身体確認
俺と星奏はジャージ姿に着替え充分にストレッチをする。
雫はクリップボードを持って俺達を見る。
俺を見るとすぐに近づいてくる。
「竜、今は星奏の体なんだから髪も長いでしょ? ちゃんと括らないと」
雫はそう言うと俺の髪をくくりポニーテールにする。
「邪魔になって動きにくいよ」
雫はゴムをクルクルしながらドヤっとする。
俺の顔だけど腹立つな。
「そうだったのか。ありがとう」
星奏は準備し終わったのか雫に近づく。
「雫、まずは何からだ?」
「まずは握力測定、長座体前屈、後はシャトルランと短距離走やって軽く視力検査もしとこっか」
雫は俺達に握力測定器を持たせる。
雫がなんか星奏のマネージャーみたい。
ていうか、なんで握力測定器が平然とあんの?
……まぁ星奏が買ってたんだろ。
2個ある理由は知らん。
「ぐぐぐ」
星奏は早速握力測定器を握る。
俺も続いて握る。
結構力出せるな。
「竜は76kgだね」
雫が俺の測定器の数値を紙に書く。
星奏の体すご。
俺の体ではせいぜい46とかそこらだったからな。
「星奏は18kg」
雫の体弱すぎだろ。
そんなんでよく今まで剣握ってたな。
雫は星奏の数値を紙に書く。
「私が測った時より強いね」
持ち方が悪かっただけじゃないか?
俺は壁に背中をつけて座る。
「これ、押してね」
雫はそう言って長座体前屈の時にしか見ないテーブルみたいなダンボールを置く。
俺はそれに手を置きゆっくり体を倒す。
俺の体より柔らかいな。
痛みは完全にないという訳では無いから星奏は硬かったんだな。
なんか星奏が積み上げてたのを全部横から奪った気がして申し訳ないな。
「おぉぉ!」
星奏が驚嘆の声を出したのでびっくりして体を起こして星奏の方を見るとかなり柔らかく倒れていた。
雫は体柔らかいっと。
「竜は49.6で星奏は49.8ぐらいね」
差はあんまりないがこれは雫の手足があんまりない長くないからだろう。
星奏サイズなら間違いなく50は超えてる。
意外な発見だな。
「ちょっと硬くなっちゃったかな」
「充分柔らかい方だし大丈夫だろ」
星奏は180度開脚をなんなくし体を床にベターっとくつける。
雫の体おもろそう。
俺達は町の公園に移動する。
皆、入れ替わったことで騒いでいるが俺達は気にせず続ける。
俺は床に手を置き腰を上げる。
「位置について用意ドン!」
星奏の合図共に走り出す。
俺は全速力で走るが中々動かしにくい。
全力で走るのはまだまだ無理そうだ。
俺はゴールに着く。
「13.6秒」
雫が秒数を言い紙に書く。
俺は小学校の頃の記憶を思い出す。
100m走ったの久しぶりだな。
そういえば俺の成長したあの体だったらどれくらいで走れるのだろう。
元に戻ったらやってみよう。
俺は星奏と立場を代わる。
雫が頷くと手を大きくあげる。
星奏はそれを見ると手を地面に置き腰を上げる。
「位置についてよーいドン!」
勢いよく手を振り下ろすと星奏はすぐに走り去……
「はぁはぁ」
星奏は息を荒くしながらゆっくり走る。
星奏は一生懸命走りゴールにたどり着くと足に手を置きゼーゼーっと息を吸っては吐く。
「雫の体、すぐ疲れる。運動……しなさすぎ」
雫は顔を逸らし頬をポリポリと掻く。
雫も俺と同じ引き込も族だから仕方ない。
「これは筋トレから入ってジョギングだな」
星奏は今後の筋トレ計画を決めると地面に座る。
「この後はシャトルランだよ。何へばってるの」
「それは別日にやるべきだろ」
「私も別日がいいと思う。雫の体がここまでとは思ってもなかった」
雫がやれやれと言った雰囲気を出す。
いや、普通そうするだろ。
小学校の時はそうだったし。
「それじゃ、先に軽い視力検査だけしとこっか」
