Morning Mr. Magpie
急いで周りを見渡すと近くにいた女性が小さな悲鳴を漏らす。
ドアを叩く音だけが響き女性は後ずさりし逃げて行く。
イチゴは俺達の部屋に入ると自分の装備と俺の武器を持って出てくる。
その間も扉を叩く音は続き中からは声とも音ともつかない不気味な鳴き声だけが響いている。
イチゴからランタンハンガーとステンレス刀、ナタを受け取り装備する。
扉の蝶番が一つ弾けドアが斜めに傾ぎ血にまみれた右手が飛び出す。。
ドアの前から下がりランタンハンガーを構え隙間を見やると中からゾンビが顔と右手を突き出しさらに激しく鳴き声を上げ暴れる。
ドアは耳障りな音をたてて外れ、中からゾンビが2体姿を現す。
目蓋をひきつらせ、その奥の眼球は白濁し口からは不気味な鳴き声を上げ黄色のパーカーを羽織った20代前半ほどの男性ゾンビが1体。
その後ろには首元を赤黒く染めた小学生男子、ぶかぶかの上着にジーンズを履いたゾンビが1体。
見える限りはこの2体だけのようだ。
手前にいるパーカーゾンビの鼻を目掛けてランタンハンガーを突き入れる。
近くの部屋のドアが開き若い女性が部屋から出てくる。
ランタンハンガーで脳漿をかき混ぜながら叫ぶ。
「おい!部屋に戻れっ!」
彼女はまだ異変に気付いていないようでドアの奥を振り向き何事かドアの向こうに話しかけようとする。
ランタンハンガーで空中に赤黒い糸をひきながら俺は大声で叫ぶ。
「ゾンビが出たぞっ!気をつけろ!」
小学生ゾンビは彼女に振り向くと飛びかかり押し倒すように顔や首元に噛みつき皮を破り血をすする。
「いぃぉおいう゛ぁぃぅう」
床に赤黒い血溜まりを広げ小学生ゾンビはさらに奥に向かい四足獣のように走り出していく。
イチゴが狭い廊下で俺越しに弓を放つがゾンビの手前のドアが開き矢はドアに浅く突き刺さる。
悲鳴とともにドアは閉じ、イチゴが矢をもう一つ射かけるが小学生ゾンビは遠くに走って行く。
小学生ゾンビが走り去った方向ではすでに叫び声が響き危険な兆候が伺える。
彼女が倒れたドアの中からは悲鳴と絶叫が聞こえ中から複数人の手が伸び彼女を引きずり部屋に入れる。
その間にも食事や風呂から戻ってきた人達が廊下に集まり始めている。
後ろから駆け足で近付く複数人の足音が聞こえ振り向くと壇上で話していたオリベさんが複数人の武器を持った人達と走ってきた。
「状況は?」
簡潔な問いをこちらに投げかけながら彼女は後ろから付いて来ていた者達に指示を出し先に3名のアーミーグリーンの服をまとった保安班らしい人間を進ませる。
「隣室からゾンビ2体が出たため1体を倒したが、その間に小学生男子っぽいゾンビに逃げられた、向こうの方だ」
それを聞き彼女は「わかった」と言い駆け出そうとするが、それを呼び止める。
「それと感染したと思われる人間をその部屋の人間が引き入れちまった」
床の血溜まりを指差し付け加えると、その部屋の中からは絶叫が聞こえ始めていた。
「くそっ!」
彼女達はドアを蹴破ると部屋に突入していった。
激しい物音や銃声が続き静寂を取り戻す。
オリベさんは部屋から出てくるとトランシーバーを取り出しどこかに連絡をした、その後は周りの人間に指示を出し始める。
「事態が収集するまでは各自部屋から出ないようにしてください、また寝台には歩哨を立たせます!速やかに部屋に戻ってください!」
彼女が言い終わると放送前の電子音が鳴り船内放送が流れ始める。
「私は船長のフジワラです船内でゾンビの出現が確認されました、速やかに各自、居室に戻り安全が確認出来るまで外に出ないようにしてください。
異変を感じた場合は各居室備え付けの通話機器を使用し連絡をしてください。 これはお願いではありません命令です。
繰り返します・・・」
「おい!君達は保安か探索の人間か?」
オリベさんが尋ねてくる。
「はい、そうです」「はい!」
「よし、ついて来てくれ」
そう言うとオリベさんは小学生ゾンビが走り去った方へ武器を構え小走りに駆け出す。
その後ろに1人の隊員が続き、部屋の中には2人の隊員が残り確認を続けるようだ。
俺達も武器を構え後続に並び廊下を走り出す。
船首側の端に差し掛かり曲がり角を曲がると新しい血溜まりが床に見えオリベさんが速度を落とし手を上げて進みを制する。
トランシーバーを使い確認すると残った2人の隊員に部屋の確認を指示して俺達3人で走り出す。
船首側から折り返し船尾に向けて走り出すと中央付近の部屋ので部屋番号を確認しながら進む。
目的の部屋番号らしいドアをノックするとすぐにアーミーグリーンを纏った隊員が中からドアを開く中には、すでに動かなくなった小学生ゾンビいた。
ベッドには右腕に赤い染みをタオルに作り、紐で縛られ寝かせられた30代男性がいた。
オリベさんが口を開く。
「噛まれてどのくらい経った?」
「3分ほどです」
「そうか、分かった」
彼女はこちらに向き話しかけてきた。
「着いて来てもらってすまないが詳しく状況を説明してくれ」
そう言いながら彼女はメモ帳とペンを取り出す。
「まずは名前と今日決めた所属、それからどこの避難所にいたかから頼む」
「ヤマダマサシです、探索12班所属、ハウステンボスからきました」
「キシダイチゴです!探索12班ハウステンボスからきました!」
「探索所属か続けてくれ」
「えーっと風呂から戻ってきたら隣の部屋から物音がしてですね、気になったんでノックしたんです」
「うん、そしたらすごい勢いで中からドアを叩き出して」
「そうそうゾンビの鳴き声が聞こえてヤバいと思ったらドアが壊れて中からゾンビが出てきました」
「それで急いで部屋から武器取ってきて」
「武器はその鉄の杭か?」
「そうです雪印製のランタンハンガーです」
「なるほど続けてくれ」
「周りにゾンビが出たと叫びながら1体は倒したんですけど運悪く近くの部屋から女性が出てきて」
「うんうん」
「そこの小学生ゾンビに噛まれて」
「弓で狙ったんですけど手前のドアが開いて矢が当たらなくて」
イチゴがしょぼんと言う。
「そのあたりでオリベさんが到着しました」
「なるほどだいたいの状況は分かった」
ピクリと男性が動き出す。
「いぃぃいぃぇう゛ぉいぅう」
隊員は40センチはあるナイフを腰から抜くとゾンビの眼窩に向けて振り下ろし、鈍い音と赤黒い粘液を飛び散らせて死者を葬る。
「協力感謝する取り敢えず部屋に戻って貰って構わない、部屋番号は何番だ?」
「621号室です」
「また電話で連絡するかもしれないが、その時はよろしく頼む」
オリベさんに別れを告げ俺達は部屋に戻った。
本当に本当に蛇足ですが・・・
実はゾンビの鳴き声は・・・
有名人の名前や洋楽アーティストの名前の母音だけを抜き出してそれっぽくしてます・・・
全くの完全無欠の蛇足でした。




