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第33話 決勝戦

 左手にある木槍を構えつつ、【倉庫】から一瞬でもう一本の木槍を手にする。


「い、以前のガリレオとは違うみたいね……でもあんた、私に抵抗したらどうなるか分かってるよね?」

「え? どうなんの?」

「……写真をバラまく」


 ギクリッ!

 俺の心臓が跳ね上がる。

 裸をさらした俺の写真……

 それは洒落にならん。

 こいつならやりかねない。

 何とか阻止したいところだが……その方法が思い浮かばない。


 この試合負けてやればいいのかも知れないが、ここで相手の言うことを聞けば、これから先もそれをネタにゆすられるに決まってる。

 だからここは下柳に屈服するわけにはいかないのだ。

 何とかして相手に勝ち、そして写真の件も何とかしなければいけない。


「……だ、黙ってやられるつもりはないぞ」

「黙ってやられて、今まで通りゴミみたいな生き方してればいいのよ、あんたは」


 ニヤリとほくそ笑む下柳。

 その顔に果てしない怒りが巻き起こる。

 こいつ、ぶん殴りてえ。

 そう思い拳を握ると、ゴンが下柳を見据えながら俺に言う。


「レオ。お前は女相手でも本気で殴れるタイプだろ?」

「え? 普通殴れるんじゃねえの?」

「……普通は殴れないんだよ」


 そうなのか?

 ヤバい。その点は理解できない。

 世の中男女平等だよね? 

 え、何で殴ったらダメなの?

 なんて顔をしていたらゴンはため息をついた。


「とにかく、絶対あの女を殴るな」

「な、何でだよ。俺だってあいつにムカついてるんだぜ」

「お前があいつを殴ったら読者がどう思う?」

「ちょっとメタ的な発言は控えてもらえませんか? いや、しかし、それだけイメージが悪いってことだよな?」

「ま、そういうことだ。あいつはオレに任せて、お前は残りのメンツを倒せ」

「お、俺たちは後方で待機してるよ」


 北野たちが恐る恐る、ゴンに話しかける。

 ゴンは「いたの?」みたいな顔を北野たちに向けている。

 そういやいたな。こいつらも。

 俺も完全に忘れてたわ。


 ゴンは下柳に向かって走り出す。

 一瞬でその距離を詰め、相手の両手を握り、動きを封じる。


「ちょ、離せよ、デブゴン!」

「離さねえよ、アホ」


 ゴンが下柳を止めている間に、周囲のバレー部を倒して行く。

 一撃腹に入れて行くだけで倒れる部員たち。

 あっという間に残りは下柳だけになってしまう。


「つ、つえー……ガリレオの奴、強過ぎだろ!」

「化け物だよ……あいつ、帰宅部だったはずだよな?」

「デブゴンも同じ帰宅部だったはずなのに、何があったんだ、あの二人は!?」


 観客の驚く声をBGMに、俺はゴンと下柳のやり取りに注目する。

 

「離せ……てめえ、離せって!」


 ゴンに膝蹴りを入れる下柳。

 しかしゴンはビクともせず、ただただ冷たい視線を相手に向けているだけだった。


「お前にはさんざん辛い目に遭わされてきたからな。その礼をさせてもらう」

「な、何だよ! ちょっと綺麗になったからって調子に乗ってんじゃねえよ!」

「……綺麗になったか?」


 ゴンが怪訝そうに俺の方を見る。

 俺は呆れながらゴンに言う。


「少なくとも、この学校では一番の美人になったんじゃねえの?」

「え? そんなに?」

「ああ。最低でも、その性悪女よりは美人で間違いないよ」


 俺の言葉に下柳が青筋を立てる。


「ガリレオ……てめえも調子に乗んじゃねえ! またイジメ抜くぞ、コラ!」

「レオをイジメるつもりなら、これからオレがお前をイジメ抜くぞ」

「は、はぁ!? 私はあいつの情けねえ写真を持ってんだ! あいつは一生、私のおもちゃなんだよ!」

「あっそ」


 ゴンは下柳の言葉を気にすることなく、相手の靴を踏みつける。 

 グシャリという骨が折れる音が響き、下柳は顔を歪めた。


「痛ああああああっ!」


 靴を踏んだところで赤い光が灯ることはない。

 ゴンもそう考えたのであろう。


 下柳は痛みに倒れそうになるが、ゴンが手を押さえているために膝をつくことさえ許されない。

 涙を流しながらゴンを睨む下柳。


「ちょ、折れた! 折れたってば!」

「折れただろうな。折るつもりで踏みつけたし」


 そう言ってゴンは、もう片方の足を踏みつける。


「んぎぃいいいいいいい!!」


 痛みに泡を吹き出す下柳。


「痛いだろう。でも、お前がオレたちにやってきたのはこれぐらいじゃない。もっとプライドを傷つけられたし、心を消耗させられた。こんなもんじゃ済まさねえよ」


 ゴンはそう言って、下柳の傷を回復する。

 痛みが消えたことにキョトンとする下柳。

 ゴンはそんな彼女に容赦なく攻撃を続ける。


「ギャー!!」


 再度、足の骨を折るゴン。

 片方を折り、もう片方を折る。

 そして回復し、また骨を折っていく。


 それを何度か続けると下柳は目に涙を溜めながら、しかし威圧的な態度を崩さずに言う。


「絶対に復讐してやる……ガリレオの写真も絶対にばら撒く」

「そんなことさせねえよ」


 回復した足を、また踏みつけるゴン。


「いぎぃ……」


 そしてゴンは嘆息し、下柳の耳元で囁く。


「いいか。今までお前がイジメてきた証拠を全部握っている。今の時代、証拠集めなんて簡単なんだぞ。オレにやってきたことも録音録画してきたし、レオにやってきたことも全部撮影済みだ。それに倭も山下もお前がイジメをしてきたことを証言すると言っている」

「……なっ」


 驚愕する下柳。

 俺も驚き、目を点にさせていた。


「この学校を退学になりたくなければ、レオの写真を消せ。いいな?」

「…………」


 涙を流しながらゴンを睨み付ける下柳。

 だがゴンが睨みを利かせると、相手は青い顔で怯え出す。


「いいな?」

「は、はい……」


 そしてゴンは下柳の足を踏みつけ骨を折り、最後に頭突きをかまして気絶させた。


「まさか色々と準備してたとはな」

「イジメをする奴にはこういうのが一番きくんだよ。証拠集めは大事だぜ?」

「勉強になるよ。そしてありがとな、ゴン」

「おう。お礼はポテチ10袋でよいぞ」


 俺は鼻で笑いながらも、さっきの約束の分も含めてポテチを30袋ほど用意してやることを考える。

 金はかかるが感謝の気持ちだ。

 激安店で安いのを見つけてこないと……


 こうして俺たちは、あっさりと武活動大会を優勝してしまった。

 やはりレベルが違ったようだ。

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