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第22話 ケイロスバーン②

「ようこそおいで下さいました。レオ様、愛花様」

「おう。飯だ飯」

「え……?」

「……ゴン。話には順序という物があるだろ。まずは相手の話を聞くとしよう」


 俺たちは謁見の間と呼ばれる、王様とリーシャがいる場所に案内されていた。

 目の前にある大層な玉座に座る王様。

 リーシャはその隣にある、豪華な席についている。


「それで、この者たちが魔王幹部を倒してくれると……」

「はい、お父様。昨日、レオ様たちはダブルリザードを軽々と撃破いたしました」

「な、何とダブルリザードを!」


 ザワつく周囲の兵士たち。

 王様も仰天している様子で、こちらを見ている。


「そう言うことだ。話はまとまったみたいだな。そろそろ飯の時間にしよう」

「まだ話終わってねえよ! もう少しぐらい我慢しろって」

「話なんてすることないだろ。もう戦うって決まってんだからさ。ったく、校長の朝礼ぐらい無駄話だぜ」

「おい、失礼だろ」


 ゴンはポテチを取り出し、王様たちなど興味なさそうに食べ始める。


「まぁ、しかし、ゴンの言った通りその魔王幹部と戦うって決まっているので、やることだけ教えてくれません?」

「そ、そうですか……ここから西の方角に砦があります。そこは元々人間が利用していた物なのですが、魔王幹部によって奪取されたのです」

「じゃあ、そこに行って魔王幹部を倒せばいいんだな?」

「はい」


 リーシャは席を立ち上がり、ゆっくりと俺に近づいて来る。

 そして俺の服をつまみ、綺麗な瞳でこちらを見上げてきた。


「……お気をつけて」

「ああ。行ってくるよ」

「それでは頼むぞ、旅の者よ」

「はい」


 俺は踵を返し、城を出ようとする。

 だがゴンに手を引っ張られ、引き留められた。


「どうしたんだよ?」

「……飯」

「……そうだったな」


 俺は呆れながらも、リーシャたちに飯の用意を頼んだ。

 すると彼女と王様は快く食事の用意を始める。


 リーシャに連れられてやって来たのは、長テーブルのある食堂であった。

 俺とゴンが隣りあって座り、俺の前の席にリーシャが着く。

 

「あの、レオ様が来た世界のことを教えてくれませんか?」

「おお。それは私も興味があるな。どれ、聞かせてくれんか?」

「うーん……こっちと比べると何でもあるかな……」


 ここに来るまでに町の様子を見て来たが……中世のような、現代の感覚から言えば得に何もない様子。

 何もないけど、何故か美しく思える世界。


「何でも……あるのですか?」

「おう。ポテチもクッキーもハンバーガーもあるぞ」

「それ全部食い物だろ……食い物以外にも色々あってさ、ゲームとかスポーツとか」

「うん……よく分からんな」

「口だけじゃ、説明しにくいですね……まぁ、平和な世界ですよ」

「……平和、か」

「オレたちみたいな一部の人間を除いてだけどな」

「ははは。全くだ」


 平和な世の中ではあるが、俺たちみたいに酷い目に遭っている者もいる。

 心の平穏という意味では、ある意味平和と程遠い世界だったな。

 くそったれ。


 王様は顎に手を当て、何やら思案している様子であった。

 何かあったのだろうか?


 そうしていると、食事が次々と運び込まれて来て、ゴンが目を輝かせていた。


「おお……飯だ飯」

「うむ。遠慮なく食べてくれ」


 俺も昼飯を食べられなかったので、目の前に広がる食事に飛びつくようにありついた。

 まさに豪華絢爛。

 高級レストランなどで提供されているような物ばかりが並べられている。

 味も美味しく、舌鼓を打つ。


「美味いな、ゴン――って、何だ!?」


 まるで分身をしたかのように、残像を残しながら次々に食事を口へ放り込んでいくゴン。

 いまだかつて見たことない速度を見せるゴンに、俺は呆然とする。

 戦闘でもこれぐらい迅かったら嬉しいんだけどな、なんて思案しながら彼女の食いっぷりに釘付けとなっていた。

 リーシャも王様も俺と同じで……いや、それ以上にゴンの食欲に驚き、口をポカンと開いている。

 これだけスタイルのいい美女が衝撃の食欲を展開しているのだ。

 驚いて当然であろう。


「うまうま」

「美味いのは分かるけどさ、もう少しゆっくり食えよ」

「無くなったらどうすんだよ?」

「……これだけの量、無くなるかよ」

「おかわりはまだまだある――」

「おかわり!」


 食い気味に。

 ゴンは王様の言葉に答える。

 これだけあってもまだ足りないのかよ……


 俺はテーブルに敷き詰められた食事の数々を見渡しながら青い顔をする。

 

「おま……どれだけ食うつもりなんだよ」

「あればあるだけ」

「ちょっとは遠慮しようぜ? な?」

「でもオレたちはこの国を守ってやるんだぞ。これぐらい安いものだろ」

「た、確かに……」


 確かにそう言われればそうかも知れないなんて思いだす。

 食事だけで世界を助けてもらえるなら安いものだ。


 掃除機の如く食事を吸い込んでいくゴンを見ながら呆れ返る俺。

 リーシャと王様は唖然としすぎて食事の手が止まっていた。


 言っておくけど、こいつは俺たちの世界の普通じゃありませんから。

 特別こいつが食うだけだから、俺たちの世界を勘違いしないでいただきたい。

 そう心の中でリーシャたちに語り掛けながら、俺はナイフとフォークをテーブルに置いた。

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