ゾンビの世界での生き残り方
俺はこの世界が嫌いや。
どこかでは争いがあり、1部の者が裕福になり、他は貧しくなり。
人が人を殺す。
そんな世界が嫌いや。
でも、もし変えれるとするなら、俺は……どんな手も使ってやる。
友人を巻き込んででもやってやる。
俺は今人気のないビルの非常階段を登らされている。
「手を離せ、親父!」
「…」
「離せって言ってるだろ!」
俺はクソ親父に手を引っ張られながら更に上へと進む。
親父はかなり強い力で俺の手を握っている。
「…この辺でいいか」
親父は俺の手を離し一息つく。
「なんでこんな所まで走らせんだよ」
「はぁ、全く。階段の下を見てみろ」
俺は親父の言う通りに下を見る。
「…なんだあれ」
俺が見たのは皮膚が溶けて肉が腐った人。
何かに例えるとするならゾンビが1番合うと思う。
「最近あのゾンビみたいなやつが増えてきたらしいんだ。家の周りにも沢山いただろ?」
生憎だけど、俺はお前に手を引っ張られたことがウザすぎて周りなんて見えてなかった。
親父は息を整えると建物の中に入っていき、俺もそれに続く。
そして、近くにあった一室の中を確認すると俺に中に入るように促す。
俺は不服ながらも親父に従う。
「……じゃあな、竜」
親父は俺が中に入るとドアを閉めようとする。
「親父、まさか俺を置き去りにするつもりか?」
「まぁ簡単に言えばな」
「それでもあんたは――!…いや、そういうやつだったな。あんたと離れられてせいせいする」
俺はイラつきながらもあぐらをかく。
お前は俺を産んだだけのクソ野郎だったな。
お母さんじゃなくてお前が死ねば良かったのに。
「俺がここら辺にいるゾンビを走りながら引きつける」
「は?」
「もし、ゾンビがまだいて逃げれそうになかったらここで暮らしておけ。ここにも食べ物はあるだろしそれでなんとか生き延びろよ」
「は?何言って――」
「じゃあな」
親父はそう言って非常ドアを開け建物に入る。
最後に見た親父の後ろ姿は何か一つの事しか頭にないようだった。
ていうかめちゃくちゃ白髪だったな。
確かまだ40歳半ばだろ。
ニートみたいな生活をしてた癖にストレスなんてたまんのかよ。
「うーん…多いような多くないような」
親父が引き連れたゾンビの数はそんなに多くなかったようだ。
「はぁ、引きこもってた俺にとって数日ここで過ごすのは簡単だがゾンビがいる恐怖がずっと付きまとうのは嫌だな」
ていうかゾンビって言っても本当に襲ってきたりするのか?
もしかしたら、俺はゾンビのゾビーン、悪いゾンビじゃないよって言ってくるやつがいるはずだ。
そうだ、決めつけは良くない。
意外と話が通じる可能性があるはず。
そんな事を考えていると下の階から何かが入って来た音がする。
「ゾンビか?よし、ここはいっちょ人類とゾンビの架け橋的存在になるために対話を試みるか」
普通のジャージをスーツの襟を正すようにする。
これはもしかしたら運命的な出会いがどうこうして唯一のゾンビの対話者的な存在になるんだろうな。
他の人達が生きてるか全く知らないけどチヤホヤされたいなぁ。
でも、もしかしたら人類の裏切り者って感じになって追われる立場になるかもな。
それはそれでありか。
俺はささっと階段を下りる。
俺が主人公ならここで特別感溢れるキャラと出会うんだ。
俺はエントランス的な所に出ると2人の女の子がいた。
「意外と多いね、誠華ちゃん」
「これ、もしかして詰みか?雫、この戦いが終わったら私、結婚するんだ」
「死ぬ未来が確定しちゃったよ。ていうか結婚相手いないでしょ」
ゾンビ、普通に人襲ってんだな。
死亡フラグを立てた長めの金髪で青い目をした身長180cmぐらいで20歳ぐらいの人。
そして、終わったって感じの顔をしてる少し短めの薄い茶髪で赤い目をした身長145cmぐらいの10歳ぐらいの人の2人だな。
なんでこんな小さい子が戦ってんだ?
「ファイヤーボール」
「どりゃぁ!って横からもゾンビだ」
背の低い子が出した火の玉がゾンビに当たると背の高い人は当たったゾンビに向かって切りかかる。
ていうかあの背の高い人、大剣を2つも持ってるのすごいな。
重くないのか?
ていうか…あの魔法みたいなの何?
