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明日から頑張る

「ちよよんみーつけた!」


「うぅー、また一番だった……」


「ちよよん隠れるの下手だからな!直ぐに見つけられるぞ!」


「ぐはぁっ!」


 叶奈ちゃんの悪意のない毒舌がゲーム下手の俺の心を抉ってくるぅー!


 木の葉が真っ赤に紅葉し、地面にも落ちてる葉が目立つようになってきてそろそろ本格的に秋へと差し掛かり始めた日のこと、俺はいつものみんなとかくれんぼで遊んでいた。


「だぁーっ!見つかったー!」


「お疲れ礼二ー」


「そう言う千代もお疲れ、今回も一番だったみたいだな」


「あはははは」


「ちよちーって昔からだけどびっくりするくらい勝負事弱いよね」


「本当にねぇ……」


 なんだろうなぁ……前世からだけどスポーツとかの勝負事なら割と普通なのに、ゲームとか遊びの勝負事だと毎回負けるんだよな。


「不思議だなぁ」


「自分でそれ言っちゃうのか……流石ちよよん。とりあえず次は何するー?」


「私お絵描きがいいー」


「えーお絵描きー?」


「だって動き回って疲れたもーん」


 おーおー、今日も始まったか。


「おい千代」


「ん?なぁに礼二」


「その、お前も女の子なんだからもっとだな……」


「……?あっ、またやっちゃってた。ありがとう礼二」


 いつもの様にやりたい事を綺月ちゃんと叶奈ちゃんが主張し始めたタイミングで礼二にコソッと耳打ちされた俺は、首を傾げた後礼二の視線でスカートを上げたままにしているのに気がつく。


「どうもスカートだと運動はやりにくくてねー」


 だから裾を上げてから結んでそのまま忘れちゃうんだよねー。いやはや、もう女の子歴も十年で女の子の日すら始まったというのに未だに男調子のままだ。


「だからってそんなパ、パン……」


「ぱん?」


「パンツが見えそうな程スカート上げるのは……だな、ダメだと俺は思うぞ……」


 あら、顔赤くしちゃって可愛い。じゃなくて、心はともかく今世の体は女の子なんだ、流石にそろそろ女の子らしい立ち振る舞いにして行かないと。


「ごめんね礼二、ほら戻したよー」


「お、おう……そっちの方がいいぞ、おう」


 まだドキドキしてんのかこいつは、もしかしたら途中礼二は見えちゃったのかもなぁ……いやまぁ礼二だからいいけど流石に反省……なのはいいけど。


「かくれんぼ!」


「お絵描き!」


「まだ言い争ってるのかあの二人は」


「あはは……今日は一段と長いねぇ」


 いつもならどっちかが折れてそれを見てほっこりするとこだが、流石にそろそろ止めないと喧嘩になりそうだ。


「はーい二人共そこまで。これ以上言い争うならお説教するよ。はい、ごめんなさいして」


 キャンキャンと言い争う二人の間に俺がそう言って入ると、二人はそんなにお説教が嫌なのか露骨に口を閉じ、続いてぺこりと頭を下げて謝り合い、俺の方へ向き直ってくる。


「じゃあ叶奈達言う事聞く代わりにちよよんが何するか決めて」


「うんうん、私達仲良しするからちよちーに何するか任せる」


「え、私?」


「「そう、貴女」」


 うげぇえ、まさかの俺に矛先が……!

 いやまぁいつか来る気はしてたけど……と、とりあえず運動系は綺月ちゃんが嫌がるからダメ、文系の遊びは叶奈ちゃんが嫌がるからダメ……


「うーん、そうだなぁー……」


 いつもならここで「うしっ!コマとかやろう!」って言う所だけど、なんか女の子らしくしないとって決めた所でそうするのもなんか癪だしなぁ……


「はてさてどうしたもの────」


『いーしやーきいもー、おいも。美味しい美味しい石焼き芋だよー。熱々ホクホク、冷えた体をお腹から温めるおイモだよー』


 腕を組み小声で俺がそう呟いていると、いい匂いと共にどこからとも無く秋の名物と言っても過言ではない普段は八百屋をやっている屋台のおじちゃんの声が聞こえてくる。


「焼き芋かぁー。もう八百屋のおじちゃんが屋台を引く時期とは早いもんだ、それに相変わらずのいい匂い……じゃなくて」


 今は叶奈ちゃん達と何するかを────


 くきゅゆるる。


「今のお腹の音……ちよよん?」


「ちよちーお腹減ってたの?」


「え、あ、いやっ、それは……」


 確かに減ってないと言えば嘘になるし、女の子らしくって決めた所でまた焼き芋とかいう女の子らしくないのを食べるのも……あーでもいい匂いが……!


「おっちゃん芋二つ!」


「お、坊主!毎度ありがとな!今日のは特上のを仕入れてんだ、運が良かったな!」


 特上!いやいや、女の子らしくって決めたのに……でも特上のお芋……!


「千代?」「ちよよん?」「ちよちー?」


 女の子らしくしなきゃ……しなきゃダメだけど……!


「おじちゃん!お芋四つちょーだい!」


「えっ、千代!?」


「ちよちー!?」


「お!千代ちゃんお友達の分もかい?毎度!おまけしといてやるからな!」


「ありがとー!」


 女の子らしくはまた明日から!今はとりあえず────


「ほら!皆の分!一緒にたべよっ!」


 皆と美味しいのを食べよう!


 さっきまでの葛藤はどこへやら、俺はそう言って皆の分の焼き芋代と交換に皆へと焼き芋を差し出し、皆でその秋の味覚に舌鼓を打ったのであった。

 俺が女の子らしくなる日はまだまだ遠いのであった。




ちなみに服の類は自分で選んでる為、女の子はこんなものという男のイメージで選んでたりします。


ちなみにパンツは縞パ(

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― 新着の感想 ―
[一言] 明日から頑張るの「明日」は永遠に来ない(笑)
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