花宮家の女達
「あっ!なっつかしー!これウチが小学生の頃めっちゃ使ってたやつじゃん!」
「それってロケット鉛筆よね?千保ちゃんが三年生くらいの頃だっけ、父様が取引先で貰ってきたの貰って大喜びしてたもんね。それに今でも宝物箱に大事にしまってるものね」
「そ、そんな事ないしっ!変なこと言わないでよほーねぇ!」
お姉ちゃん達は相変わらず仲良しさんだなぁ。
「はいはい、二人共そんなはしゃぐんじゃありませんよ。それに今日は千代のお買い物なんだから、大人しくしてなさい」
俺達の住む街から日に十数本のバスに乗る事一時間、俺達の街とは比べ物にならない都会の街の一角にあるガヤガヤと騒がしいデパートに俺達は買い物へと来ていた。
何故こんな場所に来ているのかというと……
「にしてもそうかー。もうよーちゃんも修学旅行に行く歳になったのかぁー」
そう、今日は俺の修学旅行に向けた買い物をしに来たのだ。
「昔はこーんなに小さかったのに……いや、昔と変わってないかも?」
「む、変わってなくはないし!というか私だって毎日牛乳一瓶飲んで早寝早起きしてるからいつかお姉ちゃん達みたいに大きくなるもん!」
「ほんと、早い物だよねー。でも千代ちゃん好き嫌いとかもないし、きっと成長期が来たらすぐおっきくなるよ。私としては可愛いからそのままでいて欲しいけど」
「そうね。千代はなんでもちゃんとしてるし、将来は必ず素敵な大人の女性になれるはずですよ」
そんな事言われても全く嬉しくねぇー……いやでも俺中身は元男なんだし、もしかしなくても意図せず男としての俺の理想の女性に近づいて……
……よそう、これ以上このことについて考えるのはよそう。
「ん?よーちゃん身震いした?寒い?大丈夫?」
「ふぇっ!?あーうん、大丈夫大丈夫!ちょっと空調が当たって寒かっただけだから!さっ!早く必要なの買いに行こっ!」
ひぃー!あいっ変わらず千保お姉ちゃん目敏いっ!
ブルリと自分の考えに身を震わせた俺は、こそっと聞いてきた千保お姉ちゃんにそう言いながら、姉二人の手を引っ張り次の売り場へと向かうのであった。
そしてそれから数時間、普通より時間のかかる買い物と普段でも長いのに止める男も居ない女四人(一名元男)が合わさり、あれがいいこれがいいと買い物の時間は伸びに伸び……
「すっかり夕方だぁ」
「私とした事がすっかりはしゃいじゃったわ……少し休憩したらすぐ帰りますよ」
「「「はーい」」」
気がつけばカァカァとカラスの鳴く時間へとなっており、俺達は屋上遊園地のアイスクリーム屋さんの前でアイスクリームを食べながら椅子に座って居たのであった。
「にしても相変わらずココは賑やかだねぇ。ウチらが小学校に上がる前からあるのに大した事だ」
「ほんとにねー。小さい頃はよくここで父様にコーヒーカップに乗せてもらったっけ」
「私あのゴーカート好きだったなぁ」
「今じゃそんなに大きく思わないけど、昔はあの観覧車もすっごい大きく見えたなぁ」
「ふふふっ、二人共小さい頃はデパートに行く度に早く遊園地遊園地ってせがんでたんですよ」
あったあったそんな事。確か俺が三歳とか四歳の頃だったかなぁ。
「んもー母さんやめてよそんな昔の話。恥ずかしいなぁもー」
「私もちょっと恥ずかしいな、というか私そんなにせがんでた?」
「えぇ。私が幾らやめなさいって言っても二人がかりで浩さんの服を引っ張って「ゆーえんち!ゆーえんち!」って。そういえば、千代は一回もせがんだ事ないわね」
「え?そうだっけ?」
結構せがんだ事ある気がするけど。
「えぇ。行けば浩さんやお姉ちゃん達と楽しんでましたけど、自分から連れて行ってと言った事はありませんよ」
「それに千代ちゃんってだいたい私達が遊ぶのに一緒に乗ってただけだったもんね」
「ね、父さんにどれがいいって聞かれてもだいたいジュースかアイスクリーム、もしくは肩車だったもんね」
だって最近になって出てきたけどアーケードゲームとかそういうのもなかったし、もっと大掛かりなのなら楽しめるけど全部ちっちゃいし。
「千代は昔から浩さん大好きですからね。乗り物よりも父様が一番だったんでしょう」
おっとそれは聞き捨てならないぞ母様。
「母様母様」
「なんですか千代」
「大好きだったんでしょうじゃなくて、大好きなんです」
これは紛れもない事実。
だって俺、部屋貰ってからもほぼ毎週三回は父様の布団で一緒に寝てるもーん。なんなら将来唯一俺の事をお嫁さんにしてもらってもいい人レベル。
まぁ実の父親だから無理だけどな。
「ふふふふふっ♪そうでしたね。それじゃあその大好きな父様が寂しがる前に、早く帰って御出迎えしてあげないとですね。それじゃあ帰りますよ」
「「「はーい!」」」
「でも父様ってちょっと引っ付きすぎな所あるよね」
「分かる。というかウチはそれがちょっと苦手ー」
「あらあら、あんな素敵な方にあれだけ愛されてるのに、嫌い嫌いーって言ってる生意気な口はこれかしら〜?」
「ほはー!ひゃあはんごへん!ごへんなはーい!」
「私今日は帰ったら父様にお膝の上でぎゅーってして貰いながらなでなでしてもらおーっと」
「あ!千代ちゃんずるーい!私も今日は甘えよっと!」
そうキャイキャイとなんやかんやいいつつも父様が大好きな母娘四人は盛り上がりながら、笑顔で思い出の遊園地を後にしたのであった。




