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カムイガーディアンズ  作者: 秋山如雪
Section1. PMSC
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Chapter2. 2040年代の日本

 こうして、最初の従業員が加入したが。


 そもそも、この日本は、先の太平洋戦争以来、ずっと「平和」が続き、国民も平和を享受し、その平和が半ば永遠に続くと信じて誰も疑わなかった。


 その結果、政府は弱腰になり、自衛隊は国民から嫌われ、「軍事」を語るだけで、右翼扱いにされ、隅に追いやられる。


 他国に領土を侵犯されても「遺憾」しか言えず、最低限の「専守防衛」だけが無意味なお題目になっていた。

 国防は、アメリカという他国に任せきりになり、「戦い」が出来ない国。それが日本の本当の姿。


 かつて「侍の国」だったはずの、ある意味では「勇敢な国」日本は、いつの間にか「戦うことすら出来ない」情けない国に成り下がってしまったのだ。


 平和を願うのは尊いし、誰だって平和がいいに決まっている。


 ところが、現実には「平和」と「憲法9条」をうたうだけで、「軍備」を怠ればどうなるか。それはかつての「歴史」が証明している。


 特に、歴史を紐解くとわかるが、「軍事」を他国に委ねた国は、有事になると、大抵滅んでいる。


 加えて、そもそも長らく「政治」が腐敗していた日本だ。


 20世紀末からすでに言われていた「少子高齢化」に対し、時の政府は何の対策も打たず、それどころか、自分たちの政治基盤を支持してくれる「高齢者」ばかりを優遇した。


 結果、21世紀以降は、少子高齢化が益々進み、賃金も増えず、非正規雇用の若者が増え、その若者が、経済的理由で結婚すら選択できず、子供たちはどんどん減少。


 さらに、生産労働人口が減少したことにより、日本の人口減少が加速。


 当初の予想以上のスピードで、少子高齢化社会は進み、2040年を過ぎると、日本の総人口は1億人を割り、高齢化率は、驚異の40%近くに達していた。


 3人に1人以上が高齢者という時代である。


 そして、足りない労働人口を補うため、政府はようやく重い腰を上げた。


 移民である。


 常々、日本社会はこの「移民」を嫌ってきた。単一民族(実際には、単一ではないが、単一と見ているのが日本人)であることを誇り、また移民流入によって、仕事を奪われたり、治安が悪化することを日本人は、極度に恐れていたからだ。


 だが、どうあっても足りない労働力を確保できず、おまけに将来を担う若者の数が圧倒的に足りない。


 世論的には、移民賛成派と反対派では、反対派の方が多かったが、それでも政府は移民政策に踏み切った。


 背景には、もちろん「労働者不足」があったが、特に問題なのが「公務員」不足だった。


 国を担うべき、官僚・警察・自衛隊などなど。


 根本的に、国を支えるべき人間が足りなくなり、特に中央より「地方」が衰退した。


 その衰退によって、地方の治安が悪化。


 2040年代になると、地方都市で、連続殺人事件や、強盗事件が多発するようになった。


 それに伴い、今度は、恐れていたことが起こる。


 移民。特に東南アジアや東アジアからの移民が、「労働条件が悪い」と、暴動を起こし、2041年には、都心の新宿で、フィリピン人による爆破テロ事件が発生。


 もはや「平和」で「安全」な、世界一治安がいい日本は、幻想になりつつあったのだ。


 自衛隊や警察だけでは対処が間に合わない事態になる。


 ここへ来て、ようやく政府が、一つの重大事項を決定する。


 それまで「自衛隊」と「警察」のみ、その所持を認めていた「銃刀」を、2045年以降に新しく設立した「民間軍事会社(以下PMSC)」にのみ、認める。

 もちろん、警察への届け出は必要であり、その審査や条件も厳しいが。


 そして、この新しい「業界」に果敢にチャレンジしようと思ったのが、彼。元・陸上自衛隊、北部方面隊の第25普通科連隊に所属していた、蠣崎宗隆であった。


 演習中の不幸な「事故」により、左腕を失い、やむなく自衛隊を除隊した彼は、セカンドライフを、この「新しいビジネス」に賭けることにし、自衛隊所属中に、暇を持て余して貯金していた資金、500万円のうち、300万円を使って、会社を設立。


 同時期、同じように設立を目指していたPMSCは、実は複数あったが、わずかに速く、彼の会社が設立に成功。


 こうして、日本で初となる「PMSC」が誕生したのだった。

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