表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サバイバル九州ゾンビワールド  作者: 夕凪 響
闘諍堅固、佐世保衰退
38/57

I Was Born to Love You

 ハウステンボスへ戻ってくると入国口付近は車でバリケードが作られバイクで戻るのが難しい状態だった。


 「帰ってくるなって事かな・・・?」


 「うーんどうかな・・・?」


 2人で話してるとタニグチさんが車の陰から出てくる。

 イチゴがゾンビかと思いソードオフショットガンを構えると慌てて「僕ですよ僕!」っと言い立てる。


 イチゴがショットガンをホルスターに戻すと大きく息をつき彼は話し始める。


 「いやーお帰りなさい、昨夜は大変でしたね」


 そう言いながら彼は車の隙間を器用に抜けて進んで くる。


 「あれからどうなったんですか?」


 「詳しくはハウステンボスの中に入ってからにしましょう」

 そう言うと彼は指を指す。

 「この車のバリケード迷路になってるんですけどあそこからならすぐ入れます、僕は先に戻って報告してきますから」

 彼はそそくさとハウステンボスへ入って行く。


 バイクで少し迂回すると一本道のようになっていてすぐにフラワーロードまで進めた。

 橋の所にはカワカミさんとシブヤさんが迎えに来てくれていて「おかえり」「戻りました」と軽く挨拶をかわす。


 「君達がゾンビを引き連れて行ってくれて助かったよ、あれから何があったか話しもある、ステーキハウスで朝食を取りながら話そうか」


 そう促されバイクをオレ達の家に置き何があるかわからないので弓と矢筒や銃の弾等は装備してステーキハウスへ向かう。


 ステーキハウスではナカムラさんがカウンターの向こうで朝食の受け渡しをしていた。

 「昨夜は大変だったみたいですね!」


 「ええ、とっても」

 ナカムラさんはなぜか目を輝かせて「羨ましいわー」などとイチゴに話しかけている。


 「あ!すみません朝食です、どうぞ」

 しばらく話すとイチゴを解放し朝食を渡してくれた。


 辺りを見渡すとカワカミさんとシブヤさんがソファー席から手を挙げ呼んでいる。


 席につきカワカミさんとシブヤさんと向かい合う。

 カワカミさんが口を開く。

 「こちらで、あれから何があったかを話すから、とりあえず食べながら聞いてくれ」


 「はい」「はーい!」「いただきます」


 「キシダさんがクレーンから落ちて奴らが、クレーンを戻す隙をついてクロスボウでミヤザキさんを捕まえてた奴の腕を打って動けなくなった所になだれ込んで8人全員捕まえた」


 「ああ、大変だったんだぜ、主に切れたアサコがあいつ等を蹴り飛ばすのを止めさせるのがな」


 「問題はあいつ等の扱いで縛って見張りを立たせてはいるがタケハラさんと相談にはなるが意見があれば聞いておきたい」


 ん?死刑は行き過ぎなのか・・・?

 「はい、クレーンに吊りたいです!」


 「わ、わかった一応相談する場で伝えてはみよう・・・」


 「それから、ゾンビ達がフラワーロードから離れて行くのを確認し僅かに残ったゾンビを処理して駐車場の車を使ってバリケードを築いてゾンビが戻って来ないかを様子見していたんだが・・・」


 「ユウコちゃんが起きた」


 「そうスズキさんが″普通に″目覚めた、ゾンビ化する事も無くだ」


 「それは良かったです」


 「君達はわかっていたんだな・・・事が終わったときシブヤに聞いたよ」


 「すみません言っても信じて貰えないと思ったので・・・」


 「ああ、とてもじゃないが信じれ無いと思うよ、スズキさんが普通に起き上がった今も信じれない」


 「・・・」


 「だがキシダさんもゾンビに変わる気配は無い、本当なんだろうが、なんとも扱いに困る話しだ」


 「かと言ってスズキさんがゾンビ化する事なく目覚め、キシダさんがゾンビ化する事もない事実は班員やアムステルダムシティにもすぐさま伝わるだろう」


 「・・・」


 「幸いと言って言いのかあれだが、おかしな事を言いだす連中は現在こちらが縛って管理している」


 「・・・」


 「つまり僕達も難しい事はわからない君達にもいつも通り振る舞ってほしい」


 「はい」「はーい!」「ごちそうさまでした」


 「とりあえず明日あたり探索に行こうと思う今日はゆっくりと休んでくれ」


 「おう、明日は水と食料を取りに行く予定だ、今日のうちにしっかり休んでくれよ」


 そう言うとカワカミさんとシブヤさんは店外へと出て行った。


 「とりあえず一晩バイクで走り回って疲れたしお風呂使わせて貰って休むか」


 「そうだね、夜のバイクに手袋無しだったから手が霜焼けになりそー!」


 「あーそれでオレのポケットに手入れてきてたのか」


 「うん、掴まるのにちょうど良い位置だから」


 そんな話しをしながらワッセナーでお風呂を貰いオレ達の家に帰ってきた。

 一晩走ってカラッカラになったCB223のタンクに携行缶からガソリンを移し、バイクのいたる所に付いたゾンビの腐肉を拭き取る。


 イチゴもソードオフショットガンの銃身を外し棒に布切れを付けて掃除している。


 その他にもナタを研いだりランタンハンガーを拭いて油を塗ったりと整備を続けていると昼近くなる。


 「昼ご飯は抜きのままなんだろうな?」


 「うん、そうだと思うよ」


 「お腹空いたなー」


 「すいたー!徹夜明けだから余計にお腹空くね!」


 「うーん乾燥米はまだあるし、コソッと食べるか」


 「わーい」

 そう言うとイチゴはその場でよくわからない踊りを踊り始めた、よほど嬉しかったんだろうか・・・


 「ちょっと魚釣れないか竿振ってくる!