それに今思ったがなんでナチュラルに剣を持ってるんだ。
銃刀法違反はどうした。
背の低い子も片手剣みたいなの持ってるし。
しょうがない、ここはかっこよく登場するか。
俺は同等とした姿勢で前に出る。
「やぁ、お嬢さん方。手を貸しましょうか?」
「誰だお前」
「救世主……かな」
俺はキラッとかっこつけ、2人の顔を見る。
「……星奏、私達もしかしたら誘拐されるかも」
「裏社会のオークションで高値で売られるんだ」
なんでそういう判断になるんだ。
「どんな誤解してんだよ。俺は普通に助けに来てやっただけだ」
「そう言って誑かして食い物にする気でしょ」
「本当に助けに来ただけなんだけど」
「それより、お前なんで剣も持たずに町の外にいる?」
「町?ここは町の中だろ?ゾンビまみれだけど」
「ゾンビ達が来て何ヶ月経ったと思ってるんだ。とりあえず、この状況を潜り抜けるのにちょっとばかし協力してもらうぞ。ウインドウ!」
背の高い人は魔法みたいなものでゾンビ達を吹っ飛ばす。
「私の予備の剣だ。これを使え」
「分かった。っておっも」
「何言ってるんだ? これは普通ぐらいの重さだ」
「あぁそこの人、星奏ってやつは普通に力がある方だからちょっと常識と違う所があると思うけど気にしないでね」
それを最初の方に説明して欲しかったな。
俺は近づいてくるゾンビに向かって力いっぱいに剣を振る。
「お、右腕を切ったぞ」
「ゾンビは首から上を斬らないとすぐに再生してくるぞ」
背の高い人が言った通り俺が右腕を切り落としたゾンビはすぐに右腕をはやす。
ゾンビとはいえ見た目は人。
首を切る以前に傷つけるのはちょっと抵抗があるな。
俺が戸惑っていると2人は一体のゾンビの首を落とす。
「よし、一体」
「この調子だね」
なんでそんな躊躇なく首を切り落とせるんだ。
俺達は周囲のゾンビを倒し終わり地面に腰を下ろす。
ほとんどは2人が倒し俺が倒したのは1匹程度だ。
しかも変に前に出てゾンビのヘイトをかいすぎた。
まぁ、そのおかげで2人が動きやすくなったといえば俺も多少は活躍できただろう。
「ふぅ、なんとか倒しきったな」
「聞きたいことが山ほどあるんだけどちょっといい?」
「まぁ答えれる範囲でなら答えてあげる」
2次元とかでしか聞いた事がないセリフだな。
「その前に自己紹介をしてくれ。名前分からないと不便だ」
「あ、はいはい。俺は高野竜。年齢は16歳。趣味はゲームと読書」
「竜もこちら側の人間だったんだね。私は南根雫。同い歳で趣味は漫画とゲームとエトセトラ」
だから2次元とかでしか聞いたことがないセリフを言ってたのか。
てか、また言ったな。
「私は……藤川星奏。星に奏でると書いて星奏だ」
自己紹介の時に下向くとかコミュ障のやつみたいだな。
まぁ実際には見た事ないけど。
「歳は私も同い歳で趣味はゲームと読書」
2人とも同い歳に見えねぇな。
「聞きたい事は沢山あるけどまずはその髪色や目の色。青はまだハーフで説明がつくが赤い目は一体?」
赤い目はそういう病気じゃない限りないはず。
「髪や目の色はゾンビ達が出てきてから急に変わったんだよ」
星奏は髪を触りながら言う。
俺は改めて自分の髪の毛を見ると灰色になってくる事に気づく。
「俺の目って何色?」
「紫」
紫か。
まぁまぁいいじゃん。
「で、次は――」
「待った、多分聞くことが多いと思うから町に向かいながらでいいか?」
「あ、はい」
「ちょっと倒したゾンビ達を運ぶの手伝って」
2人は倒したゾンビ達の亡骸を外に停めてあった荷車に乗せる。
なんかバチが当たりそうだな。
星奏は荷車を進めながら2人の言う町があるらしい方に向かって進む。
「とりあえず現状を話してくれないか?」
「まずは日本以外の国はもう滅んだ」
めちゃくちゃ簡単に言うじゃん。
「ゾンビ達に蹂躙されたんだ」
「ゾンビって確かに再生能力とかあるけど首から上をぶっ飛ばせば倒せるんだろ?なんでそんなやつにアメリカとかが負けてるんだ?」
「弱点が見つかったのは日本にゾンビが攻め込んで来た時にわかった事だからな。ゾンビの首なら合法的に切れるとか言ったやつが首を切ったからわかったんだ。それまで為す術なくやられてた。頭に銃弾を当てようといくら体をふっ飛ばそうと再生され続けてな。核兵器を使用しようとした国もあったらしい」
なるほど、ゾンビを倒せるから一般人っぽい2人でも剣を持てているという訳か。
