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サバイバル九州ゾンビワールド  作者: 夕凪 響
他生の縁、佐賀横断
11/57

Don't Look Back in Anger

 オレが先に休んでイチゴが後で休むように見張りを交代した。

 昨夜の午後19時から交代で休み、そろそろ朝の7時、イチゴが起きてくる時間だ。


「おはよ」


 そう思ってるとイチゴが起きてきたのでストーブで温めていたお湯でお茶を出す。


「とりあえず米炊いて味噌汁だけ適当に作っといたよ、あとお店に明太子とわさびふりかけがあった」


「えーありがとう!」


「どういたしまして」


 そう言いながら朝ご飯をつついていると呼子が鳴った、緊張が走る。

 オレは腰のナタを確認するとランタンハンガーを持ち、イチゴは弓と矢筒を持って立ち上がると駐車場へ向かった。


 駐車場の出入り口に張った呼子のビニール紐と一緒に張ってあるパラコードの予防線でゾンビが一体留まりこちらに向けて腕を振り回していた。


「う゛ぁぁぁあぁぁあっ あっ」


 そこに近付きランタンハンガーを正面から眼窩に向かって突き刺す。


(燕三条万歳!)


 軽い感触で眼球を潰し奥の脳漿までランタンハンガーを突き入れ、左手で支えたまま右手の動きで頭蓋の裏をコツコツと叩きながら脳漿をかき混ぜる。

 首と指を反り返らせて二~三度ビクビクと震えると力無く倒れる。

 年は50程の男性で紺色の制服の様な物をきている、この先にあるトンネルの職員のようだ。


 振り向くとイチゴと目があった。


「お疲れさまです」と言いながら頭を下げられる。


 小声だったから聴かれてはいないと思いながらも上手い返しが思いつかず「うん」とか言いながら引きずってフェンスの脇に置く。


「なまんだーなまんだー」


 軽く呟きながら彼の制服で槍を拭いていると、イチゴも真似して「なまんだーなまんだー」と呟いていた。


 湧き水で手を洗い流し朝食の続きを食べた。

 朝ご飯を食べ終えるとお互いに準備し、オレはCB223にイチゴはヤマハの原チャに乗ると山を下る。

 5分程走ると目当ての温泉が見えてきた。


 駐車場の前でバイクを停めイチゴを制止する。

 駐車場に車が15台ほど停まっており危険だと判断した。


「こっちは満員みたいだ」


「そうだね1台に二人乗ってたとしたら30体のゾンビに従業員足すと大盛だよ!」


「近くにもう一軒ある、もみじの方に行ってみよう」


「分かった」


 そう話しながらもう一軒の温泉へと向かう。


 人気の無い道を選んで15分程かけ温泉へ辿り着く、駐車場に車は一台しか停まっておらず、しかも車の中にゾンビが2体ご丁寧にシートベルトまでつけている。

 車のドアを開けると動けないゾンビに流れ作業で安息と解放を与えていく。


「さて従業員用の駐車場を確認して風呂いこう!」


「そうだね楽しみ!」

 

 従業員用駐車場に車は2台しか停まっておらず、その2体も直ぐに見つかった。

 2体とも入り口のカウンターで引っかかって腕を振り回していた。


 一体のゾンビにイチゴが矢を射かけると狙ったのか顔が横を向いたゾンビの耳に矢がするりと根元まで入る。

 動きを止めたゾンビに邪魔されてカウンターの中でもがくゾンビに槍を突き刺し片が付いた。


「どっちから入ろうか?」っと聞くと「先に良いよ」と答えてくれたので先に入らせてもらう。


 15分程で身体を清め戻ってくるとロビーで見張りをしてくれていた。


「お待たせありがと、かわるよ」


 俺は言いながら頭をタオルで拭う。


「うん、なら見張りよろしくね」


 そうイチゴは言いながら立ち上がり彼女は女湯へと向かった。


 特に何事もない辺りを見回しカウンターのレジから小銭をちょろまかして自販機で飲み物を買う。

 温まった身体に冷たいお茶が染みわたる。


 四十分くらいでイチゴが上がってきた。


 自販機でお茶を買って渡すと「ありがとう」っと言った。

 オレはカウンターのレジを指差しながら「店の奢りだよ」と答えると笑っていた。


「マサシのバイクの後ろに乗せて欲しい」っとイチゴが話し出す。


「良いけど佐世保に向かう予定だけどいいの?」


「うん、目達原の駐屯地に避難してたんだけど感染した人が避難してたみたいで一昨日の夜に・・・」


「えっ?目達原?」


「うん?目達原」


「昨日道の駅に行く前に避難しようと思って行ったんだけどアベフトシさんって人だけが生き残ってて」


「アベさん生き残ってたの!」


「うん、だけど怪我が酷くて・・・」


「そっか・・・」


 彼女はうつむいて動きをとめてしまう。


 しばらく待ってると彼女は話し出した。


「アベさんね逃げ出すときに助けてくれたんだ」


「ゾンビに追われながらフェンスを昇ろうとしてて、もう少しで引き倒されそうになったところを身体をはって体当たりで」


 そらかっこよかばい男が惚るっ、そう思いながら話しを黙って聞く。


「それで三体くらいに囲まれてたけど逃げろって言ってくれて・・・」


「そのまま逃げてきたから、なんて言うんだろ罪悪感なのかな。

 分からないんだけど何か気になって」


「そりゃ惚れたんだろうよ」


 そう言うと彼女は自分の気持ちに気付いたらしく静かに泣いていた。


 彼女が泣きやむまで黙って肩に手を置き静かに時間を共有した。

そう言えばパラコードって何なの?

って思ってる方もいるかもしれないので補足です。

パラコードとはパラシュートに使われている材質の紐で引っ張り強度が物凄く強くて、直径4ミリ程で250キロを支えることが出来るアウトドアの便利アイテムです。


以上、蛇足でした。

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