俺の自分勝手な幼馴染み
落ち着け、千代ちゃんはいつもこうじゃないか。
「すー……すー……」
いつも自分調子で、周りを巻き込んで。
「んぅぅー……」
俺がどう思ってるかなんて全く知らないで……
日曜日のお昼過ぎ、ちりりんと風鈴の音が響く居間で仰向けに寝転がっている俺は、左腕いっぱいに感じるすべすべぷにぷにから気を逸らすべく、ぎゅっと目を閉じていた。
一体何が起こっているのかというと────
「えへへ……みんなだいすきぃー……」
本当、頼むから千代ちゃん早く起きてぇー!
「すー……」
この街じゃ知らない人は居ない雑貨屋「花見屋」の末娘であり、家が背中合わせの俺が想いを寄せている幼馴染、花宮千代に抱きつかれた状態で眠られているのである。
どうしてこんな状況になっているのか、それは今日の朝まで遡る……
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『エレキギター追放運動が──────』
エレキギターかぁ……カッコイイけどやりたいとは思わないなぁ……
「おじゃましまーす」
きたっ!えーっとえーっと、変な所ないかな、大丈夫かな。
「あら、千代ちゃんいらっしゃい。今日は楽しんでいってね」
「はい!」
「ふふふっ、それじゃあ礼二呼ぶから。礼二!千代ちゃん来たよ!」
「分かってる!」
玄関から聞こえてくる千代ちゃんと母さんの会話を聞きながら、少しでもかっこよく見てもらおうと髪の毛や服を弄っていた俺は、母さんに大声で呼ばれ急いで玄関へ向かう。
「いらっしゃい千代ちゃん!きょ、今日も可愛いね!」
よし!今日も可愛いって言えた!可愛いって沢山言われた女の子は沢山言った男の子を好きになるってテレビで言ってたもんね!
「ほんと?えへへ、ありがとー」
「えと、その、今日は水着持ってきたか?」
「もちろん!だって今日は礼二のお家で水遊びするんだもん!」
よかった、千代ちゃん楽しみにしててくれたみたいだ。
「そ、それでだけどさ、水着、みてみてもいい?」
「んもー、礼二はせっかちさんだなー。でも私も早く遊びたいし、早く着替えてくるね!」
「う、うん!」
「あ!礼二も早く水着に着替えてよね!私より遅かったら罰ゲームね!」
「えぇっ!?」
「それじゃあ着替えてくるから!」
そう言うと千代ちゃんは千代ちゃんを手招きしてた母さんと一緒に、母さんの部屋へと入っていってしまった。
そして数分後、きゃっきゃと盛り上がっている母さんと千代ちゃんの声を聞きながら水着に着替えた俺が父さんと一緒にプールの用意をしていると、後ろから声がかけられる。
そして俺がその声の主の方へ振り向くとそこに居たのは────
「どうどう?礼二にあってる?」
「……」
「礼二?」
「綺麗だ……」
「ほえっ!?」
「千代ちゃん綺麗だぁっ!?」
「年端もいかない人様の家の娘に何を言ってんのあんたは」
そう思わず口からでた俺は無口な父さんに思いっきり頭を叩かれ、母さんにそう言われてしまう。
しかし俺の前にはぴっちりとした独特の質感がある黒い布地から、すらりと細く美しい真っ白な手足が伸び、深い黒と当たる光で紺青にすら見える髪を垂らした────
「びっくりしたぁ……もう、そう軽々と女の子にそんな事言っちゃダメなんだからね」
そう言って笑顔を湛えるまるで女神と見間違う程美しい幼馴染が居た。
「は、はい……」
「それじゃあ遊ぼっ!えいっ!」
「わわっ!やったなぁー?おりゃ!」
「きゃー!」
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「いやー、遊んだねー」
「ねー。お昼までご馳走になっちゃってごめんね?」
「ううん、気にしないで。母さん達が食べさせたんだから」
あの後、水をかけあったり父さんが用意した竹の水鉄砲で遊んだりした俺と千代ちゃんは水着のままお昼ご飯にカレーを縁側で食べた後、着替えてごろんと居間で横になっていた。
「ふふふっ、そうだね。にしても……ふぁぁー……よく動いて……おなかいっぱいになったからか…………凄く……眠……い…………」
「あ、そうそう!今度千代ちゃんに……千代ちゃん?」
「すー……すー……」
「寝ちゃった……?」
「んむぅ……」
可愛いなぁ……今ならちょっとくらいほっぺを触っても……
「んんぅ……しゃちさん……ぎゅう……」
「え?わわわっ!」
腕掴まれっ!?
「ち、千代ちゃん!?」
「しゃちさん……いたぁ……すー……」
ちょっ!えっ?こ、これどうすれば……というか千代ちゃん柔らかっ……!
こうして俺は今に至り、結局千代ちゃんが起きるまで抱きつかれたままになったのであった。




