Black Dog
玄関からでてカリカリと音のする斜向かいのドアの隣、正面のドアをノックしてみるが反応は無し。
ただカリカリ音が激しくなる、鍵がかかってないと急にやられるかもしれないと恐怖に慄きつつ確認を進める。
ノブをひねると何の抵抗もなくドアが開く、どうやら鍵はがかっていなかったようだ。
ゆっくりとドアの隙間から身体を滑り込ませる、ゾンビも人間もいないらしく静かな部屋だ、キッチンには缶詰めが何缶かとスパムがある。
「うまくいったら回収だな」
部屋の中を物色すると良い感じの洗濯紐を見つけた。
すねくらいの高さに紐を張ってつんのめるか転倒したところにスクリュー・ドライバーしたら片付きそうだな。
ゾンビ部屋への侵入路をテラスからとして、テラスの柱を利用して紐を張る。
「よし準備よし。」
一応、紐でゾンビさんが転けてくれなかった時の為に脱出経路は動きやすいように片付けておく。
またロフト用の梯子で簡易のバリケードも作れるようにしておく。
部屋にあった小さなヤカンを隣のテラスの窓に投げつけるとガラスが割れて、直ぐにゾンビになった男性が出てきた。
「う゛ぁぁあぁぁっぁぁっっう゛ぁ」
血走った目に紫色の皮膚、右手側が赤黒く染まり、声とも音とも言えない不気味な発声とともに両手を振り乱している。
そのままテラスとテラスの間の避難壁にぶつかり、頭だけが避難壁から突き出した。
発泡スチロールを留めている外枠に引っかかっているらしい。
これはチャンスと彼のつむじに目掛けてスクリュー・ドライバーを突き立てた。
「燕三条万歳!」
一発で頭蓋骨を貫き通し槍の穂先にあたる部分は下顎を突き破って暗い色の血や脳漿とともに飛び出していた。
しばらくビクンビクンと手が反り返り指を震わせていたが、すぐに動かなくなる、無感情にその様を眺めていた。
「オレってサイコパスなのかな・・・」
緑色のロンTに濃い色のデニム姿で中肉中背の男性ゾンビさん一体撃破だ。
とりあえず洗濯紐を使って引きずり出し彼の服で槍を拭い、そのまま階下に放り捨てる。
薄い鉄板に大きな石を落としたような音とともに道行きは開けた。
「なまんだぶ・・・なまんだぶ・・・」
一体ずつならそこまで危なくは無さそうだな、ただ負傷すると行動出来なくなりそうだから慎重に場所を整えながら一体ずつが理想的かな。
そのまま部屋の探索と物品の回収を進める。
牛肉が冷蔵庫にあるな。後はジャガイモに玉ねぎも。
缶詰めとスパムに米が合わせて15Kg他はガス缶はCB缶が6缶か。キャンパーでもなければガス缶はOD缶じゃなくて確かにCB缶か。
その他フルフェイスのヘルメットと半ヘルが二つずつ、ガードが入った手袋。
バイクや車の鍵は無し。
「もしかしてさっき落としたヤツのズボンか・・・確認するべきだったか・・・」
物品の回収を終えて自室に戻る。
避難所を明日中に確認して自衛隊の避難誘導にのっかれないと、このゾンビパラダイスでサバイバルになるわけか。
近くにある学校は小学校が2つか3つか。
テラスから見る限り車での移動は事故車や放置車両のせいで難しそうだな。
「となるとバイクか・・・自転車か」
そう言いながら二部屋分のテラスから外を見ていると遠くの大通りを市内の方から車が走ってくるのが見える。
乗用車とは思えない大きさのランドクルーザーが歩道の段差等物ともせずに走っていたが車が何台か玉突きになっている場所にさしかかり道を変えようと停止するとフラフラとゾンビが何体も現れ取り囲んでいく。
バックでゾンビを弾き飛ばしながら方向転換しようとするがゾンビの身体がタイヤの下に詰まりスタックしてしまう。
そのうちゾンビがゾンビの階段になりランドクルーザーの窓にゾンビが張り付き運転手と搭乗者も引きずり出される。
「ぃゃだぁぁぁだれかぁぁぁっ!」
「いやっいやぁぁいやぁぁぁぁ!!」
四十代くらいの男女に中学生くらいの女の子が二人いた。
始めに引きずり出された男性はすぐに静かになったかと思うと同乗者の女の子に群がるゾンビに加わった。
「ぁぁぁおとうさぁぁんっ!」
悲痛な叫びが消えるとともに赤黒い染みは彼等の仲間になる。
「車はだめだな・・・」
市内方向から来たって事は市外の小学校を目指すか。
雪印さんのランタンハンガーってほぼほぼ鉄槍ですよね。
あれをゾンビの頭に突き刺して「燕三条万歳!」って言わせたいだけで書き始めたアホな話です。
なんかすみません。