僕は何も悪くない
俺は水夢に猛攻をしかけている。
思考を読まれてるなら思考を読む暇すら与えなければいいだけの事なんだからな。
「遅い遅い。できる限り早くしてるみたいだけどそんなんじゃ僕は倒せないよ。もっと早くしなよ」
「俺はお前みたいな化け物じゃないからな。そんな早く攻撃出来るかっての」
水夢はまるで子供と遊んでいるかのように受け止める。
魔法を放ってもそこまで痛くなさそうな顔をしている。
ゾンビの性質上魔法は弱点なはずなんだがな。
「ねぇ、もう終わらせていい? 僕だって暇じゃないんだよ。お前を捕まえてあれこれしないといけないからさ」
「んなもん知らねぇよ。そっちの都合を俺に押し付けてんじゃねぇぞ。レーザー!」
水夢はワザとなのかレーザーに当たる。
「うわっ熱い、熱い」
これはフェイクだな。
このまま行ったら返り討ちにあっていた所だったろうな。
「釣れないな」
「俺は雑魚じゃないからな。そんなあからさまな演技なら見破れるぞ」
お前に心を読む程度の力がある事も分かってるしな。
それでいくらでもレーザーを避けれたはずだ。
避けずに当たって痛がるのは不自然すぎる。
「元一般人がガチガチの戦闘で活躍しちゃった件的な小説があったら間違いなく俺が主人公だな」
「活躍の場なんてもうなくなるじゃん」
よし、作戦を思いついたぞ。
考えは読まれてるだろうから、やるなら速攻。
「レーザー」
俺は水夢の目に目掛けてレーザーを放つ。
水夢は流石に目は不味いのかサッと避ける。
作戦名、無限の情報作戦開始。
「ビックサウンド」
「うっ」
水夢の耳元で鼓膜が破れるレベルの爆音を鳴らす。
俺には聞こえないように調整はしてある。
「流石にきついな。耳がキーンってする」
「視界反転」
「うえっ気持ち悪」
俺は更に猛攻をしかける。
まだまだ対処されてしまうが少しずつ焦りが出始めて来ているのが伝わってくる。
「そろそろ体力が持たないんじゃない? お前の能力に身体能力強化はないんだからそんな無茶すんなよ」
「うるせぇ、お前を殺せればなんだっていいんだ」
もう慣れてしまったのかまた徐々に押され始める。
正直、体力の限界が近い。
前までは2人がいたから何とかなったが今は俺一人だけ。
しかも、もしかしたら敵として2人が出てくるかもしれない現状。
正直やばいとしか言いようがない。
難易度ベリーヘルって感じだな。
出来ることならベリーイージーが良かった。
「僕が勇者だからな。ベリーイージーだったらお前なんて指先のちょこんで倒せちゃうな」
「ゾンビの勇者なんて聞いた事がないな。復活する場所は教会じゃなくて墓地から復活するんだろうな」
「ゾンビ差別かよ。ひっどいなぁ。差別なんかするからこんな状況になったんだろ」
……どういう事?
俺は差別をしてこの状況になった訳じゃないよな。
クソっ今は余計な考えるな。
目の前の事に集中しろ。
とにかく情報量を増やすんだ。
処理するのに時間がかかるぐらいの情報量を……
そうだ、俺の能力なら簡単に出来るじゃんか。
「心を読まれてるって事をお忘れか?」
「残念。俺は記憶力はいい方でね」
情報量を盛りに盛りまくれ。
思考にロスが生じるぐらいに。
バカだな高野竜は。
お前の能力は光と音を操る程度の能力だ。
お前の狙いは情報量の多い画像や音をを俺に無理やり見たり聞かたりする事だ。
音はともかく、光は目を閉じれば簡単に防げる。
僕は目が見えなくても六感がある。
あんまり使いこなせてないけど。
それに、音で情報量を増やすと言えば雑音を流す程度だろうがその程度なら普通に対応出来る。
戦闘訓練では結構強い方だったんだ。
負けるはずがない。
「かかってこいよ。高野竜!」
「シュールイメージ! ノイズ!」
高野竜がそう唱えた瞬間僕は目を閉じる。
砂嵐の音がうるさいがこの程度ならなんの問題もない。
正直さっきの視界反転とかを使われた方がまだ対応がめんどくさいな。
別に、僕から圧倒的な有利を取れる程じゃないけど。
視界反転はまだ視界が見える分たちが悪い。
高野竜もその辺分かってて使ってるんだろうな。
《水夢の目を開けたい》
困ってるようだな。
やっぱりそこまで考えてなかったみたいだ。
僕の欲望を読む程度の能力じゃ細かい所までは読めないけど大抵の行動は分かるぞ。
《水夢に近づいて電気ショックを当てたい》
なるほど、それで目を開けさせるつもりか。
ライトニングは多分放電魔法の事だな
あれは少し近づかなきゃ当てるのが難しいからな。
升のやつが言ってた。
とりあえず、距離をとることを考えればいい。
風魔法でこっちに来ようとしても僕の風魔法で抑えれば……待て。
あいつ確か、音で一気に距離を撮ってたよな。
だとしたら、一気に距離を詰められる。
「ソニックブロウ!」
「Gペンウインド!」
これなら抑えれるはず。
「ソニックブロウ!ソニックブロウ!ソニックブロウ!」
そんな何回も使われたら流石に風だけの力じゃ太刀打ちできない。
「射程距離内だ。ライトニング!」
「うぅっ」
僕は電気ショックにより目を開けざるを得なくなる。
目を開けるとそこにはパンツを被った泥棒が道で転けて目の前の男の人のズボンを掴んだせいで男の人は女の人の前でパンツ一丁。
それを追いかけていたであろう警察は犬に噛まれて大騒ぎ。
さらに半目の少女がこちらを見てきて。
おばぁちゃんが隕石を粉々にしていて……
ってまずい!
