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サバイバル九州ゾンビワールド  作者: 夕凪 響
百年河清、佐世保滞在
19/57

Good Old-Fashioned Lover Boy

 カワカミさんと一緒にいた人達はカワカミさんが声をかける頷き何か作業に戻る。


 カワカミさんの先導でフラワーロードと書かれた場所をCB223を押してついて行く。



 前に来た時はチューリップが咲き乱れ風車と合わさり日本と思えない景色に見惚れたが、車が通った轍があちこちに見られ水路には車が沈み、風車には槍のような物が刺さって所々に焦げたような跡も見えている。


 こちらの様子を見てカワカミさんが話しかけてくる。


「裏のハーバーゲート付近の跳ね橋を除いてここ以外の橋は落としてある。

 ゾンビがきたら、このフラワーロードが主戦場になるんだ。

 見ての通りここは跳ね橋になってて危なくなれば橋を上げてたてこもれる」


 カワカミさんも辺りを見回しながら続ける。


 「特に昨日は大きな集団の攻勢があって今日はその片付けをやっていたんだ」


 そう言うと先に進み出した。


 水路にかけられた橋を渡り門に着く。

 頑丈そうなレンガ作りの門の横には2トントラックが止められ門の周辺にも遮蔽物になるよう土嚢が組まれている。


 門をくぐると何人かの人がいて近寄ってくる。


「カワカミさんその人達は避難者ですか?」


「ああ、そうみたいだ外傷チェックをまだしてないからそっちの女性の方をお願いできるかな?」


 カワカミさんはそう言いながらこちらを振り向く。


「そう言えば済まないまだ名前を聞いてなかった」


 そう言われ自己紹介もまだしていなかったと気付く。


「オレはヤマダマサシです、こっちが」

「キシダイチゴです」


 そう名乗ると「よろしく」と軽く言われ門の脇にバイクを置き、別々のドアにに連れて行かれる。 


 ドアをくぐり小さな部屋に入るとカワカミさんがドアを閉める。

 内装は外のオランダ風の外観とは違い白っぽい壁にパイプ椅子や机などがあり、窓にはカーテンがかけられていた。


「ここはスタッフ専用の部屋みたいでハウステンボスっぽくはないよね」


 そう言うと肩をすくめ続けて言った。


「さて寒い中、悪いんだけど上を脱いで貰えるかい?」


「分かりました」


 素直に答え上着を脱ぎ中のシャツなどを脱いでいく。


「だいぶ鍛えてるね」


「いや鍛えてるわけじゃなくて趣味が登山なんで自然と」


 話しながら腕の内側も見られる。


「ここに歯形っぽいのがあるけど、だいぶ時間経つやつだよね?大丈夫だった?」


「あーそれやられたときは焦りましたよ、5日か6日前くらいだったかな?」


 誤魔化しながら話しを続ける。


「それだけ経ってたら万が一もないかな?悪かったね服着てくれていいよ」


「ん?下はいいんですか?」


「あー下は変な歩き方してないし大丈夫だと思うけど脱がなくて良いから裾だけ捲って貰えるかい?」


「はいはいどうぞどうぞ」


 そう言いながらシャツだけ着て裾を膝まで捲ってみせる。



「うん大丈夫だね一応安全のためとは言え失礼したご協力ありがとうございますだね」


「カワカミさんって警察官とかですか?」


「うん?よく分かったね?」


「いやなんかこういう事に慣れてるなって思いました」


「ははっ、いつもやってたからかな?」


 そんな事を話しながら服を着る。


「ところで一緒にきたのは彼女さんかな?」


「いや彼女じゃないです途中で一緒になって」


「へー、その割には仲良さそうじゃん」


「いやまあここに来るまでずっと一緒だったんで友達って言葉では割り切れないくらいの感情は持ってますね」


「なるほどなるほどヤマダ君は素直じゃない事はよくわかった」


「いや本当に向こうがどう思ってるかわかんないし年も離れてますから」


「いやー避難してきた人の部屋を割り振るのに悩んでてね。

 ここのリーダーのとこに挨拶行くから、そこらへんも考えといて」


 そう言いながら部屋から出るとイチゴの方はもう終わっていたらしく外で待っていた。


「なんか長かったね?どうかした?」


 呑気にそんな事を言ってくる。


「いや歯形があったからな」


 適当にごまかし、カワカミさんが女性からイチゴの外傷の報告を受けている。


「リーダーに挨拶行くからついて来て」


 カワカミさんがそう言うと直ぐに歩き出したので慌ててバイクを押してオレ達はついて行く。


「そう言えばヤマダ君は何歳なの?」


 カワカミさんが尋ねてくる。


「28歳ですカワカミさんは何歳ですか?」


「ん?僕は32歳だよ」


「同年代くらいかと思ってました」


「私は21です!」


「7歳差かなるほど」


「7歳差がどうかしたんですか?」

「7歳差がどうかしましたか?」


「はははっ君達仲良いね」


 アートガーデンエリアは花が美しく咲き誇る場所で冬のこの時期はイルミネーションが美しく、アートの名に負けない複雑で幻想的な輝きを見せてくれる場所だったが、花や構造物を押しのけパレットに乗った物資の集積所に変わっていた。


 橋を壊す前に運びこんだのか吸水車も三台ほど停まり変容してしまった世界を見てきたオレ達にはとても頼もしく見えた。


「カワカミさんだいぶ物資を蓄えてるんですね?

 でもテレビで見た避難作戦って今日開始じゃないんですか?」


「あー君達は昨日テレビかラジオは見てないのかな?」


「はい、昼間はバイクで移動してて夜は色々あったので」


「確かに2人でゾンビを警戒しながらだとラジオも難しいか・・・

 それも含めてリーダーに挨拶がてら話しをしよう」


 そう言うと足を早めアートガーデンを越えてアムステルダムシティへと到着する。

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