「で、私達が言った町というのは国が緊急で作った避難所みたいな所だ。ゾンビの侵攻が1番遅かったから準備は簡単に出来たみたいだ」
「確か東京都以外にも仙台、札幌、横浜、名古屋、広島、高松、福岡にあるんだって」
大体が都市部って感じなのに大阪がないな。
「大阪はないのか?」
「あぁ、ゾンビの侵攻が来るちょっと前ぐらいに大阪の周りに大きな結界が貼られてな。作ってはいたんだがなくなった」
「結界って?」
「ラノベとか読んだことあるでしょ?まぁ本当にその通りって感じのやつだね。ゾンビもうじゃうじゃいるらしいよ」
なるほど、なんかバカにされてる感じがしなくもないけどそんな感じか。
あいつは……ゾンビがいるなら死んでるか。
しかも、大阪には結界が貼られてるらしいし。
大阪住みのあいつならもう生きてないな。
「最後に魔法の事だな。その前にお前は冒険者になる気はあるか?」
「俺、厨二病じゃないから冒険者になるのは難しいと思う」
「あんまり厨二病とかいわないでよ。私達だってそう思ってるんだから」
じゃあ、あんま言うなよ。
「まぁ冒険者というのは私達みたいにゾンビを狩ったりクエストとかをする奴らのことだな」
「それ以外になんかあるのか?」
「まぁ農家と鍛冶師とかだな」
長期的な生活を考えての農家か。
鍛冶師は多分こいつらの剣を作ってるやつだな。
剣って素人には使うの難しいらしいけど大丈夫なのか?
さっき俺がやったのは力いっぱいに振っただけだからな。
「まぁ、冒険者かな」
「厨二病だね」
「それを言うならあんたらもだろ」
「ていうかなんでそんな事聞くんだ?」
「農家とか鍛冶師は魔法を使わないし教えなくていいかなって」
「それでも気になるから無理やり聞いてたわ」
本当になんだったんだ。
「じゃあ私達と一緒にやるか?」
「いいのか?」
「趣味とか合いそうだしね。もし、合わなくても町で竜のある事ない事を言いまくればすぐに離れられるしね」
「本当にやめてくれよ?そんな事されたら多分死ぬ」
雫は考える事がグロいな。
敵に回したらやばいタイプだ。
「まぁ、魔法は簡単に言えば魔力を消費して火とか土とか水とか風とかをイメージしたのを放出するって感じだな。組み合わせて使うこともできるらしい」
「なるほど。で、他には?」
「以上!」
星奏は元気よく話を終わらせる。
「情報量少なっ」
「本当にそれぐらいしかないからな」
「詠唱とかないのか?」
「人によるな。詠唱的な事をした方がよくイメージできるって人はする」
なるほど、さっきの火の玉とかもイメージすれば俺も出せるのか。
「魔法について教えることといえばイメージが細ければ細かいほど強くなるってぐらいだな」
クソ重要だろ、それ。
「火と土と水と風でしかイメージしたのしか出せないから注意が必要だぞ」
なんでそれだけしかダメなのかよく分からないがまぁいいとしよう。
「ていうか魔力って何?もしかして俺、異世界に迷い込んだ?」
「魔力ってのは簡単に言っただけだ。その存在はなんなのかは私達もよく分からん」
なんだそんな感じか。
「あ、これ付けとけ」
星奏はそう言ってデジタル時計の様なものを渡してくる。
星奏と雫の腕にも同じような物を付いている。
「これは魔力測定機と言ってな。付ければ今のお前の残り魔力を教えてくれる」
俺は俺の魔力量が気になったのですぐに付けてみる事にした。
「俺の魔力は6000ぐらいだ」
「私達と一緒ぐらいだね。平均よりちょっと上程度」
ここは測定器がぶっ壊れるぐらいが良かったがまぁいいか。
「魔力を消費してどうこうするっていうのならあれも教えとかないとね」
「あっそうか。魔法とは別にゾンビ能力因子ってのがあるらしいんだ。それを食べると魔法とは違った力が使えるらしい」
食べたら能力者になれる系のやつか。
「でも、その能力をもったゾンビを倒さないと落とさないらしいし。そのゾンビに会う確率も低いし今はまだそこまで食べたってやつの話は聞かないけどな」
会えたらラッキーぐらいか。
俺に主人公補正があれば多分今日会えるな。
俺はそんな事を期待しながら足を進めると星奏は足を止める。
「2人とも剣を取れ」
「え?どうした?」
「周りを見てみ」
俺達はさっきより多い数のゾンビに近づかれていた。
今日はなんか忙しいな。
言葉がおかしいところもあると思いますがこれからもよろしくお願いします。