Made In Heaven
シブヤさんに渡された釣り道具を使って運河に竿を振る。
ジグヘッドと言う重り付きの釣り針に毒々しい真っ黄色のワームと呼ばれる疑似餌を付けて運河に向かって、そっと投げ込む。
運河の水は透き通っており、魚影が目視で確認できる。
いたる所に30Cmを超えた個体が泳いでいるのが見えるがなかなか食い付かない。
隣でそんな様を眺めていたイチゴが「釣りって難しい?」っと言ってきたので竿を渡してスピニングリールの使い方と竿の振り方、キャストを教えると一発で食いついてきた。
「わーなんかビクビクして変な感じ、なにこれ?なにこれ?」
「ゆっくり竿を立てて聞くんだ!」
「聞く?」
「針が魚に食い込むようにあわせるんだよ!こうグググッと!」
「こうっ?」
「そうそう!そしてリールを巻いて!巻いて!」
そんな事を言ってると魚が近付いてくる、竿を上に持ち上げレンガ造りの道へぶり揚げる。
「やったー!とったどぉー」
ただ巻きの、底ずる引きで釣れるとは解せぬ、そう思いながら魚を見ると40Cmはありそうだった。
「こいつはチヌ、黒鯛だな」
「え?鯛?」
「いや黒鯛」
「鯛なの?」
「いや黒鯛」
「鯛なの?鯛じゃないの?」
「鯛じゃなくて黒鯛って言う魚で、刺身も美味しいし焼いても美味しい」
「ふんふん?刺身食べたいね!」
イチゴがそう言うのでナカムラさんの所に醤油を貰いに行かせ手持ちのオピネルナイフを使ってチヌを捌く。
ヒレを切りナイフの背を使って鱗を落とす。
魚の肛門から胸ビレの方にナイフを入れて内臓を掻き出しエラの近くに切れ込みを入れる。
そのままナイフの背に左手をのせ叩くように骨を断つ。
尾ビレから背ビレにかけて切れ込みを入れ尾ビレから骨と身の間にナイフを入れて、擦り付けるように身を骨から切り離す。
骨から切り離した身の皮と身の間に慎重にナイフの刃を潜り込ませまな板替わりの綺麗な板に皮を切らないようにナイフの角度を調整して押し付ける。
左手で皮を上下左右に少しずつ動かし皮から身を削ぎ落とす。
あとは腹骨を処理して血合いの線から切り分ければサクの完成だ。
切り分ければ刺身になる。
皮は湯引きしてポン酢に生姜か小ネギで骨は肉がこびりついたまま頭と湯がいてあら汁にするか。
ふと振り向くとイチゴとナカムラさんがこちらを見ている。
「魚捌けるんですね!」
「マサシかっこいいじゃん!」
「魚釣る男はだいたい捌けると思うよ?」
「マサシは釣ってないけどね!」
そう言いながら刺身と湯引き、具が中骨と頭だけのあら汁を作る。
ポン酢はないので刺身の横に細引きにして飾りみたいに置いておく。
「贅沢なおやつですねー」
そう言いながらナカムラさんも勢い良く刺身を食べている。
「マサシ!時間があったら魚を釣ろう!」
イチゴはあら汁を片手に刺身をつまみ大満足だ。
そうこうしているとナカムラさんは夕食の準備があると言って戻っていった。
竿やリール等、潮の付いたものを拭き取り。
調理道具などをイチゴと分担して片付ける。
シブヤさんが「魚釣れたって?」っと話しながら顔を出す。
「あー刺身が1サク分残ってますけど持って行きますか?ここで食べるより男子部屋にお酒あるんでしょう」
「おー気が利くね!」
「切り分けて皿にのせるんで座って待ってて下さいね」
「おぅ!ありがとな、あとカワハラさんから夜間の警備増員の話しがあるから鐘が1回だけ鳴ったら男子寮の隣にある小劇場見たいな建物に集合だってよ」
「わかりましたー、はいチヌの刺身です」
「おお、ありがとな遅れんなよ」
そう言いながらシブヤさんは戻っていった。
シブヤさんは今日何回来たのだろうか?暇なのかな?副班長なのに。
そう思いながら、また調理道具を片付けてイチゴと一緒にソファーに沈み込むと毛布にくるまりお茶を飲んだ。
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広場のクレープ小屋の中、タケハラとカワカミが向き合い椅子に座り話している。
「未確認だか、1名噛まれた者が班内に潜伏している可能性があります」
そうカワカミは話し始める。
「分かった、だがどうする」
「こちらで2名一組を組ませゾンビ化しても対応出来るように言っています」
腕を組みながらタケハラは難しそうに言った。
「発表はどうする、発表しようがしまいが人の口に戸はたてられん」
「分かっています」
「そして外のゾンビの群れ、アレが長期化すれば物質が不足し不満が募るだろう」
「どちらも様子を見るしかない、船の使用はどうですか?」
眉を寄せて大きく息を吐きながらタケハラは唾を飲み込み話す。
「船を扱える者に話しを聞いてみたが話しにならねぇ」
「どう言うことですか?」
「燃料だ」
「不足しているのですか?」
「圧倒的に足りねぇ、計算が面倒である程度で試算したがリッター500メートル進めば良いみたいだ、漁船や小さい船ならまだ距離は伸びるみたいだが物資の調達となると、ある程度の船が必要になる」
「・・・」
カワカミは黙って話しを聞く。
「船は出せて2回か3回それも距離による、確実に燃料が補給出来ると分かる場所に行くときか、緊急時に温存する必要がある」
「なるほど生活に必要な燃料はどのくらい持ちそうか分かりますか?」
「2週間だな、燃料も食料もある程度切り詰めれば1ヶ月は持つが燃料より水が足りていない、雨が降ればある程度生活用水は賄えるが飲用の水が足りていない」
「一週間、様子をみましょう」
「ああ一週間様子を見て状況が改善されなければ探索班に死んでくれと言わなければいけなくなるだろう・・・」
「・・・」
カワカミは押し黙る。
タケハラは低い声音を、なお低くして話す。
「アムステルダムシティ側の避難者の心もだいぶ擦り切れてきている、探索班には昼の弁当を出しているがアムステルダムシティに昼食は避難当時からない、水の配給は1日の必要量で配り、風呂も3日に一度と言っても、ほとんど入れない状態だ、服の洗濯もほとんど出来ない状態で心が腐っていっている」
「・・・」
「もちろんそんな者ばかりではなくお前の従妹のように働く者もいるが、それは少数だ“死んでないだけの人間“が大多数を占め始めている、この状態で物資が底をつくと・・・」
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「夜の見回り番ってどんな感じなのかな?」そうイチゴが話し出す。
「ライトとかも電池使うだろうしずっと歩きっぱなしとかはないだろ」
「なら外の見張りしながらかな?」
「うーん」
「夜、絶対寒いよね?」
「ホッカイロたくさんコンビニから持ってきてるよ」
「うん知ってる!マサシ優しいから!ありがと!ありがと!」
そう言いながら俺の身体に顔を押し当ててグリグリと擦り付ける。
「そんなしなくてもあげるって!」
こそばゆくなって押しのけながら言う。
そのあともソファーに座りゾンビに噛まれた班員がいるかもしれない事や外のゾンビの事を考えながらイチゴと話していると鐘が一回鳴った。
この別視点を残すかどうかがすごくすごーく悩んでます。
蛇足でした。




