表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/216

中学生だもん

「ぬきあし、さしあし、しのびあー────」


「よーちゃんっ!何やってるのー?」


「うひゃあっ?!ちっ、千保お姉ちゃんなんでっ?!」


 夏休みも間近なある日の昼下がり、ある目的の為に千保お姉ちゃんの部屋に忍び込もうとしていた俺は、確かに居なくなった事を確認したはずの千保お姉ちゃんにぎゅーっと捕まる。


「いやぁー、普通に忘れ物して戻ってきたらさ、よーちゃんがぴょこぴょこぴょこーってウチの部屋に入って行ったから気になっちゃって。それで?何しようとしたのー?」


「べっ、別になにもー?」


「む、嘘つきよーちゃんだ。よーちゃんが言葉詰まる時は嘘ついてるってお姉ちゃん知ってるんだからねー?」


「うぐ……」


 よーみてらっしゃるよこのお姉ちゃんは……


「それで?何しようとしてたの?」


「えーっと……それはぁー……」


「むむむっ、今度は黙りさんかー?そんな黙りさんしちゃうような悪い子にはー……こうだっ!」


「ちょっ、やっ!あははははははっ!やめっ!あははははっ!話すっ!話すからっ!あははっ!こちょこちょやめてぇー!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「んで、これを見てみたくて忍び込もうとしたと」


「仰る……通り……です……ひぃー……しぬぅー……」


「ほんっとよーちゃんって色々弱いよねぇ。まぁそこが可愛いんだけど」


 俺の目的物であった雑誌をヒラヒラとさせながらそう言う千保お姉ちゃんを前に、あの後もこちょこちょをやめて貰えなかった俺は体をビクビクさせながら床に倒れていた。


「にしても急にどうしたの?去年までオシャレとかそういうの全く興味無かったのに、水着の雑誌見たいだなんて」


「だってほら、もうそろそろ夏休みだし。プールとか行くなら水着要るかなーって」


「よ、よーちゃんが……水着を……あの「どうせどんな水着でも普段知られてるからいい」なんて言ってたよーちゃんが……!」


「うっ、うるさいななぁ!私だって年頃の女の子なんだからこれくらいおかしくないでしょ!」


 それにそもそも中身が男だからってこの時代に生まれて十数年も経つんだから、そりゃあ女の子のオシャレにも少しは興味が出てくるってもんですよ!


「お姉ちゃんは嬉しいよ……髪型にも服装にもお肌のお手入れとかにも無関心だったよーちゃんがこんな成長してくれて……」


「そこまで酷くないし!」


 ちゃんと今は毎日スキンケアも髪型もきちんとやってるし!


 うっうっといかにも嬉しくて泣いている風な演技をする千保お姉ちゃんに、俺は顔を真っ赤にしながらそう言ってからぷいっとそっぽを向く。


「ごめんごめん、でも確かに中学二年生にもなってスクール水着はあれだもんね。えーっとそれならー……よーちゃん、この雑誌なんてどおー?」


「んー?あ、この水着可愛い。好きかも」


「いい雑誌でしよー?よーちゃんって柄物とか布面積少ないの苦手だからこういったのがいいかなって」


 流石お姉ちゃん、よく私の好みを理解してらっしゃる。


「あ、これいいなぁ。これもいいなぁ……」


「でっしょー。雑誌貸してあげる代わりにお姉ちゃんも一緒によーちゃんの水着選んでいい?」


「それはまぁ、別にいいけど」


 というか千保お姉ちゃんの意見貰えるのは正直凄い助かるし……あっ、これとかビキニタイプだけどデザイン凄く好みだ。


「でもなぁ……お金がなぁ…………」


「話は聞いたわっ!」


「「んぴゃっ!」」


 その惹かれた水着の下にあるお値段と自分の財布の残高を照らし合わせた俺がそう苦しげな声を上げていると、一体いつから居たのか、スパァンと勢いよく扉を開けて千胡お姉ちゃんが部屋へと入ってくる。


「お金なら私が出すわっ!」


「えぇっ?!」


 いきなりなんでっ?!


「せっかくよーちゃんが乗り気になってるから払ってくれるのは助かるけど、私達お小遣い殆ど同じなのにこーねぇお金あるの?」


「ふっふっふっ。受験生になるとね、勉強ばっかりで全然お金使わなくなるんだ。だからほら、こんなに貯まってるのよ」


 五千円札がにーしーろーやー……うわぁ……


「こんなにあるなら自分の為に使いなよ千胡お姉ちゃん。可愛いお洋服とか買ってさぁ」


「…………買っても着る事が、ねぇ……」


「「あー……」」


「という訳だしさ!私は二人の水着が見れたら満足だし、水着選びにだけでも参加させて貰えれば」


 いい事言ってる風というか、実際いい事言ってるんだけど……後半要望しかないあたりちゃっかりしてるなぁこの姉は。


「はぁー……仕方ないなぁ。それじゃあお姉ちゃん、私の水着一緒に選んで?」


「「うんっ!」」


 仕方ないと諦めた俺は、そう言って姉たちと共に暫くの間水着の話で盛り上がったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