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[完結]世界の終わり  作者: ワクルス
俺達、私達……
125/265

修行

「修行したい」


雫がいきなり言いだしてくる。

俺と星奏は一瞬動きが止まる。


「修行したい」

「どしたん? 話聞こか?」


雫はよくぞ聞いてくれたといわんばかりの顔をする。


「私達はこの前、ぼろ負けしたじゃん。大体の漫画とかだったらこのまま修行パートに入って作者に強化してもらって次の章に行くでしょ」


それはそうなんだが。


「それって師匠キャラがいないと無理じゃね?」

「そこはほら、各自で適当に練習メニュー作ってやればいいんじゃない?」


修行か。

滝行にでも行くかな。

それか、毎日1万回の正拳突きとか。


「俺達はこの前の戦いで完敗した。あの時は有輝がいたからなんとかなったがこれからは有輝なしでいかなくちゃならない。皆、より一層毎日の練習メニューをきつくしよう」

「毎日練習してないでしょ」

「雰囲気ぶち壊すな。せっかく作ってやろうとしたのに」




「地獄の走り込みだ。野郎共、ちんたらせずに走れ」


星奏が竹刀を持って喋りながら走って追いかけてくる。


「アニメとかじゃ追いつかれたらボコボコにされるんだろうけど法律が俺を守ってくれるんだ。追いつかれたところでボコボコには――」


俺が少し止まると物凄い勢いでやってきて竹刀でボコボコにされる。


「痛い」

「走れ」


俺は星奏から逃げるように走る。

星奏は心なしか楽しそうに見える。


「雫、捕まったら全力でボコボコされるから気をつけろ」

「よし、次に行こう」



俺達はそこら辺のビルよりも高い所で見えない床を歩く。


「高所恐怖症に優しくないんだけどどういうこと」

「大丈夫、落ちても助けてやるから」


命綱は星奏の能力のみ。

俺と雫はこの町でいちばん高い建物まで走って行かなければならないが怖くて走れない。


「後5分以内につかなかったら紐なしバンジーの刑な。大丈夫、死にはしない」


こえぇよ。

ていうか、星奏は全然修行してないじゃん。

もう完成してるからっていうのは言わなくても伝わるけどさ。


「私は行くよ。じゃあね」


雫は泣きながら走り出す。

俺は雫の背中を見て負けてられないと走り出す。


「こわい」

「考えたら負けだ」


俺達は下は見ずにただ走り続けなんとかゴールする。


「なんとか、行けた」

「怖かったぁ」


星奏は拍手しながら空から降りてくる。


「ブラボーブラボー。流石だネ」

「急に誰だよ」

「裏切り者みたいにしてみたけどダメだったか」



次は町の外に出てゾンビを狩る。

でも、ただ狩るだけではなく。


「お、重い」


重りを手首や足首等で持ったまま狩る。

星奏は俺や雫が付けてるやつより10倍位は重いが普通に動けてる。

日頃から重りつけて生活してみようかな。


「ライトニング!」


魔法で電気を放電させゾンビ達を麻痺させその隙を狙い首を切る。

一つ一つの動作をする度に重りが乗っかってきてかなり疲れる。

星奏はいつも通りの量を倒している。

雫は……なんか囲まれてる。

なんでその状況になるまで俺達を呼ばなかったんだ。

俺は駆け足で行く。

緊急事態だし外していいかな。

俺が雫の方に向かっていると雫の周りが明るくなり明かりの中から無鍬と大鎌が出てくる。

大鎌がゾンビ数体を抑えると無鍬が四つん這いになって大鎌の少し後ろに行く。

雫は無鍬の背中に乗りジャンプして高く飛ぶ。

空中で剣を襲ってきたゾンビに差し込んで取っ手を離さないで捻って剣を持って着地する。

意外といい動きするな。


「竜、雫に負けてるな」

「うっせ。あいつは能力強いからズルだズル」

「負け惜しみぃ」


星奏が煽り口調で言ってくる。

星奏の部屋にゴキブリの見た目したおもちゃでも入れてやろう。

こいつ虫苦手だし発狂するだろ。

それにしてもなんか寒いな。

まだ寒さを感じる時期じゃないと思うんだが。


「なんか、修行っぽくていいね」

