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サバイバル九州ゾンビワールド  作者: 夕凪 響
孤軍奮闘、久留米脱出
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Stairway to heaven

 選択しない生き物はいないだろう。


 なんなら俺達が生かされているのだって誰かの選択の結果で、文字が生まれ生き残ったことだって選択の結果で、歴史の余白みたいなもんだ。

 継続も選択の結果だろうし破壊が選択の結果だったりする。


 進む事も、止まる事も、戻る事も選択だろう。


 ただ後になって“あれ“が選択だったんだ、そう思う選択があるんだ。


ヤマダマサシの手記より

 テレビの中でスーツ姿の男が話し始める。


「今回九州で起こっている事件を説明して貰いましょう、では東洋大学教授オオキノブオ先生お願いします」


「ご紹介ありがとうございます。東洋大学病態機能学教授オオキノブオです。

 今回九州で発生している状況ですが動画等は皆さん見ましたか?」


「もうご覧になっている方も多いと思いますがVTRがありますご覧ください。」

 司会役がそう言うと画面が切り替わり博多駅付近が映る。



 レポーターが慌ててがなり散らしている音声が続く。


「これは映画ではありません!繰り返します!これは映画ではありません!」


 テレビに映っていたのは人でごった返す博多駅前の様子だった。


 数人の男女が警察官に取り押さえられているが、まるで暴動のように人が人を襲う波は増えていっているようだ。


 また画面が切り替わる、今度は駅近くの交差点のようだ。


「大規模な暴動は駅周辺だけでなく付近にも波及し怪我人が続出しています」


 そう現場のリポーターが話しているとリポーターの後ろ黄色と黒の立ち入りを禁止するテープの後ろで救急車に運ばれる人達が起き上がり、救急隊員へ襲いかかる姿が流れた。

 周囲にいた警察官が近寄り何かを叫ぶが、それに構わずに傷口から赤黒い血を滴らせた彼らは救急隊員に噛みつき肉を引きちぎる。

 ━━━パンッパンパンッ━━━

 乾いた銃声が響きリポーターが振り返る。


「つ、ついに発砲が発砲が開始されましたっ」


 リポーターが叫ぶように喋ると後ろから様子のおかしい人々が近付きリポーターに襲いかかるカメラのアングルが崩れ地面が映り映像は途切れた。



 しばらく呆然とテレビを眺めていた。


「なんだ・・・あれ?」


 さらにテレビは報道を続ける。


「博多だけではありません天神さらに北九州小倉でも同様の事件が起こっています無用な外出は控えてください。外出はお控えください!」


 画面が切り替わり様々な地区の様子が映し出されているが、どこも海外の暴動の様子を映し出しているように見えるが九州のしかも福岡各地の様子だった。



「どうなってるんだ・・・?」


 そこでテレビの画面が切り替わる。


 「さて今見てもらったとおり九州各地で頻発し未だに膨らみ続けている事件ですが。」


 オオキノブオ先生が話し始める。


 「まるで狂犬病のように噛まれた人間から人間へと感染し“まるで人をゾンビのように“してしまう・・・」


 偉い大学の先生が朝のテレビでゾンビなんて言い出すシュールなテレビを見ながら考えていた。


 山の帰り噛みついてきたお婆さんは、つまり・・・


 テレビに視線を戻すと避難情報に移っていた。


「九州北部にお住まいの方、あと2日で関門トンネル関門大橋の封鎖が行われます。

 自家用車での避難が難しい方は以下の港に避難船が午前11時より2時間接岸して収容を行っています。

 また内陸部の各避難所へ自衛隊の避難誘導が行われていますのでご協力お願いします。」


 ここからだと小学校かな、そう思いながらテラスから外を見る。

 マンション前、3メートル程のどぶ川にかかる橋の上で車が玉突きに事故を起こし炎上したように焦げたあとが見える。またいたる所で車がぶつかり道を塞いでいる。

 マンションから200メートル程の場所にあるコンビニにはフラフラする人影が数体、衣服は赤黒く染まっている。先程テレビで聞いたゾンビそのものが溢れる街の様子がうかがえた。


 テレビで見てると余裕そうに見えるのに現場はかなり絶望的な状況なんだと気がつく事になった。


 気を取り直して取りあえず避難するにしても籠城するにしても持ち物の確認からだな。


 先ずは水の確保、まだ水道は使えるらしいので浴槽にいっぱいまで水を貯めて、そのほか空いているペットボトルに水を詰めておく。


 次に食料はパスタが二袋に米が10キロだがおかずが無いな、最悪漬け物とか塩っけのあるものがあればいいが。


 電気は怪しいがガスはしばらく大丈夫そうだから調理は大丈夫そうだな。


 外はなかなか悲惨だけど家の中に籠城する分には二週間くらいは大丈夫か。


 あとは周りの部屋の確認だな。オレが住んでるのは六階建てのワンルームマンションの四階、ワンフロア四部屋で正方形のフロアになっていて片側二部屋、ワンフロア四部屋とも角部屋の作りになっている。


 隣が留守で鍵がかかっていれば、かなり安全に過ごせる、テラスの下からの侵入は無いだろうしゾンビでは上から避難梯子も使えるとは思えない、後はテラスのすぐ壊せる壁からの侵入だけである。


「隣を確認したいけど武器になりそうなものは・・・」

 そう言いながら部屋の中を確認しているとキャンプ道具の中に雪印のスクリュー・ドライバーという道具を見つけた。

 これはランタンスタンドと言われる道具なのだが詳しい説明を省くと二メートル程の鉄の槍である。

 ファミリーキャンパーに愛用される事が多い道具で、つまりはファミリーのお宅には基本的に鉄の槍が一本は保管されている。

 そういうことだ。


 腰にキャンプ道具のナタを差して片手に鉄の(ランタンスタンド)を持ってから一度玄関へ、音はしないのでドアを少し開けて辺りを確認するが何もいないようだ。

 そのまま隣の部屋のドアをノックしてみる、返事はない。

 ドアをガチャガチャと回すが鍵ががかっているようだ。


 そこで斜向かいの部屋からドアを引っ掻くような音が聞こえてきたので、すぐに部屋に戻る。


「斜向かいの部屋には、いそうだな・・・」


 とにかく先ずは隣部屋の確認だ先ずはテラスから身を乗り出して見てみるが人がいそうな雰囲気は無い、そのままテラスの壁を壊してガラス越しに確認するが気配は無い窓にノックしてみるが反応は無い。

 留守だろうと思いながらガラスを割って侵入してみたが留守のようだ。

 そのまま室内を物色するキッチンにはレトルトの食品などがあり冷蔵庫には飲み物などもあった。

 隣室は女性が住んでいたらしく女物の洋服や化粧品が散らかしてあった。


「着替えと貴重品だけ持って急いで避難した後って感じかな」


 隣室の玄関の鍵を確認して棚などで簡易なバリケードを作り、浴槽に水を貯めインスタント食品を自室に持ち帰る。


「これで二週間は過ごせると思うけど避難所の確認しないと逃げ遅れるな・・・」


 外のゾンビの対応をいきなりしても確実に失敗しそうだし斜向かいの部屋のゾンビを試しにやってみるか。

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