Optimistic
港の近くに船がきて外縁部に横付けしようとしているのが建物の隙間から見えた。
探索班の人達も荷物を抱え順番に並び船を待っている。
タケハラさんとカワカミさんが忙しく立ち回り乗り遅れた者や積み忘れがないかを確認しているようだ。
CB223まで近寄り押そうとするとタケハラさんから声をかけられる。
「よう、探したぜ!」
「タケハラさんお疲れさまです」
「お疲れさまでーす!」
「なんだ、ばたばたして言えなかったが、うちの馬鹿共がすまなかったな」
「なにかありましたか?」
そう言ってイチゴと顔を見合わせる。
「ほらあれだ、クレーンにぶら下げられたって聞いたが?」
「あー!あの8人!」「ありましたね・・・」
「そいつの事だ、俺がもっとしっかりやれてたら良かったんだが」
そう言ってタケハラさんは頭を下げる。
「いやタケハラさんは何も悪い事はしてないじゃないですか」
「まぁそう言ってくれるな侘びと言っちゃ何だがこれをやる」
そう言って左手に持っていた布に巻かれた棒をイチゴに差し出す。
イチゴは受け取りながら尋ねる。
「これはなんですか?ワットイズディース?」
・・・イチゴよ、タケハラさんが厳つい顔を真面目にしているのが耐えられなくなったのはわかるがワットイズディースはやめてくれ。
「開けてみてくればわかる」
イチゴが釣竿を直す布袋のようになっている袋の紐をほどき取り出すと柄が見え布袋を下げると一本の鞘に入った刀が出てくる。
「ステンレス刀だ昭和の初期1916年頃のやつだ、新刀や古刀、現代刀やらの鉄を使ったやつは手入れが悪いとすぐ使い物にならなくなっちまうが、ステンレス刀なら多少無茶な扱いをしても耐えてくれるだろう」
「いや貰えませんよ!」「刀って高いんじゃないの!?」
「安心しろ、俺はまだ3本は持ってるから」
「いやそう言う話しじゃ・・・」
「まぁ聞け・・・」
「俺は消防に勤めててな、結婚して嫁さんも子供もいたんだが、騒ぎが起き始めた時は家にはいなくて仕事してたんだよ」
「・・・」
「街は酷い騒ぎで蜂の巣突っつくくらいじゃこんな騒ぎはおきねぇーなと思いながらも、こんな時の為に毎日毎日、嫌になるくらい自分の身体をいじめ抜いて、人を救うために最高の筋肉をのっけたんだって、そう思ってたんだ・・・」
「街に上がる火は消した、大事になりそうな人は逃がした、だがいよいよ不味いと思って家に帰ったんだが、まぁなんだ、想像してくれ・・・」
しばらくタケハラさんはうつむき顔を手でこすりつけ話しを続けた。
「なんだったかな、あぁそうだ俺の趣味は刀でな昔は居合いとかも習ってたんで、そいつを集めてたんだが、それは使わないから貰ってくれ」
「俺は守れなかったがお前の話しを聞いて、格好いいなって思ったよ、それだけだ」
「俺はここに残るつもりだし、馬鹿な事やった奴らも残すつもりだ、お前ら元気でな」
そう言うとタケハラさんはニコッと笑い右手を差し出した。
その手を強く握りしめ「また会いたいです」と叶うはずがない約束をして別れる。
イチゴはグスグスと鼻を鳴らしてタケハラさんに抱きついていた。
少しの間ぼーっとしていてシブヤさん達が「そろそろ行かないと乗り遅れるぞ」と声をかけてくれCB223を押して船に乗り込む。
バイクが倒れないようにベルトで船に固定しているとバンバンやCRF、KLX等何台かのバイクが並んでいた。
最後にカワカミさんがタケハラさんと二言三言の話しをして船に乗り込んでくる。
港には30人くらいの人が残っていて「元気でなー!」とか「頑張れよー!」とかこちらに向けて叫んでいた。
その中にタケハラさんを見つけてイチゴと2人で大きく腕を振る。
タケハラさんはニコッと笑ってこちらに手を振り返す。
波に揺れながら、少しずつ少しずつ船はハウステンボスを離れ、船首を海へと向けた。
オレ達は船尾に歩きながらハウステンボスが見えなくなるまで、そのまま腕を振っていた。
イチゴはオレの服に顔をうずめてグスグス鼻を鳴らしていたがいつの間にかポロポロと涙をこぼして泣いていた。
ゆっくりと頭を撫でているとイチゴは刀をオレに押しやり「マサシが使ってね」と言ってくる。
俺はイチゴから刀を受け取り鞘から引き抜くと、曇り空からも陽の光を反射し眩くずっしりとした重みを感じた。