「そこだぁ! 火炎剣、音波振動!」
僕の首に剣が当たった感触がしたのと同時に僕は身体能力強化を発動させる。
なんとか半分の所で止めることが出来ているが思ったより魔力の減りが激しい。
ていうか、この光景を早く消せ!
「俺の勝ちだ!」
ここで終わるのか?
僕は幼稚園の頃、絵を描くのが大好きだった。
親からは本当に現実にありそうな風景だねってよく言われてた。
そんな風に褒めれるのが嬉しくって僕は一日に何時間も絵を書いていたんだ。
そんな風に過ごしていたら将来の夢が画家になる事になるのはすぐだった。
研究のために美術館に行き他の人の風景画をよく観察した。
他の人の風景画は実際にある風景を書いた絵なんだろうけど、色の使い方とかはいい勉強になった。
僕は親に無理を言い山に登ったり、海を見たり、田舎町に行ったり、大都会に行ったりしてアイデアを増やしていった。
自分の力で出来ることは全てやった。
画材や道具にいるお金は新聞配達をして稼いだお金やお年玉でやりくりし楽しく絵をかけていた。
でも、小学生に上がって僕の絵を同級生の子に見せたのがダメだったんだろうな。
「なんか、よく分かんねぇな」
「ツーピースの主人公ルチィ書いてくれよ」
「え? 僕は風景画専門だから……」
「なんだよ」
「つまんね」
僕は皆から凄いと思われると思って見せたのに何とも思われなかった。
最初はこいつらはガキだから良さが分からないんだと思って相手にしなかった。
けど、よく分からないと言われた事がずっと頭の中に残って上手く書けない日が続いた。
「僕の凄さを分からせるにはどうすればいいんだ」
僕が悩みながら小学校の掲示板を見ると絵のコンクールがあった。
ここで賞を取れば皆に凄いと思ってもらえると思った僕はすぐに応募した。
「お前、コンクールに応募したんだってな。お前の絵じゃ無理だと思うけどな」
そんな事を言ってくるやつもいたが僕は気にせず結果を待った。
僕はこれで皆から凄いと思ってもらえると思ったけれど結果はダメだった。
何も結果を残せなかった。
「やっぱり無理だったんだな。お前、才能ないんじゃね」
……僕に才能がない?
僕は誰よりも努力したんだ。
そんな才能なんかに負けたって言うのか?
いや、審査員が悪いんだ。
絵っていうのを理解していない。
これだから素人は困るんだよな。
僕は自分にそう思い込ませ、いつも通り絵を描こうと筆を手に取ろうとする。
《才能ないんじゃね》
この言葉を思い出し僕は筆をとる手が止まる。
「今日はいいや。明日やろう。コンクールが終わったばかりだしな」
それから僕は筆を手に取ることが出来なくなった。
しばらくし大学生になったある時、あのコンクールで僕と同様何も残せなかったやつの1人が今、絵で活躍してるという話を聞いた。
もしあの時、筆を手に取っていたら今の状況は変わっていたかもしれない。
そう思って悔しい思いをし枕を濡らして数時間した後、僕は思った。
あの時、僕に才能がないといったクソ野郎が悪いと。
そして、僕はある結論に辿り着いた。
他人の頑張ってる事を否定するクソ野郎共を全員ぶっ殺すしてやると。
そう考え過ごしていたある日、緊急避難速報が鳴る。
僕は先日テレビ見たゾンビ関連のニュースをその時思い出す。
きっと日本にも来たのだと気づいた僕は日本政府が作った緊急避難所に向かう。
確か、こういう時って水とかは持って行った方がいいんだよな。
僕は逃げる前になぜか冷静が出て、冷蔵庫から水や食料を取りだしバックに詰め外に出るともうそこにはゾンビ達の姿があった。
僕はその光景に唖然とし後ろからゾンビがいた事に気付かず、頭を殴られた感触と共に視界が真っ暗になる。
「君、いいね。僕と考えてる事が似てる」
僕は声が聞こえると目を覚ます。
目の前には女の子らしき子が1人いる。
「あなたは誰ですか?」
「僕? うーん……それを言う前に僕の話を聞かない? 君にとってもいい話になると思うんだ」
小学生の男の子みたいな声だなと見た目とのギャップに驚いているとそんな提案をしてくる。
「簡単に言えば、一緒に人間滅ぼそうぜ。言ったところかな」
「したいです!」
「早いな。まぁいいや。僕は作戦上教祖と言って貰おうか」
僕はその後教祖様に首を切られ才能がないと馬鹿にしてきたやつの憎しみを深く抱きゾンビになる。
あんなクソみたいな人間を滅ぼせるなら僕は――
そうだ、僕はクソみたいな人間を滅ぼしたかったんだよな。
だとしたら、こんな所で弱音を吐いちゃダメだ。
負けちゃダメだ!
「うぉぉぉぉぉぉ!」
「うるせぇぇぇぇぇ!」
僕は懐にしまっていた魔力玉の存在を知った思い出し、それを取りだしそこから魔力を取り更に首を強化する。
「クソっ」
高野竜は一旦下がり試験管に入った水を飲む。
高野竜は試験管を放り投げるとすぐに僕の所にまで来る。
「時間稼いだぞ」
「……あっ!」
僕の所に来た高野竜は突然、吹き飛ぶ。
やっと来たか。
沢山の動物達と共に南根雫と藤原誠華が来た。
「高野竜、捕まえる」
「捕まえないと」
「おいおい、マジかよ」
僕のためにお前らの友達の高野竜を潰せ。