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サバイバル九州ゾンビワールド  作者: 夕凪 響
孤軍奮闘、久留米脱出
5/57

D'Yer Mak'er

 上から様子を確認してみるが、テラスに変に物が置いてあったりは見られない。

 試しに部屋にあった12Cmのフライパンを五階のテラスに投げ落としてみた。

 すると音に気づいたゾンビさんが2体とも窓ガラスを、ぶち抜いてテラスに現れる。


 一体は小柄な男性で身長は160Cmほどの痩せ形で髪は短く紺色のスーツ姿せ、首元を赤黒くテラテラとぬめるような血液で染め、目は血走り口からは絶えず涎を垂らし、皮膚は重度のチアノーゼを起こしたように紫色に染まっている。


 もう一体は女性で身長170Cm程で生前はスタイルが良かった事をうかがわせるが、もう一体と同じく皮膚は紫に染まり白目を剥き口からは絶えず涎を垂らしながら声とも音ともつかない鳴き声をあげている。


 また窓から出る時に引っかけたのか髪の毛ごと頭皮を半分程、剥き出しにして紅白帽を半分ずつかぶったようにしている。


「う゛ぁああぃぅぅうあああ」

「ひぅうううああああ」

 そしてこちらに気付いたのか届かない手を伸ばして鳴き続けている。


「もしこれでゾンビが集まってきたら・・・」


 そう心配して辺りを見渡すが距離のあるゾンビまでは音が届かないようで300メートル程離れた位置に見えるゾンビは無反応にフラフラとしている。


「大丈夫みたいだな」


 五階と六階で距離が離れているため、このままではうまく倒せそうにない。


「やりたくないけど避難梯子を試してみるか・・・?」


 この下の下の四階が自分の部屋だと思うと、このまま放置して寝ることは難しい、まだ色々と準備なども残っているのに上から現れて部屋を荒らされでもしたら事である。


 雪印のランタンハンガーの槍を握り直し、もし梯子を上ってきても一体ずつ頭を狙う。

 一体目に刺さった槍が抜けなければ腰に差したナタを使う、っと頭の中でイメージトレーニングを繰り返して足下に見える銀色の蓋を開いた。


 雷にもにた金属音をあげステンレス製の精緻な梯子が階下に落ちる。

 次はゾンビが来る、そう思って見下ろすと小柄な男性ゾンビの上に梯子が落ちたらしく姿勢を崩し倒れ込んでいる。

 身長の高い女性ゾンビがもう一体のゾンビにつまづき梯子に頭を突っ込んでいる。

 ちょうど真上のオレから見るとうなじがよく見えた、そこにランタンハンガーを突き入れる。


「燕三条万歳っ!」

 人生2体目のゾンビ撃破。


ビクンビクンと二度ほど震えると、そのまま梯子で首をくくったような体勢のまま事切れる。

 その下の男ゾンビは抜け出そうという意識があるのか上半身を千切る勢いで這い出てこようとしている。

 狭い避難梯子の穴から女ゾンビを足蹴にして引き剥がし、背筋をするような姿勢でこちらを向く男ゾンビの血走った眼下に槍を差し込む。

 

「燕三条以下略!」


 鉄の塊で眼球を潰す軽い感触とともに槍を押し込むと下水のヘドロを棒でかき混ぜるような感触を槍が指に伝える。


「ひぃぃぅぅぅっ」

 そんな鳴き声を残して五階のテラスに静寂が帰ってくる。


「残心残心・・・」


 テラスから部屋の中を確認しながらまた動き出さないかと2体のゾンビを観察するが、活動を停止しているようだ。


 とりあえず槍にこびり付いた脳漿やらを彼らの服で拭いながらポケットなどを確認する。

 男性のポケットに財布と自動車免許が入っていただけだった。


 「なまんだぶ・・・なまんだぶ・・・」


 薄い鉄板に大きな石を落としたような音を二回たてて簡易の葬儀を終わらせる。



 そのまま二部屋の探索を開始する。

 玄関周りに鍵が置いてあったが車やバイクの鍵では無いようだ。

 食料等もあるが今のところ足りているため手は着けず必要になったら回収することにした。


 探索の終わった五階は鍵をかけ部屋の鍵は回収し6階に戻り梯子を引き上げ元に戻す。


 ゾンビ戦だけ考えると梯子は出しておいた方が良いとは思うけど、よく映画とかドラマで生き残った人間同士のいざこざが一番怖いと学習しているので、痕跡は消しておこうと思ったのだ。


「今更だけど・・・」


 ひとまず部屋に戻り昼食の準備をする。


 まだ電気もガスも水道も使えているので炊飯器で米を炊いて、お隣さんから頂いた牛肉で牛丼を作った。

 某牛丼チェーンのレシピには赤ワイン等が入っているらしいが、そんなハイカラな物ではない。

 牛肉を炒めて玉ねぎを加えて砂糖、醤油、出汁の素と水を適当にぶち込んだ適当料理だ。


「生鮮品から消費していくとして、これが人生最後の牛丼にならなきゃいいな・・・」


「あ!生卵がどっかにあった!」

 五階の冷蔵庫にありました。

 もしかしたら人生最後の牛丼になるかもしれないと思うと妥協は出来ない。

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