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三歳児の多難な日常

今日からまた投稿開始!ですっよっ!

 元の令和の時代から転生タイムスリップした俺こと花宮千代は、数ヶ月前に無事三歳の誕生日を迎え、至って平和な幼少期を──────


「やーい!返して欲しかったら捕まえてみろよー!」


 送れていませんでした。主にというか九割このクソガキのせいで。


 くそっ、どうして小さい子供、特に男だがあぁもよく人にちょっかい出すよなぁほんと!前世の従姉妹の息子もお前と同じだったよこの野郎!というか──────


「私のシャチかえせー!」


「へへへっ!返して欲しかったら捕まえてみろって言ってるだろばーか!」


「むかー!」


 まだ三歳の体ではあと数ヶ月で七歳になる千代の兄、弘紀に追いつく事は出来ず、俺は父様から貰った誕生日プレゼントであるシャチのぬいぐるみを持って逃げる兄を追っていた。


 もうむり、走れない…………


「うぅぅ〜…………」


「なんだよ、もうバテたのかよ。ほーれうりうりー、これ返して欲しくないのかよ〜」


 本当腹立つわぁーこいつ…………幾らまだこの時代が男尊女卑の風潮が強い時代とはいえ、ここまでするか普通?

 というか幾ら年齢的に仕方ないとはいえ、こんな年齢一桁の相手に手も足も出ないのが普通に悔しいんだが。あ、やばい悔しいからか涙でそう。


「うぅぅうぅぅぅ……えぐっ………私の……ひぐっ…シャチ………ぐずっ……返してよぉ…………」


「へっ、泣いたらなんでも許されると思ってやがる。これだから女は」


 いや泣きたくは無いんだけどさ、この体になってから行動とか言動の我慢があんまり効かないんだよ。というか先ず泣いた原因はお前だけどな?


「ほれほれ、返して欲しかったら奪い返してみろよー、このチビー」


「うぅぅぅうう……!」


 あ、やばい、泣き叫びそう。落ち着け俺、我慢しろ、今までだって我慢できたんだから………………そうだ、いいぞ、大の男としてのプライドが死ぬからなんとか耐えきるんだ。


「ったく、無駄に泣くの我慢してつまんねーの」


 ぬいぐるみを振り回してそう言う弘紀の前で、女の子座りで床に座り込んで俺が幼い体の衝動に俺がなんとか耐えて居ると、すっと弘紀の後ろに大きな影が現れた事に気がつく。


「ちぇっ、せっかくいい暇つぶし見つけたと思ったのに。さてそれじゃ次は何をしてぇっ!?っつぁー!何すんだよ!?」


 あ、拳骨がつむじ辺りにクリーンヒットした。


「それはこっちのセリフじゃボケが。自分の妹からぬいぐるみ取り上げて遊ぶバカがおるか!」


「なんでじいちゃんがここに!?いや、でも俺、別にそんな────────」


「言い訳なんざ聞きたくないわ!こっちこい!このアホ孫がァ!」


「痛いっ!じいちゃん痛いって!離せよこのっ!」


 ひえぇぇ……おじいちゃん怖ぇぇ…………ん?


 鬼の形相のおじいちゃんに弘紀が髪を捕まれて連れていかれたのを俺が座ったまま見送ると、襖の向こうから今の俺の姉の一人である千胡お姉ちゃんがひょこっと顔を出してきた。


「千代大丈夫だった?」


「うん。千胡お姉ちゃんがじいちゃんよんでくれたの?」


 状況から見て多分そうだとは思うけど。


「うん。本当はお姉ちゃんが止めたかったんだけど、ごめんね?」


「ううん、ありがと!千胡お姉ちゃんすきー!」


 こうやって、惜しげも無く感謝と好意を表現出来るのは、この体の数少ないいい所だよなぁ。


「アタシも千代大好きだよ〜。おっといけない、はいこれ!よーちゃんのシャチさん」


「やった!シャチ帰ってきた!千胡お姉ちゃんありがとー!」


 やっぱりシャチっていいよな、シャープだけど丸っこくて可愛くて!それにこれ、触り心地すっげぇいいんだよなぁー…………ん〜〜………


「しあわせぇ……」


「ふふっ♪千代かわいー♪」


「えへへぇ〜♪」


 そうして俺は返ってきたシャチのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて頬ずりしながら、千胡お姉ちゃんに頭を撫でられていたのだった。

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