剣を火で纏わせ剣を振動させる。
ゾンビは直ぐに刀身を元に戻そうとするが雫がその前にゾンビの首を斬る。
「助かった。ありがとう」
〈雫様、オラと一緒にはちみつ食べるべ〉
鮭じゃなかったのか?
雫は大鎌の声が聞こえないので大鎌の言葉には何も返さずに頭を撫でて私のところに来る。
竜の体でも中身が雫ならなんでもいいんだ。
性格重視のやつはこいつを見習って欲しい。
「いつもより力が強いから楽だったよ。これなら100体でもいけるね」
「それなら良かった」
竜、お前の体は雫が使った方が上手く使えてるみたいだ。
俺はものを大きくする能力を持つゾンビと向かい合っている。
まずは透明化で……ってそうか透明化使えないんだった。
星奏の能力は見えない床、もとい壁を作るとサイコキネシス。
俺が今の自分の能力を再確認してるとゾンビはポケットからペンを取りだし投げつけてから大きくしてくる。
「サイコキネシス」
俺はペンを止めてそのまま地面に落とす。
そしてお返しとして2本の大剣をゾンビに向かって飛ばす。
ゾンビはポケットからパソコンか何かの充電コードを取り出し振り回しながら徐々に大きくさせ飛んできた剣を叩き飛ばす。
そして、徐々に充電コードを元の大きさに戻していく。
どうしよう、この後のこと何も考えてない。
どうも使い勝手が分からん。
遊びとかに使う分ならいいんだが戦闘に使うとなったら慣れてる物じゃないとだからな。
剣を飛ばして無駄だった後の行動をいちいち考えないといけない。
これはあいつらも苦戦してそうだな。
確か、星奏はこの後近づいて空手の技とか柔道の技とかを……って俺全く知らねぇよ。
「でも、任されたからには何かやっとかないと後でいじられそうだしな。俺なら絶対そうするからさ」
俺は叩き飛ばされた2本の剣を俺の元に戻す。
そして宙に浮かび上がる。
ゾンビは片手で充電コードを大きくして振り回す。
もう一方の手はポケットの中に突っ込んでいる。
「させねぇよ!」
俺は1本の剣をポケットに突っ込んでる所めがけて飛ばすが充電コードに叩き飛ばされる。
だが、がら空きになった反対側に向かって剣を飛ばす。
ゾンビは対応しようとするが充電コードが重く振り回せなかった。
そのまま剣が刺さりそうになるがポケットから朱肉が入ったケースを取り出しそれを大きくして盾替わりにする。
「おいおい。剣に赤いのがべっちょり付いてるから人ぶっ刺しましたって感じになったじゃんか」
これ絶対星奏になんか言われるわ。
ゾンビは朱肉が入ったケースをどかす。
ケースをどかすと充電コードは元のままである。
防御手段である充電コードが小さいままということは隙だらけということか。
俺はすかさずに手をゾンビに向けて口を開く。
「アトムファイア」
俺は魔法をゾンビに向かって出しゾンビは圧倒的な熱量でお腹の真ん中がグロいことになって膝をついている。
俺は剣をその場で浮かばせ首に向かって飛ばす。
ゾンビはポケットからペンを取り出し両手に持つ。
そして剣に向かって振り当たる直前で大きくしペンの重量で剣を落とす。
確か星奏は相手の持っていた物をサイコキネシスで取っていたな。
ゾンビが持っているものだからかちょっと難しい……な!
俺はゾンビが持っていたペンを浮かび上がらせ剣をもう一度ゾンビの首に向かって飛ばす。
ゾンビは為す術もなくまま首に剣を突き刺せられ首を切られる。
「まぁ、俺にかかればこんなもんよ」
俺がエアウォールを解除すると2人がやってくる。
もう終わったのか。
「そっち楽そうだったしすぐに来てくれても良かったじゃん」
「こっちも能力持ちがいたんだ。そりゃもう大変だった」
そっちにもいたのか。
ていうか、外に出れば能力持ちと出会うこと多いな。
「能力因子を売れば生活費に当てれるだろ。今日はご馳走だ」
「それなんだがブラウニー達に食べさせるのはどうだ?」
「無鍬達も能力持ってたし私の眷属達全員能力持てば私が強くなれる」
雫が嬉しそうに俺が倒したやつの能力因子を回収する。
雫が強くなれば俺を狙ってくるやつに対抗しやすくなるしな。
「よし、採用」
「やった。誰に食べさせようかな」
「私が食べたいヤツがいるか今聞く」
星奏は耳に手を当てて誰かと話をしてるようにする。
俺と雫はその間にゾンビの死体を運ぶ。
「そういえばさ、初めて星奏を戦闘で助けた気がする」
雫は世間話をするかのよう話す。
「なになに。星奏死にそうだったのか?」
「そうそう。星奏の喉元に竜の折れた刀がびょいーんって伸びてて」
ものを変形させる能力だったのか。
……
「って俺の刀折れたのか?」
「うん。星奏が今鞘に収めて誤魔化してるけど折れてるよ」
そうか。
俺の神刀エクスカリバーEXゴッドフィーチャリングDXが。
後で星奏を罵ってやる。
俺は復讐のことで頭をいっぱいにさせていたら雫は少し嬉しそうにゾンビを運んでいた。