「思ってたけどなんで視力検査を?」
俺が疑問を投げると寝転んでいる星奏が口を開く。
「視力が違うだろうから念の為の確認だ」
確認して何をするんだと思うが俺は口を開かないでおく。
「今まで見えてたやつが見えたり見えてなかったやつが見えなくなるんだ。僅かな違いしかないだろうが一応確認しとかないと」
「別に今なんともないんだしいいのでは?」
「……念の為だ」
おっと星奏が恥ずかしそうにしてますなぁ。
それっぽい説明したのに俺の一文で論破されたもんな。
でもな、そうやった人は大人になるんだぜ。
「はい、立って」
雫の言う通り俺と星奏は立つ。
雫は俺が立ってる場所にメジャーを置き5mとメジャーに書かれた所まで引く。
そして雫はポケットから紙を取りだし広げて俺たちに見せてくる。
「はい、これは?」
雫が視力検査の時にしか見ないどこかの方角に穴が空いてるやつを見せてくる。
「右」
「はい」
「左」
「はい」
「左」
雫は言い終わったのか紙に数字を書き俺を手招きする。
「右0.7左0.8だね」
「意外と悪いんだな」
数字を見て遠くを見てみれば若干見ずらい様な気がする。
まぁ困らない程度だし問題ない。
雫は星奏のもすぐに済ませる。
「右0.9左1.0」
「意外と雫高いな」
「言うて変わらんだろ」
まぁこれぐらいなら裸眼で生活しても何も問題ないな。
星奏がメガネつけてるとこ見た事見たことなかったしな。
「じゃあ明日はシャトルランだな」
「今日は一旦終わりだな」
俺達は地面に腰を落とす。
「竜、能力の面白い使い方ってある?」
「服を透視とかならできるぞ」
「え?ほんと?」
雫はそう言うと周りを見渡す。
早速男性ホルモンの影響でも受けてんのか?
星奏は筋肉質だからか女性ホルモンが多いって訳では無いみたいだな。
おかげで以前の精神性を保ったままでいられる。
ちょっとだけ性欲が湧いてこないのが辛いがそれは気合いで……
「お腹痛い」
「トイレならあっちにあるよ? あ、でも女性トイレに行かないとだから性欲おばけな竜には毒だ」
性欲おばけとは言ってくれるな。
俺はまだ少ない方だぞ。
一日に最高3回行ってギブだったからな。
ってそんなことやってる時じゃなかった。
ちょっと気持ち悪いけど立てないほどじゃないので俺は立ち上がる。
「ちょっと家帰って休むわ」
俺が家に帰ろうとすると星奏が口を開く。
「そろそろ周期だったわ。ごめん」
周期?……
「あぁ、生理か」
「しばくぞ」
「なんで?」
言い当てただけなのになんで拳を構えられないといけないんだ。
「私のは慣れればそこまでだから気にするな」
「気にするだろ。俺にとっては初体験なんだよ」
「初体験おめでとう」
「めでたくねぇよ」
俺はゆっくりとお腹をお腹を温めながら帰路につく。
2人も介抱としてか来てくれる。
「雫はどんな感じだったんだ?」
「私のは来てもよく分かんないで済む程度だから大丈夫だよ」
そういえば個人差があるって聞いた気がするな。
ますます雫の体の方が良かった。
「竜、そんな状態で悪いが日課の筋トレがある。それだけはしてもらうぞ」
「なんで? 病人なのに?」
「安心しろ。その日用のトレーニングメニューだ」
「なら安心とはならねぇよ?」
星奏はわかってないなと言う顔をする。
「いいか? 私達女性は女性ホルモンのせいで筋肉がつきにくいんだ。男は数日筋トレサボった所で特に問題ないが私達は一日でも休むもんなら容赦なく筋肉がなくなる。だから維持するためにどうかやってくれ」
それならしょうがないか。
ササッと済ませて寝よう。
「じゃあまずは腹筋100を10セット程」
どうやったらズル休みできるかな。