第6話 鑑定と製作
「ふーん」
翌朝。
ゴンにスキルの話をするが、やはり興味はなさそうだった。
もう少し興味持ってくれたら俺嬉しいんだけどなぁ。
「で、どんなスキルなんだよ、それ」
「見てろよ……【倉庫】」
【倉庫】を発動させると、俺の目の前に空間の穴がポッカリと開く。
中は真っ暗。
どこまで続いているのかも分からない空間である。
「ここに物を収納しておけるんだよ。昨日手に入れた石も入れておこう」
ポイッとスライムから入手した石を空間の中へ放り投げる。
すると珍しくゴンが感嘆の声を上げた。
「すげーな、これ」
「だろ? これが読むだけで手に入ったんだぜ」
よっぽど驚いたのか、ゴンはキラキラした目で俺を見る。
「明日からこれでオレを運んでくれよ」
「お前、自分が楽することばっか考えてるだろ!」
「楽に越したことはないからな。常にイージーモードの人生を歩みたい」
「ダメ人間みたいな台詞になって来てるぞ」
「楽できるならダメ人間でもいい」
ダメだ。
こいつは甘やかしたらダメなタイプだ。
ちょっと厳しめぐらいにしておかないと、とことこんまで堕落する奴だ。
俺は嘆息するも、【倉庫】の特性をゴンに話することにした。
「残念だけど、ここに生き物は入れておくことができないんだよ」
「んだよ。使えねえスキルだな」
「使えるよ! これで荷物を持つ必要ないんだから、お前も楽できるんだからな!」
「……そういやそっか」
「ったく」
俺は本を手に取り、読書を再開する。
「で、他に何か書いてるか?」
「んー……モンスターの情報とかは書かれてるけど、後は特に……ん?」
ページを読み進めていくと、そこには新しいスキルの情報が描かれていた。
それは【鑑定】と【製作】というスキルのようだ。
また描かれている文字が光、スキルの内容が頭の中に流れ込んできた。
「おお……なるほど。【鑑定】は物などの情報を得られるわけか」
「独り言とか怖いんですけど」
「悪かったな。新しいスキルを習得したんだよ」
「ふーん。どんなスキル?」
俺は【倉庫】を開き、中に収納していた石を取り出す。
「こんなスキルだ……【鑑定】」
魔石;モンスターから入手できる、アイテムを作成するための材料
「これは『魔石』って言うらしいぞ。なるほどな。これでアイテムを作れるってわけか」
「中々便利だな」
「ああ。これでアイテムの用途などが分かるから、アイテムに関しては困ることはなくなるだろう」
突如、頭の中で機械音のような物が聞こえてくる。
ステータスが上昇したのか?
そう考えた俺は、ワクワクしながらステータス画面を開いた。
露木玲央
HP 9 MP 8
腕力 3 防守 3
魔力 4 敏捷 7
運 3
スキル
帰宅 1 倉庫 1 鑑定 1
製作 1
MPが上昇している。
俺はガッツポーズを取り、喜びを爆発させていた。
「いてて……」
「どした?」
急に、筋肉痛のような物が全身に走る。
普段、運動らしい運動をしない俺がスライム退治したからだろうか?
ガッツポーズを取るまではどうってことなかったのに、痛みが身体を駆け巡った。
「筋肉痛、かな?」
「筋肉痛か……これでたくましくなったらいいんだけどな」
「そうなったら嬉しいけどな……って、あれ?」
「?」
俺は目をゴシゴシと擦りながら、ゴンをジーと見る。
「そんな見つめられてもオレはときめかないぞ」
「そんな誘ってるように見えた!? いや、気のせいかも知れないけど……ゴン、ちょっと痩せた?」
「……痩せたか?」
別段、自分の体を見下ろすわけでもなく。
まるで興味がなさそうにこちらに視線を向けたままゴンはそう言った。
自分の事にも興味ないのかよ。
「いや、気のせいかも知らないけどさ」
「だとしたら、腹が減ってるからだろうな」
「そんなすぐ体重減る?」
「オレの食欲なめんじゃねえよ」
俺はゴンのセリフに妙に納得してしまい、「なるほど」と一言漏らしてしまった。
いや、そんな胸張って言うようなことじゃねえよ。
体重が減ったかどうかは、まぁ今は置いておいて……
それより【製作】だ。
頭の中に入ってきた情報を探り、【製作】の使用方法を確認する。
どうやら【製作】は、武器や防具、あるいは服など色々なアイテムを作り出すというスキルのようだ。
アイテムを作るにはモンスターを倒すことによって入手できる【魔石】が必要になると……
俺は現在作れるアイテムを探る。
色々作れるものはあるようだけど……とりあえずは武器だな。
戦う手段が欲しい。
そう考えた俺は『魔石』を床に置き、【製作】を発動する。
カッと眩い光が地面から上がり、魔石を飲み込んだ。
「おいおい。何やったんだよ、お前」
「まあ見てろって」
光が収まると、魔石は槍へと姿を変貌させていた。
これは『鉄の槍』。
この世界では、最底辺辺りに属する武器のようだが、当面はこれで十分かな。
「武器作れるようになったのか」
「ああ。武器だけじゃなくて、もっと色んなアイテムを作れるぞ」
「じゃあ、飯作ってくれ」
「……それは無理だ」
俺はゴンの食い意地に呆れつつも、高揚した気分で槍を手にした。
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