逆転2
無鍬は水夢に近付き水夢を爪で引っ掻いたりする。
水夢は魔法で何度も攻撃していたが雫の眷属になったおかげか何回も復活する。
「透明化! ソニックブロウ!ソニックブロウ!ソニックブロウ!」
俺は2人を吹っ飛ばし自分を吹っ飛ばし動物達を吹っ飛ばしてなんとか動物達の包囲網から抜け出す。
よし、抜け出す事が出来た。
「おい!南根雫。こいつに死ねって命令しろ!」
「死ね」
雫に命令されるが無鍬は何事も無かったかのように攻撃を続ける。
やっぱり能力無効化って強いんだな。
「無鍬、交代だ。雫に触れて、能力を抑えろ。こいつは俺が殺す」
雫に触れてさえくれれば動物達を味方にできる。
できれば、星奏にも触れて欲しいがそこまではいいや。
「よう、水夢。高みの見物はどうだった? 楽しかったか?」
「姿を見せないのは見た目に自信がないからか? ブサイクが」
「ルッキズムの権化じゃん。怖怖。今どきそういうのは怒られるんだぜ」
俺は魔力水を垂らしながらも一気に飲み干す。
「敵キャラになっちゃったせいで殺されちゃう可哀想なお前に言っといてやるよ。お前はもう死ぬ」
「減らず口を叩くのが好きなようだな、お前は」
減らず口と思うなら結構。
残り魔力数的に決めるなら今しかない。
「編集!擬似入れ替え」
俺は水夢を俺の姿にし、俺を水夢の姿にする。
もちろん、声も変えてある。
「僕とお前の姿を変えたか。それで何が出来ると?」
「おいおい、お前はもうあいつらの存在を忘れたのか?」
水夢は焦った様子で星奏達の方を見る。
水夢の能力は洗脳するではなくただ、夢を操る程度の能力である。
水夢はその操った夢で自分の姿と声を何度も何度も聞かせて精神状態をおかしくし自分に忠誠を誓う様にさせただけである。
精神状態がおかしくなっている今、俺が水夢の姿や声を完璧に模倣すればあいつらを操れる。
しかも、水夢は俺の姿と声になっているからあいつらを操る事は出来ない。
「やっと今の状況を理解したか? ていうか、心を読んでるんじゃなかったのかよ」
「少し焦ってしまったか。まぁいい。気絶するまで殴ってやる」
「やってみろよ!俺達相手にできるもんならな!」
もし、この状況で能力無効化玉を使われたらと思ってしまったがそんな心配はしなくてもいいみたいだ。
使えるならとっくに使ってる。
やばい事になってしまった。
僕は無鍬とか言うクマ野郎に完全に気を取られていたらまさかこんな状況になってしまうとは。
「雫は動物達にあの野郎に攻撃するように命令しろ。できる限り後ろを狙え」
「分かりました」
さっきまではあのクマ野郎がいたはずじゃ.......いや、今はそれを気にしてる暇は無い。
動物達の猛攻が激しすぎる。
「星奏は竜の動きをエアウォールでなるべく封じろ」
「分かりました、師匠」
見えない壁が邪魔して僕が動きたい方向に中々動けない。
しかも、動物達に気を取られるせいで肝心の高野竜の欲望を読めない。
でも、何とかする方法はある。
さっき、高野竜の攻撃をなんとか防いだ時に使った魔力玉。
まだ魔力が残ってるはずだ。
服の見た目も変わっているが本来着ていた服の感覚は分かるから取り出せるはず。
予想通り、取り出せた。
僕は魔力玉を手に取り強く握りしめる。
「全身強化!六感強化!」
そう言うと共に魔力玉はパリンと割れ体の動き安さや感じ方が少し変わってくる。
効果時間はさっきの竜の攻撃耐えるのに使ったからかそこまで長くできない。
でも、これだけの時間があれば余裕で勝てる。
僕の後ろでごちゃごちゃしてる動物達の気配が今なら鮮明に分かる。
「ウザイ」
僕は思いっきり手を後ろに振る。
するとかなりの風圧が発生し動物達は為す術なく吹き飛ばされる。
「今なら分かるぞ。お前の欲望が!」
《心を読まれたくない》
そうだろうな。
お前の考えた作戦が全部無意味になるんだもんな。
《近付かれたくない》
この状態僕とインファイト勝負となったら僕の圧勝だもんな。
「星奏! エアウォールを前に置きまくれ!できる限り強いやつをだ」
「分かりました、師匠」
僕が前に進んでいると見えない壁が沢山出来る。
僕は無意味と言わんばかりに殴り壊し前へと進む。
さぁ、お前の作戦を全て吐け!
