有輝
僕は僕の家族を殺したっす。
理由は僕の能力っす。
ゾンビ達が世界を襲った時、僕の家は丁度避難所建設の範囲に入ってたっす。
そのおかげで僕は見捨てられずにすんだんっすけど。
その代わり扱いが酷くなったっす。
「この役立たず!ちょっとはお兄ちゃんみたいにお金を稼いできてよ」
「このただ家にいるだけの穀潰しが!」
ただちょっと異常がある状態で生まれただけなのになんでこんな扱いを受けないといけないんっすか。
両親は農家に兄は冒険者になって生計を立ててたっす。
兄はこんな世界になっても優秀だったっす。
「有輝、俺能力になったんだぜ。すげぇだろ。身体能力を強化する程度の能力だ。お前は…使いこなせないか。強化する体がそんなんだもんな」
その能力があれば僕はこの体ともおさらばできるっすかね。
そんなことを考えていた時だった。
兄がいつも周りからよく見られたいがために買ってくる新聞を読み赤くなった髪をジロジロ見ながら暇つぶしをしてた時っす。
「能力持ちの人が死んだら能力因子が出てくるっすか」
能力者が死ねばの能力を使えることができる能力因子が体の外に出てくるという記事を見たっす。
もし、兄を殺したらこの忌々しい呪いから解放されるかもしれない。
そう思ってからの行動は早かったっす。
動かしにくい体を気合いで動かし着々と準備を進めたっす。
両親は畑作業で昼間は基本的にいない。
そして、兄はたまにずっと家にいる時がある。
そこを狙うっす。
そして僕は兄に近づき腹にナイフを突き刺したっす。
兄は近づいてくる僕に少し驚きながらも必死に歩いてる僕を見て笑ってたっす。
血がナイフをつたって滴り落ちるのと同じぐらいに雨が降り始めたっす。
僕はそのままナイフを心臓の所に突き刺したっす。
兄は驚きのあまりなにも反応出来てなかったっす。
兄は僕を押し立ち上がろうとするが血が大量に出ているからか立ち上がれずそのまま倒れる。
まだ因子が出てないってことは生きてるっす。
殺さないと。
僕はそのまままた体を動かし兄の体にナイフをブスッとまたブスッと刺す。
「これが能力因子っすね」
僕は兄の体から出てきた肉塊を頬張る。
その時両親が帰ってきたっす。
雨が降ってたからっすね。
両親は腰を抜かしてた。
兄の死体を見たからか、返り血で赤く染った僕が肉塊を頬張っていたからかは分からないっす。
僕はちょっと力を込めれば体を自由に動かせるようになったことに気づく。
「騎士の方たちの所に行かないと」
せっかく自由になったのに囚われの身は困るっすね。
僕は本能的に両親も殺した。
そこになんの感情もなかったっす。
そして改めて周りを見ると死体になった両親と兄が倒れてて僕は笑いを堪えられなかったっす。
僕をバカにした兄も罵ってきた両親も全員僕の手で死んじゃったんすから。
足音がこっちに近づいてきてるのが分かってもそれが騎士の人達だと分かっても、捕まったら僕がどうなるのか想像出来ても笑うことしか出来なかったっす。
その時でしたっす、髪の毛が元の黒色に戻ったのは。
僕は運良く誰も見てなかったからか証拠不十分で逮捕されなかったっす。
晴れて自由の身になった僕は何をしようか考えた時に因果応報という言葉を思い出したっす。
あの人達を殺した罰がいつか来るならそれまでに罪を軽くしようとしたっす。
そこからの僕の行動は早かったっす。
冒険者になって町の外によく出るようにしたっす。
魔力10万と言ったらめちゃくちゃ受付の人驚いてたっすね。
僕は困ってそうな人を見つけるとすぐに助けるようにしたっす。
そんな時に竜さんと出会って僕はなんとなくで人を助けてることに気づいたっす。