「重りつけて動いてるだけだけどそれっぽいよな」


雫が一通りのゾンビを倒し俺の所にやってくる。


「あれぇ? 私の事弱いって言ってた人よりぃ私の方がゾンビを倒してるんですけどぉ」


雫がニヤニヤしながら言ってくる。

こいつの部屋には偽告白用のラブレターを大量にぶち込んでやろう。

多分思い出し泣きするだろうな。



俺達は星奏がおすすめしてきた滝にやってくる。

滝に良い悪いとかあるんだなと言う疑問はさておき――


「寒い」


俺達は絶賛滝に打たれている。


「おい、喋るな。いいか、滝に打たれて精神を統一するんだ。心の乱れは精神の乱れだだ」


なんか同じこと言ってるな。

俺は反論しても意味がないと察し無言で滝に打たれる。

意外なのが雫が結構耐えてる所だ。

雫には負けてられないと俺は寒いのを堪え必死に滝に打たれる。

小学校のプールの授業で浴びた地獄のシャワーなんて比にならないぐらいの冷たさと勢いがある。

俺は2人がどんな顔をしてるのか気になり覗く。

星奏はなんか滝に打たれて笑みを浮かべている。

多分、厨二な妄想をしているのだろう。

この修行が終わったらとんでもパワーを手に入れられるとか。

雫は歯を食いしばって耐えている。

その顔を見ると俺も負けてられないと思い必死に耐える。

いや、耐えるって思うのがいけないのではないか?

そう、何も考えない。

これが完璧な作戦なのだ。

頭もぼーっとしてきたしこれが一番だろ。

でも、やっぱり雑念が入っちゃうな。

確か瞑想する時って呼吸に集中するって本に書いてたな。

俺は腹を膨らませ鼻から息を吸い腹をへこませ鼻から息を吐き出す。

なんか、体が熱くなってきたな。

プールも入る時は冷たかったけど入ってみると出るのが辛くなるし同じようなもんか。


「私はこの世界の覇者、スターライト・プリンス様だ。私の力を貸して欲しくば足を舐める覚悟で必死に媚びてみろ」


星奏がドSにならないか心配になってきた。


「本当に舐めるのか。ふふふ、次は服を脱いでちんちんしろ」


どんな妄想してんだアイツ。


「まるで犬だな。犬は首輪をつけて飼ってやらんとな」


星奏の部屋にSM系のエロ本でも入れといてやろうかな。

いや、星奏の家に星奏名義で送ってやろう。

確か、宅配サービスが出来たはずだし丁度いいか。

家族会議が捗るな。

それにしても雫は静かだな。

星奏がこんなに妄想世界に入り込んで独り言をブツブツ言うレベルなのに雫は独り言も言わず静かに耐えてる。

雫も滝行してたとかか?

星奏に連れてこられてでワンチャンやってたかもしれないし経験者だったら俺が勝てるわけがない。

集中出来なくなってきたしそろそろ出ようかな。

……雫には負けたくないな。

星奏には勝てないだろうが雫には勝ちたい。

ここで負けたら絶対煽られるし。

星奏に負けてもまだ言い訳できるが雫は出来なさそうだし。

クラクラしてきたが必死に耐える。

こいつには死んでも勝つ。

勝って煽ってやる。

あれ? 俺まだまだ行けるけどお前無理だったん? 雑魚すぎ次からはもっと耐えれるといいでちゅね。

こんぐらいの煽りで許してやるか。

雫は別に体が特別強い訳じゃないしな。

星奏が俺に負けたらこれ以上言うけど。


「へっくしょい!!」


俺はくしゃみをする。

すると、一気に意識がぼーっとしてきてフラフラしてくる。


「体熱い!」


俺は来ていた服を脱ぐ。


「大丈夫か?」

「なんか、顔赤いよ?」


星奏達が流石に心配したのか俺の所に来る。

星奏が俺のおでこに手を置き自分のおでこにも手を置く。


「風邪ひいてる。大体38.4度ぐらいだ」

「そこまで分かるのは流石に星奏でもキモイかも」


雫は顔を引きつらせる。


「そんな事より早く帰るぞ」


2人は荷物をまとめて俺と一緒に空を飛んで家に向かって帰る。


「へっくしょい!!」

「うわ、私にかかった。雫、ティッシュ」

「そんなの持ってきてる訳ないでしょ」

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