《今、無鍬の存在を考えられたくない》
無鍬.......忘れていた。
でも、大丈夫だ。
いくら、能力を無効化すると言っても僕に触れなければ無効化出来ない。
六感がピンピンな僕に近づける訳がない。
後ろから鳥達とライオン達の気配がするな。
さらにその後ろにクマの気配がする
これに乗じて来る程度の作戦なら意味は無いぞ。
僕はまた思いっきり手を後ろに振ると鳥達とライオン達は吹き飛ぶがクマは吹き飛ばずにこちらに向かってくる。
そのクマは無鍬とかいうやつよりも大きかった。
そいつは僕の腰辺りを抱きしめ必死に押さえ付けてくる。
それと同時にもう1匹のクマの気配がこちらに向かってきている。
南根雫のところに1匹の細いクマがいるから無鍬である可能性が高い。
今、六感と欲望を読む力を無効化される訳にはいかない。
僕は魔力を使い足を強化し出来る限り高くジャンプする。
大きいクマが邪魔で思ったよりジャンプ出来なかったけどここまで来れば逃げる算段も建てれる。
とりあえず、魔法で足場を作って――
「星奏、無鍬を竜の所にまで飛ばせ!」
完全に無鍬に意識を割いてしまったせいでまた竜の欲望を読めなかった。
藤原誠華ならここまで無鍬を飛ばせる。
「分かりました、師匠。サイコキネシス」
だが、無鍬が来るよりも早く動けばいい。
魔力の消費が激しいな。
一旦退くしかない。
ていうか、この大きいクマはどんだけ僕にくっついてくるんだ。
僕は魔法で足場を作りもう1回ジャンプする。
「お前がそこからする行動は逃げるしかないのはお見通しなんだよ!星奏、竜の四方八方にエアウォールを」
「分かりました、師匠」
僕は見えない何かに頭をぶつける。
その何かは僕のジャンプした時の勢いがあったおかげで壊れたが僕のジャンプの勢いがすぐに落ちる。
そして空中にいる僕に無鍬が向かって来て僕に触れる。
これじゃ、能力が使えない。
ていうか、クマ2匹に掴まれるって重すぎる。
僕はそのまま地面に落ちる。
「星奏、俺も竜のところにまで飛ばせ!」
「師匠、分かりましたけどなんか私を使いすぎじゃないですか?」
「うるせぇ、早くしろ」
竜がすぐに僕の所にやってくる。
「竜、分かった。他のゾンビ教の連中にお前を狙うのを止めさせる。これでどうだ? 願ったり叶ったりだろ? だから僕を見逃してくれない? もう僕の魔力カラッカラでさぁ」
「.......見逃すと思うか? 俺はお前を絶対に許せない」
「あいつらを洗脳してお前を殺させようとした事は謝るよ。僕だってちょっと必死でさ」
「ていうか、そんな弱キャラみたいなセリフ本当に吐くやついるんだな」
こいつ、人が下手に出てるからって調子に乗りやがって。
全身強化の効果はまだ残ってる。
ゾンビの身体能力強化は能力ではなく体質だからな。
クマ達を剥がして逃げるぐらいわけない。
こいつらには身体能力強化はいない。
警戒すべきは藤原誠華のサイコキネシスだ誠華の視界外に行けばこいつらの足じゃ僕を追えない。
魔法で壁を建てるか。
魔力も少しは残ってるからな。
「火炎剣、音波振動」
竜が刀を抜くと炎をまとった剣がかなりのスピード震えている。
さっきもこれで僕が致命傷になったんだ。
だけど、喰らわなければ大丈夫。
「バカが!魔力と能力を同時に使ったな!それ以上は頭が持たないだろ。じゃあな。レイヤーウォール!」
僕はクマ達を引き剥がし全速力で逃げる。
身体能力強化はもう切れるからできる限り遠くに!
僕が走り始めると土の壁が目の前に僕と竜を囲む形で置かれる。
まさかこいつ、2属性の魔法と2種類の能力を同時に操れるというのか?
竜がニヤッとすると雫と細いクマが竜の隣に現れる。
そいつらが来ていたことに気付けなかったのか。
そんな事に気を取られていると全身強化の効果がきれてしまった。
「ちなみに俺がお前を許せない理由は.......」
「理由は?」
「康宗をバカにしたからだ」
「そんだけのことがよぉぉぉ!」
僕は何も考えず竜に近付き殴りかかる。
それだけの事で僕をここまでして殺すって言うのか?
僕だってやらなきゃいけなかったからここまでしたんだ。
人のしたい事をバカにするやつを!
そんな事をしても許される社会を!
ぶち壊すためによぉぉぉぉ!
「死ねぇぇぇぇぇぇ!」
「康宗をバカにしたことをそれだけの事で.......片付けんじゃねぇ!」
僕のすべてをかけた拳はサッとかわされそのまま首を切られる。
僕がこうなったのは全部周りが悪いんだ。
僕は何も悪くないんだ。