ゾンビに囲まれてるから、なんか苦戦してそうだから、危なそうだったから。
だけどそれは僕の中の罪が消えていってると思うだけの独りよがりな人助けだったんす。
竜さんが人を殺してると勘違いしそれをとっちめるために攻撃したっすけど、実際は竜さんは人を殺してなくただ、ゾンビ化していた死体のゾンビ化を止めるために首を切っていただけだったっす。
そこから僕はよく考えるって事を学んだっす。
考えて助ける必要があるかないかを考えて動くようにしたっす。
困ってそうだからって理由で助けたって助けられる側が困るっすからね。
そんな大事なことに気づかせてくれた竜さんを不幸な目に合わすやつは許さないっす。
僕は魔法でドーム状に土の壁を作る。
僕はじぃさんを睨む。
「いい目だ。友人を思い出す」
「お前は絶対に殺す」
「いいだろう。私の名を教えてやる。源常吉だ。お前とはいい勝負が出来そうだ」
僕はそのまま常吉に向かって走る。
常吉は屋根を足場にしたりして縦横無尽に飛び回る。
僕はそれに気合いで追いつく。
常吉は僕に向かって殴りかかる。
僕はそれを受け常吉の腕を掴み顔面に向かって殴りかかる。
常吉は拳を手で握る僕の腹に蹴りを入れる。
僕は拳を握られた手を握り返し常吉の片方の足をはらい体勢を崩した常吉は転ぶ。
「お前には全能力を使うしかないか」
常吉は手から縄を出し僕に巻き付かせる。
そして転んでる体勢から縄を使ってすぐに起き上がり僕を飛ばす。
縄をすぐにちぎり次は剣を抜いて常吉のもとへ向かう。
「フラッシュ」
目の前が光り目を潰される。
「聴覚強化!」
僕は耳を良くし音で相手の行動を見る。
すると僕の体に鞭のようなものが当たる。
「鞭は音速を超えるみたいだからな。音で聞くのは無理じゃないのかと思っていたがその通りみたいだな」
「1回の正解でそれを正しいと思ってるんじゃないっす」
目が慣れてきたのでまた目を開ける。
目を開けると周りが縄で囲まれていた。
「操縄、足取り!」
常吉は囲んでいた縄を一気に僕の足に巻き付き縄を振り回す。
僕は剣で縄を切る。
僕は慣性で吹っ飛ぶがすぐに足を壁につけ壁を足場にし常吉の所に向かう。
常吉の所に向かうと常吉はもういない。
常吉は僕の後ろから殴りかかってきていた。
「鉄拳」
魔力を足に集中しろっす。
僕は常吉の拳が届く前に常吉の上半身を蹴る。
僕は剣をその場に落とし体勢を崩した常吉に向かって足を下ろしその勢いを使って拳をつきだす。
このタイミングっす。
「ジャストアタック!」
これは決まるっす。
「落とし穴」
僕の片足が急に地面に埋まる。
僕の拳を地面に辺りアスファルトが一気に割れものすごい勢いの衝撃波が起こる。
「お前はいい相手だった」
常吉は僕を勢いよく蹴り縄で僕をぐるぐる巻き振り回し飛ばす。
「さてと」
常吉は僕を飛ばして当たった所に行く。
「お前はそこまで魔法が使えないと聞いたんだがこの壁、結構硬いな」
「待て。まだ僕は生きてるっすよ」
常吉は僕の所にむく。
「そういえば発動した能力は能力が死ねば無くなるが魔法の場合どうなるんだろうな」
常吉は僕の所に来る。
魔力はまだあるっす。
僕は痛む体を無理やり起こす。
「決着をつけよう」
こいつの能力は全てわかったっす。
後はその全てにすぐに反応出来れば勝機はある。
僕たちが構えると土の壁の1部が壊れる。
「有輝、よくも俺達を仲間はずれにしたな。帰るなら一緒にだ」
「なんで…そこまでするんすか」
竜さん達がドンドンと入ってくる。
「一緒にいてくれるって言っただろ。約束破るのは許さいぞ」