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第8話 変化

 朝目を覚ますと、変化が起きていた。

 

 相変わらず筋肉痛がある肉体。

 しかしその肉体が、いつもよりガッチリしている。

 肉がついているのだ。

 もやしだった俺の体に、筋肉がついていた。


「おいおい……どういうことだよ」


 俺は驚嘆し、自分の体を見下ろしていた。

 突然の変化に戸惑う。

 え? 変なものでも食べたっけ?

 あ、スライムは食べたな……

 

 たくましいとまでは言わないが、それでも急速についた筋肉。

 朝から騒がしい俺の声に目覚めるゴン。

 彼女は目を擦りながら俺を見る。


「どした?」

「あ、いや……筋肉がって……何だ!?」


 俺は自分の肉体よりも、ゴンの姿に驚愕した。

 彼女は半目で俺を見ながら起き上がる。


「どした?」

「い、いや……お前、体」

「体?」


 自分の体を見下ろすゴン。

 何と彼女の体が、縮んでいるではないか。

 いや、縮んでいると言うか、引き締まっている。

 あんなに大きかった体が、一回りほど小さくなり、小太りぐらいの体型になっていた。


「……何だこれ? そういや、お前もちょっとたくましくなってるな」

「俺だって聞きたいぐらいだよ」


 すると、ゴンの履いていたズボンがストンとズレ落ちる。

 サイズが合わなくなったのだろう。

 俺は咄嗟に目を逸らし、横目でゴンに話しかけた。


「ズ、ズボン! 落ちてるぞ」

「いや、それだけじゃない……これは」

「え?」

 

 チラリとゴンの方を見ると、彼女は自分の足元を見下ろしながら言う。


「パンツも落ちてるわ」

「そんな報告しなくていいわ! さっさと履けよ!」

「どう考えてもサイズが合わねえよ。ま、このままでもいっか」

「お前はもう少し恥じらいってもんを持て! 仮にも男の前だぞ!」

「普通の男の前だったら問題だけど、レオ相手なら気にならないよ」

「……どういう意味?」


 それは友達として問題ないのか、それとも男として見られていないのか。

 どっちの意味なのだろう?

 ……いや、どっちにしてもいい意味ではないな。


「お前だったら見られてもいいかなって」

「……だからどういう意味?」


 ダボダボになってしまったゴンのズボンとパンツ。

 上のジャージは大きくても着られるのでいいようだが、俺は【製作】を発動し、彼女のズボンとパンツのサイズを変更する。


 【製作】は魔石を使用して、今ある物を変化させることも可能のようだ。

 この場合は魔石の消費も少なく済むらしく、一つの武器を作るよりも簡単にできた。


 ゴンはあくびをしながらパンツとズボンを履き直す。


「……一狩り行くか」

「お前の場合食事だろ。もうちょっと待ってくれ」


 俺は【製作】で、『鉄の槍』をもう一本創り出した。

 最初に作った槍を空間から取り出し、二本の槍を手に取り構える。


「二槍流……カッコよくない?」

「オレにはそういう感覚分かんねえからな。いいんじゃね? お前が好きならさ」

「男のロマンが分からんとは、やはり女よの。お前も」

「普通の女の趣味もよく分かんねえよ。少女漫画とか面白いとか思ったことねえし」


 お前の立ち位置はどこなんだ?

 一瞬そんな言葉が頭を過るが、そうだった。

 こいつはゴンだったんだ。

 なんか特殊なんだよな、こいつの立ち位置って。


「オレはボーイズラブ以外のことは分からん」

「……そうだったな」


 真剣な顔でそう宣言するゴンを見て、俺は無表情で玄関の扉を開く。


 俺たちは天気のいい森を進んで行き、スライムを探し始めた。

 目的は強くなることと俺たちの食事。

 ゴンの食事がメインのような気もするが気にしない。


 さっそく見つけたスライム相手に、渾身の一撃を見舞う。

 クルクル両手で槍を回して、恰好つけておく。


「お前って容赦ないよな」

「そりゃ、モンスター相手だからな。手加減はしないさ」

「モンスター相手以外でも容赦ねえよ、レオは」

「……そうか?」

「オレの弟相手でも容赦なかったろ?」


 俺はゴンの弟――小学校2年生の翔馬のことを思い浮かべる。

 俺、なんかしたっけ?


「大人げもなく、ゲームであいつのことコテンパンにのしただろ」

「……そんなこともありましたね」


 そう言えばそんなこともあったな……

 俺は遠い目をして、ゴンから目を逸らす。


「ま、こういうところじゃ頼りがいがあるからいいけどよ」


 そう言ってゴンはスライムの死骸に向かって右手を突き出す。

 すると、右手から影のようなが生じ、バクンとスライムを一口で飲み込んだ。

 【暴食】の熟練度が上昇したことにより、ああやって手から物を喰えるようになったらしい。

 

「で、どうなんだ?」

「ん。食った感覚があるな。不思議な感じだ」


 俺は近くにいるスライムを一突きし、それを口に含む。

 ゴンはまだあくびをしながら、森の遠くを眺めている。


「なあ。今日はもう少し奥まで行かねえ?」

「何でだよ?」

「別のモンスターと戦ってみたくないか?」


 別のモンスター……まだスライムしか見たことないが、別の種類のモンスターがいても不思議じゃないよな。

 ゴンの言う通り、別のモンスターと戦った方が強くなれるかも知れない。

 こいつはいつも感情が欠落したような顔をしているのに、何気に俺のことも考えてくれているのだ。

 俺はそんな彼女の心遣いにちょっぴり喜びを感じながら首を縦に振った。


「そうだな。他のモンスターも探してみるか」

「ああ。別のモンスターの味も確認するとしよう」

「味!? 俺が強くなるためじゃなくて味が目的!?」

「……ま、どっちでもいいんじゃね?」


 俺のことを考えての発言ではなかった。

 まぁ、別にいいんだけどさ。


 スライムを完食した俺は、ゴンと肩を並べて森の奥へと歩き出した。

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