遠くに足と書く行事
「水筒は持ちました?」
「はい!」
「お弁当も?」
「持った!」
学校に出るにしてはいつもよりも少し遅い時間、居間で母様にぴっぴっと洋服を整えて貰いながら、俺はそう母様に元気よく返事をしていた。
「忘れ物はありませんね?」
「うん!」
なんせ母様に確認される前に四回は確認したからな!
「よし。それでは千代、怪我しないように気をつけて楽しんで来るんですよ」
「はーい!いってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
そう言って玄関から俺を送り出してくれた母様に大きく手を振りつつ、俺は背中に背負った母様手作りのリュックを揺らして学校へと向かうのだった。
「天気もいいし、風も気持ちいい!きっとこういう日を絶好のって言うんだろうな。さ、今日は遠足楽しむぞー!」
そう、今日は低学年限定の年に一度のイベント、春の遠足なのである。
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「「「うっごっく〜うっごっく〜♪」」」
「さ、三人共まってー……」
あ、礼二置いてっちゃうとこだった。危ない危ない、どうやら自分で思ってるよりもテンション上がってるらしい、気をつけよう。
「ごめんね礼二、ちょっと張り切りすぎちゃった」
「ごめんなれーたろー」
「れーくんごめんね?お水いる?」
「い、いや、大丈夫綺月ちゃん。俺自分の水筒持ってるから」
「お?なーに礼二、間接キスが恥ずかしいの?私とはしょっちゅうしてる癖に」
そう言って俺が山道でバテている礼二の脇腹をニヤニヤしながら、指でつんつんとつっついてそうからかうと、礼二は不服そうな顔になる。
「べ、別に、千代ちゃんとはちっちゃい時から一緒だから、そんなんじゃないし」
「そ、そうなんだ」
そ、それって暗に「お前の事女として見てない」って言われてるようなもんだよな……やばい、中身男だし別にって思ってたけど、いざ言われてみると結構くるものが……
「えーっと、えーっと……ちよよんちよよん!見て見て綺麗な鳥だよ!鳥!」
「ア、ホントダー。キレー」
凄いなぁ、綺麗だなぁ、キジかなぁ。
「ち、千代ちゃん?」
「……れーくん、いくら恥ずかしかったからって、流石にその言い方はないと思うよ?ちよちーには後で謝ろうね?」
「う、うん……」
「アハハハハー」
思った以上に礼二からの言葉で心にダメージを貰い、叶奈ちゃんの指刺すどう見てもキジじゃない水色の小さな鳥を見てそう笑う俺の後ろで、二人はそんな会話をするのだった。




