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サバイバル九州ゾンビワールド  作者: 夕凪 響
他生の縁、佐賀横断
10/57

Be Here Now

 短い時間、彼に黙祷を捧げる。

 周りはゾンビさんが集まりはじめ危険な状況だ、西に向かい動き出す。


 すでに昼過ぎ、今から西に向かって動いても暗くなってから休む場所を探す事になるだろう。


「東脊振の道の駅に行くか」


 あそこなら周りに民家も無い、ゾンビさんがいても片手で数えられるくらいだろう。

 やけにゾンビが多い田舎道を通り過ぎ登り坂に差し掛かる。


 東脊振の道の駅はほとんど山頂みたいな所に建てられており、24時間こんこんと湧き水が溢れる道の駅だ。


 また山向こうは福岡県につながっていてキャンプ場や景色の良いダム、沢横を登る五ヶ山がある。

 いずれもオフシーズンである今の時期はほとんど人気が無くゾンビが大量に現れる事もまずないだろう。


 傾斜がきつくなる山道を進みながら辺りを確認する、道端を見ると頭に棒の様なものを生やして倒れている人がいるバイクを慎重に近づけ確認すると、どうやら矢を撃ち込まれて事切れたゾンビさんのようだ。


 四十代女性で服装はペンギンのマークが特徴的なアウトドアブランドの上着にデニム、道の駅に遊びに行ってゾンビ化してここまで徘徊してきて“ここを通った弓を持った誰かが“倒したのだろう。


「もう道の駅から離れているなら良いけど・・・」


 不安を感じながらも山道を進むと同じようなゾンビが2体、道の端に転がっていた、いずれも事切れているようで確認したが動きはしなかった。



 道の駅まで着き駐車場にバイクを停めると建て物から、まだ若そうな女が弓矢を構え出てきた。


「動くなっ!えっとあなた一人!?」


「ああオレ一人だ」


 両手を挙げながら答える、彼女の格好は足首にチェックの模様が見えるブーツにスキニーなデニムパンツを履き、腰にはチェック柄の巻きスカート、暖かそうなダウンベストを羽織り、耳当て付きのニットをかぶっているが髪はショートだ、年は二十歳くらいだろうか。アーチェリーを構えこちらを観察している。


「あいつらに噛まれたりしてない!?」


 勢いよく続けてそう尋ねてくる。


「ああ!感染はしていない」

 そう言うと明らかにホッとしたようで構えを解いた。

 ゆっくりとお互いに近付きつつ声をかける。

「長崎の方に移動する予定で今夜の宿はここにしようと思っているんだが、かまわないだろうか?」


「変な事をしないならかまわないわ」


 そう言ってオレの周りを一周しながら不躾に観察してくるがオレは肩をすくめポーズだけで返答すると、気にせずに話しを続ける。


「駐車場の入り口を停まっている車で塞ぎたい」


 道の駅の周りはフェンスに囲まれているが駐車場の出入り口に車2台分と歩道分のひらきがある。


「車に鍵は付いて無いよ?」


 不思議そうに聞いてくる。


「ここに来るまで山道に3体のゾンビが転がっていたがあれで全部か?」


「道でやったのは3体で間違い無いわ、あと向こうに2体ここにいたゾンビは全部やったと思う」


「ありがとう、ちょっとゾンビのポケットを漁りに行ってくる」


 そう言うと彼女はひいた顔で頷いた。




 道中のゾンビのポケットから車2台分の鍵と道の駅内のゾンビから1台分の鍵を回収して駐車場の出口側をまるまる塞ぐ、入り口側はバイクが通れるくらいを空けて塞いだ。

 道の駅の中で見つけたビニール紐とペットボトルや店の中にあったスプーンなどの金物で即席の“鳴子“を作った。


 それを見ていた彼女は「慣れてるわね?どこで覚えたの?」とか聞いてきてたが適当に話していた。


「そう言えばオレはヤマダって名前だ、よろしくな」


「自己紹介もしてなかったわね!私はキシダイチゴよ!よろしくね」

 彼女はそう言ってニコッと笑う、なんだろう顔がかわいいわけじゃないが表情がかわいい、不思議なタイプだな。


「下の名前はなんていうの?ヤマダさん?」


「マサシだ」


「私の事はイチゴってよんでね?ヤマダってなんか呼びにくいからマサシって呼び捨てでも大丈夫?」


「かまわない」


 そんな話しをしながら夕食に向けて物色をする。


「そう言えば車三台とも乗ってきてた人はゾンビだったみたいだけど足はどうしたの?」


「あー鍵付きの原チャあったから原チャで」


「だから途中のゾンビも倒してたんだ」


「そうっ!登りが本当に遅くて街だと全然、問題無かったけど山に入ってからは逃げきれなくて!」


 そんな事を話しながら道の駅の冷蔵コーナーから猪肉などを見繕う。


「ご飯作るの?私作るよ?たぶん美味しいよ?」


 そんな風に言われたのでお任せする。


 彼女が料理する間に建物の真ん中に設置してある灯油ストーブを食堂に運び、灯油を見つけて給油する。

 天井が高く暖まるまで時間はかかるだろうが今夜は暖かく眠れそうだ。


 しばらくすると、言葉通り彼女は料理が上手く、食堂にあった米なども使い猪肉でぼたん鍋を作ってくれた。


「美味い!」


 それしか言葉が出てこない。

 猪肉の癖のある臭いも一緒に煮込まれた野菜や生姜、少しだけ入れられた黒胡椒と合わさり風味となっている。

 味付けも味噌でスープを飲むたびに身体がホカホカとしてくる。

 そんな事を思いながらも九州の男は口には出さずモリモリ食べることで相手に伝える。

 ・・・きっと伝わる。いや伝わってるはずだ!



「よく食べるね?お腹空いてたの?」


 なぜか心配そうにこちらを見てくる。


「いや美味いから」


「ありがと」


「そういやオレはここで寝ようと思うけど見張りを交代でしないか?」

 

「確かに見張りを交代ですれば安心ね」


「それとここに来る途中に温泉があるから明日、起きてから見張りを交代でしながら風呂に入りたい、協力してくれないか?」


「それは願ったり叶ったりだけど・・・」


「覗いたりしねーよ」


「あーはいはい、かまわないわよ」


 その日は6時間交代で見張りを交代しながら休んだ。

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