I need your loving tonight
カワカミさんがトラックの近くで立ち止まり話し始める。
「お待たせ君達は初対面だよね?」
「はい、はじめましてヤマダマサシと言います、よろしくお願いします」
「キシダイチゴですよろしくお願いします」
「タニグチマサルですタンクローリーがあったときに運転する予定です、いつもは盾隊やってます」
「スズキユウコです、弓隊です」
「よし挨拶もすんだし今日の予定は近くのスーパーだったが予定を変更する」
カワカミさんがそう言うと周りに緊張が走る。
「東に2キロほど行った所にあるガソリンスタンドとガス販売店が併設された場所が優先的目標になる」
「優先的目標って事はまだなんかあるんですよね?」
そうシブヤさんが尋ねるとカワカミさんは頷いて続けた。
「更にその6キロ先にある川棚のスーパーの偵察と叶うなら物資の確保が努力目標になる。
すぐ近くにはホームセンターもあるからゾンビ次第では近場で軽トラックを接収する」
そう言いながらカワカミさんが地図を広げる。
「今が地図のここだ、一度北に向かって一つ目の橋を渡り205号線を南下する後は道なりに進む。
まずは長畑を左に曲がりガス等燃料の確保を行う。
付近に民家は少ない、この人数なら危険はまず無い」
カワカミさんはみんなの顔を見渡すと話しを続けた。
「燃料の確保が済み次第205号線に戻り、東に進む。
道路の状況やゾンビ次第では即時撤収で構わない、危険を感じたら」
そう言うとカワカミさんは片手に持っていたトランシーバー3つのうち2つををオレとスズキさんに渡した。
「これで連絡を取り合う。
スズキさんはトラックの荷台に乗って貰いタンクローリー等が見つかった場合はタニグチ君にトランシーバーを渡して、2トントラックの助手席に乗ってくれ」
「分かりました」
「バイクの運転しながらトランシーバーは難しいからイチゴ頼む」
そう言ってトランシーバーをイチゴに渡す。
「使い方は分かるか?」
「え?スマホとは違うよね?」
「電源入れてたら勝手に受信するから話すときだけボタン押して、話したらすぐボタン離すだけだよ。
チャンネルはいじるなよ?」
「チャンネルがこの上下のボタンで、この真ん中のが話すボタン?」
「そうそう聞こえやすいように胸ポケットにでも入れといて」
そうして準備が終わり出発する。
カワカミさんが運転席に乗り、補助席にタニグチさん助手席にシブヤさんが乗った。
スズキさんはトラックの荷台に入り荷物を括るためのガイドに綱を巻いて握っておくようだ。
オレとイチゴを乗せたCB223を先頭に道を進む。
昨日の襲撃で付近のゾンビは減っているのかゾンビは殆ど見えないまま橋を渡り205号線に入る。
所々に車は停まっているが、完全に道を塞ぐ程では無く後続のトラックも着いてきている。
海沿いを離れると、ちらほら民家が見える。
走っているとトランシーバーから声がした。
「ピィガガ、問題無さそうだね、そこの小さな橋を渡ったら次の交差点を左だ、どうぞ」
オレが左手でイチゴに親指を立てるとイチゴがトランシーバーに向かって話す。
「わかりました」
カワカミさんの指示に従い交差点を左に曲がると道が狭くなり道路脇には民家が、ちらほらと建っているため神経を使いながら運転を続ける。
何事も無く目標のガソリンスタンドに着くと目視で確認出来るだけでゾンビが三体居るようだった。
バイクを停めるとイチゴが飛び降り、一番近い場所にいた1体のゾンビに矢を射かける。
頭に命中し倒れるゾンビ。
上下薄い灰色の作業着を着ている中年男性のゾンビで日が経っているのか腐食が進んでいる。
肌が紫色になっただけではなく皮膚がひび割れ赤黒い粘液質な血液が滲みだしている。
オレは急いでバイクを降りランタンハンガーを構えると近付いてくるもう1体のゾンビの頭を目掛け気合いとともに突き出した。
「燕三条万歳っ!」
そうこうしているとカワカミさんが運転するトラックがガソリンスタンドに入ってきて目ざとくゾンビを見つけたのかトラックで跳ね飛ばす。
転がっているゾンビに駆け寄り頭にランタンハンガーを突き入れ赤黒い糸を引きながら抜き出し周りを見渡すとイチゴが言った。
「マサシ店内から、もう1体っ!」
イチゴの言った方向を見やるとガラス製のドアを破りゾンビが倒れ込みながら出てくるところだった。
カワカミさんとシブヤさんが各々、盾と棍棒、鉄パイプ槍を手にゾンビに近付く。
カワカミさんがジュラルミンの盾で見事なシールドバッシュを決めるとゾンビがたたらを踏む。
そこにシブヤさんが狙い違わず頭に槍を突き入れる。
タニグチさんが荷台のドアを開けスズキさんもクロスボウを片手に集まってくる。
しばらく辺りを警戒したが付近にゾンビは居ないようだ。