 そう言うとイチゴは部屋に置いていたバケツと竿を片手に目の前の運河に竿を振り始める。


 オレは持ち込みのバーナーを使ってお湯を沸かす。

 雪印のCHIには雪印のOD缶が良く似合うと思うが、いかんせんガス缶の補給を考えてCB缶用の三脚付きのアダプターを使う。

 ケトルはアルミ製のテフロン加工されたトレッキングモデルで容量が少ない。

 ギリギリ2人分のお湯を沸かせる量だ。


 ガス缶を使ってお湯を沸かす独特な音を聞きながらケトルの注ぎ口から柔らかな湯気が上がり始める。

 カタカタとケトルの蓋が暴れ始めるとバーナーを止めて、乾燥米の袋にお湯を注ぎタオルで保温する。


 米だけだと淋しいかと思いストックの缶詰めを見ているとイチゴが「釣れた!釣れたよ!」っと言いながら戻ってきた。


 「赤っぽくて、ちょっと痛そうな魚だけどこれなんだろ?」


 「メバルだ根魚もいるんだな」

 そう言いながら針から魚を外しワームの位置を直してイチゴに返す。


 「食べれる?」


 「煮付けが美味いけど刺身とかでもいけるらしい、このサイズなら味噌汁かな?」


 「よし!また釣ってくる!」

 そう言いながらイチゴはまた運河に向かって竿を振り始めた。


 メバルを手早く絞めて捌く、ウロコと内臓を取ってヒレ先だけ切り落とし、ぶつ切りにして小さい鍋型のクッカーに水を張り湯を沸かす、そこにぶつ切りのメバルを突っ込んで煮えたら火を止めてインスタント味噌汁の元を2人分入れてよく溶かす。

 冬場の脂がのったメバルの身がプリプリしてとても美味そうだ。


 釣り場で作る味噌汁に釣ったその場で捌いた切り身を入れるときのインスタント味噌汁はワカメかネギに限る、異論は認めない。


 まだ釣りに熱中しているイチゴを呼んで昼飯にする。


 クッカーの蓋やシェラカップに取り分け、イチゴに箸を、オレは先割れスプーンを持って食べ始める。

 「いただきまーす」


 乾燥米はいつも通りの味だか、冬場は温かいだけでご馳走だ、味噌汁の滋味溢れる味わいで米を掻き込み、時折メバルの身をつつく。

 真っ白な身に味噌汁の上に浮く魚の脂、やはり魚は寒い時期が美味い。


 隣りを見るとイチゴもハフハフ言いながら食べている。


 目が合うと「美味しいね」と笑い合う。


 ゆっくりした時間にイチゴがいる幸せを感じながら食事を終える。


 片付けをしてソファーに座るとうつらうつらとしてしまう、隣を見るとイチゴはすでに夢の世界にいってしまったようでこちらに頭を預けて静かな寝息だけが聞こえてくる。


 このまま寝てしまうと風邪をひく、医療や薬などに手が届かなくなりつつある今の現実では死活問題だ。


 イチゴの肩を揺すり起こして2階のベッドに連れて行く。

 2人同じベッドに潜り込むとイチゴは肉の薄い身体を擦り付けて抱きつくと「暖かい」と言ってまた眠った。

 オレもイチゴを抱き寄せて、その温もりを感じながら少しずつ眠りに落ちていく。



 夜半、目が覚めるとイチゴがこちらを上目遣いに見ていた。


 「起きてた?」


 「今、目が覚めた」


 「そっか」

 そう言いながらイチゴの唇にゆっくりと近付き唇を合わせる。

 イチゴは目を閉じ受け入れる。


 顔を離すと身体を擦り付け両手でしっかりと抱きついてきて「えへへ」と笑っていた。


 イチゴの身体の下に腕を通し強く抱き寄せるが「重くない?」なんて野暮な事を聞いてきた。


 つまらない事を言う唇を塞ぎ唇を舌で押し拡げ歯を軽くノックし舌を絡ませる。


 頭を撫でていた手が背中にいき腰に触れさらに下にいく。


 絡ませ合っていた舌をほどきオレの耳元に口を寄せてイチゴは囁くように言った。

 「ねぇ大好きだよ」


 そう言われて留まれる男はいないだろう。

 イチゴと身体を重ね合わせ二人溶け合うような時間を過ごす。



 柔らかな毛布とイチゴの体温、重なる寝息を聞きながら幸せの輪郭をなぞり目蓋を閉じ温かな闇に浮かんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