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俺が長年味わった事

「それじゃあ花宮さん!見ててくれよな!」


「う、うん。頑張ってね〜」


 そう言いながら意気揚々とスタートの線に並びに行く礼二の悪友を苦笑いで俺は見送り、相手がこっちを見てないのを確認するとやれやれと言わんばかりにため息をつく。


「相変わらずちよちーって何かに巻き込まれるよねー」


「まぁそれがちよよんらしいっちゃらしいけどな!」


「そんならしさは要らないなぁ」


 本当、俺はただ平凡にお店を継いでちゃんと経営出来さえすればそれでいいのに……なんでこうなったかなぁ。


 それは遡る事数分前、間にいる困り顔の神井くんを意にも介さず礼二と礼二の悪友が何か言い合ってる光景を見て「またなんかやってるなぁ」と思いながら俺がその場へ行くと────


「花宮さん丁度いい所に!」


 げっ!このパターンは絶対面倒事に巻き込まれるやつじゃん!と、とりあえず────


「あ、私用事あったんだった」


「れーくん達の持久走見る用事だよねー?」


「ちょっ!綺月ちゃん!」


 裏切りやがったなコノヤロウ!いや女郎!


「それじゃあ花宮さん、お願いしてもいいかな?」


「はいはいなんでございましょうか」


「俺と礼二が時間内で何周走ったか数えといてくれないか?」


 あ、なんだそんな事か。何か勝負事かな?まぁとりあえず。


「それなら別に構わないよ。二人共頑張ってね」


 こうして、俺は二人の走った周数を数えることになったのだった。


「とはいっても絶対ごっちゃになるから悪友君の方は綺月ちゃんにお願いするけど」


「任せてー。っと、始まるみたいだよ」


「それじゃあ私達も観戦に興じるとしますか」


「「おー!」」


 これは奇遇か運命か、二人のその返事と共に先生のホイッスルが鳴り響き、礼二達の持久走が始まったのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ……!はぁ……!」


「ふぅ……!ふぅ……!」


 よし、いいぞ、いい調子だ。息は荒れてきたがアイツ程じゃない。この調子なら次の一周中に何とか追い越せる!


 開始の笛から数分流石に息も途切れ始めた頃、何とかギリギリ悪友の後ろをついて行くことが出来ていた俺はそう目測を立てながら走っていた。

 するとそこで────


「後五分だ!お前ら気合い入れろー!」


 残り五分!?不味い……このままじゃ良くて同着、こいつに勝てない……!勝てなかったらこいつは何するか分からねぇ!くそっ!何とかして────


「しまっ!」


 先生のその言葉で思考に取られてしまった俺は足を絡ませてコケてしまい直ぐに起き上がったものの、悪友との距離はその一瞬の内に大きく開いてしまった。


「くそっ!このままじゃ……このままじゃ!」


 でも、もうこんなに距離がひらいてたらもう……


「礼二!諦めるなー!頑張れー!」


 千代?


「お前はそんな所で諦めるような奴じゃ無いだろ!ちょっと距離があるくらいなんだ!いけー!根性見せろー!」


「……っ!」


 そうだ、こんな所で諦めるような柄じゃないよな。今まで何百回何千回って千代に告白したのを気が付かれ無かったのに比べれば。


「これくらいぃー!」


 千代の応援とこれまで千代によって味わってきた数々の挫折を力に立ち上がった俺は、ウィニングランと言わんばかりに速度を落としていた悪友の背中へと迫り────


「そこまで!」


 笛が鳴り響く直前、俺は悪友より数歩前へと飛び出し、その数歩の差で悪友に一周をつけて勝ったのであった。


「お疲れ礼二!やれば出来るじゃない!見直したぞー!」


「千代のおかげだ、ありがとう」


「お?やけに素直だ、感謝でもしてくれてるのかな?」


「ま、まぁそういうとこだ……千代!」


「ん?なぁに?」


「その、俺と────」


「花宮さん!俺と付き合ってください!」


「ちよっ!お前約束と違っ!」


 いや、こいつはそういう奴だった!くそっ!最初からこんな奴の話を信じた俺が馬鹿だった!


「え、えーっと……」


 千代が言い淀んだ!?まさか────


「どつき合うのは勘弁して欲しいなぁ……ほら、私は一応女の子だし君は男の子でしょ?」


「え?」


「ぷっ……はははははっ!」


 そうだ、そうだった。千代はこうだったな。一番体験してる筈の俺とした事が失念してた。


「な、なんだよ!」


「いーや何でも、それよりも女子をどつくのは流石に無いんじゃないか」


「ちょっ!おまっ!」


「え?ちよちーどつかれたの?」


「女の子どつくなんて、サイテーだぞ!」


「ち、ちがっ!ちょっ!違うっ!話をっ!話を聞いてくれぇぇ!」


 こうして、俺達の小学生最後の身体測定と健康診断、そして体力テストは騒がしく幕を閉じたのであった。

 ちなみに悪友はこの一件で心が折れたそうだ。

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